妖精息子2の47
まさか、水の王子が生きていたなんて!
「ごめんなさい、オンディー。でもあたしに生徒を見捨てることはできない」
千草……大田原教諭のことばに、
こどもっぽい水妖は肩をすくめて
「まあ。しかたないわ。あたしも親の意向には逆らえないもの」
えっ!?もしかして大田原先生が、水の王子の拾い親だったの?
おどろく教え子に、
教諭は
「……隠していてごめんなさい、青柳さん。たしかに、あたしがこの子……オンディーの拾い親よ」
じゃあ、先生があたしを襲撃……?
衝撃を受ける佐和子に、続けて
「先日は、ほんとうに申し訳なかったわ……でも、お願い。わかってほしいのは、あれはあくまで偽装の襲撃だったの」
ぎそう?
「ええ。あたしもこの子も、最初から王位争いなんて望んでいなかった。ただ、土の王子におどされてどうしようもなかったの。協力しなければ、あたしを殺すと脅されて……。だからオンディーは苦肉の策として、自分の分身を作ってぷーすけくんにぶつけたの。それが負けるのは最初から折りこみずみで、本体はわたしの体の中に潜み続けた」
体の中に?
「ええ。なにせ、人体の6割は水だもの。そこに潜むなんて簡単だった。でも、あなたの拾い子にはお見通しだったのよね?」
教諭は、佐和子が支える赤髪の美青年を見た。
ぷーすけは
「――当然です。わたしと戦った水の王子は、あまりに脆弱でした。本体が別にあるのは明らかでした。しかし、彼に敵意がないのなら放置するのが、わたしとちくわの判断でした。彼が親を守ろうとしているのはわかりましたからね。その点で、われらは共感しあえます」
そのことばに、可憐な水妖ももっともらしく首肯する。
火の王子は続けて
「しかしアチラの王子がコチラに来た今、彼が逃げおおすことはもはや不可能です。アチラ生まれは、われらと違って容赦ないですのでね。ですから、わたしは昨晩のうちに水の王子のもとを訪れ、共闘を持ちかけたのです」
えっ?直実くんの家だけじゃなく、大田原先生のお宅にまで押しかけてたの?あなた。
教諭はうなずくと
「そんな火の王子の申し出を、しかしオンディー、あなたは受け入れなかったわね」
後ろに浮かぶ子を向く。
彼?は、つややかな水色の長髪をなびかせながら
「……たたかうより、逃げ切れるならそのほうがよいと思っていた。あなたを危険にさらしたくなかった」
「ごめんなさい、オンディー。でも、あたしはこれでも教師なの。生徒を置いて逃げるなんて出来ない」
「わかっている。それに、雷の王子が講堂であなたもふくめて手を出したとき、こうなることは決まっていた。あとは、タイミングの問題だった」
子のことばに、親はうなずいて
「あたしたちも戦いに参加する。『あれ』に勝たないと、あたしたちの未来はない」
(そうか。大田原先生が最近あたしを避けていたのはそれだったのか。水の王子をさとられたくないから……)
佐和子は、ここ最近の教諭の不審な行動に納得がいった。




