妖精息子2の45
屋上では、黒焦げになったハンターが膝をついていた。
さまざまな暗器……手裏剣や刺などの刀剣類や小銃、はてにはロケット・ランチャーのような重火器までくりだしたが、それら一切は雷の王子によって弾かれていた。
「……野郎、電磁石を作りやがった」
うめくハンターに対峙する金髪の王子の手には、同心円状に巻かれた鋼線がある。それには、暗器類が引きつけられていた。
彼は鼻を鳴らして
「コイルというらしいな。コチラモノもおもしろいものを作る。電子を動かすと磁場に変化が生じることはもちろん知っていたが、このような渦巻き状に流すと確かに磁石になるな」
強力な磁場にさえぎられて、金属製の武器が通じなかったのだ。
加えて、いかに絶縁素材を織りこんだと言っても、完全に電気を抑えられるわけではなかった。ハンターのローブは焦げている。
「この世界に、完全な絶縁物質など存在せぬ」
雷の王子は、膝つく狩人を見てせせらわらうと、弱ったぷーすけに対して
「なんだつまらん。これで終わりか?もう少し待っていれば、もっと面白い相手が来るというから生かしておいてやったのに、これではただの嘘つきではないか」
言い放つと、息子を抱きささえる佐和子に
「たしかに、おまえの子はそこそこ強かった。もちろん余にはおよばんが、すでに倒したアチラ生まれの王子らと比べたら強いのはまちがいない。
こんな劣悪な環境でそんな王子を育てたおまえは、たしかに興味深い。火の王子によると、そいつがそこそこ強いのは、余にはわからぬおまえの『愛』なるもののためだとぬかしおるでな。どんなものか見てみようと思って待っていたのだ……が、結局なにも起きなんだな。
見たかぎり、おまえはコチラモノとしても只者だ。とりたてて強いマナを持っているとも見えん。つまらん。こうなったら、ほかの者たちとまとめて処理してくれよう」
冷ややかに言い放ち、雷撃を繰り出さんとするを
「母上に手を出すな」
立ち上がり防ごうとする火の王子に
「ふん。おのれの無力さを嘆きながら消滅するが良い」
あざけりながら手を振るおうとしたとき
「――やめなさい!」
屋上に鳴り響く新たな声。