妖精息子2の44
校庭では、雷の王子に操られた生徒たちをおさえるちくわ・直実の闘いが続いていた。
「――こいつら、王子に力を分けてもらってるのか、強いぞ」
こどもたちを植物枝で引っくくりながら、ちくわが直実に言う。
「特に、あの野郎はやっかいそうだ」
その視線の先、来島真吾は自ら手を出さずニヤニヤと、ことの推移を見守っている。
「やあ。ほんとうにやめてくれよ、直実。このままだと、ぼくがおまえに手を出さなきゃいけなくなる。そんなことはしたくないんだ。絵里のこともあるしな」
そんな幼なじみのようすを、じっとうかがっていた直実は
「……やっぱり。真吾、きみはさっき雷の王子に洗脳されたんじゃないね?そのまえから彼とのつながりがある。きみが、雷の王子とのパスなんだろう?」
「なっ!?マジか、ナオザネ?」
ちくわも驚いた表情をしている。
真吾はわらって
「よくわかったな。鵺郎博士をパスだと思わせたつもりだったんだが。さすが******とのパス作りでは、ぼくの先輩だ。見抜かれたか」
つづけて
「雷の王子と出会ったのは昨日だ。それから協力している。彼は情報を電気で直接神経に送ってくるから、理解は早かったよ。******の王位争いのことなんて、おまえはもちろん教えてくれていなかったからね」
「きみに伝える必要はないと思っていた」
直実のことばに
「そう。それがおまえの判断だった……で、どうする?まさか、自分にはその木の王子がいるから、関係ない。ぼくをやっつけることができると思っているのか?」
真吾が指を鳴らすと、生徒たちが動く。
彼はいま、雷の王子の力によって生徒たちを操ることができるのだ。
「この子たちを傷つけることになっても?」
雷の王子の力の作用か、生徒会長は迷いのない表情で学友を犠牲にすることを宣言する。
「……そんなこと思うはずがない」
「じゃあ『いつもみたいに』ぼくの言うことを聞いておくれよ。手を引いてくれ」
旧知のことばに
「そうはいかないよ、真吾。これには青柳さんとその息子の命がかかっている。あの子は、ぼくの大事な……仲間だ」
「仲間ねぇ……おまえにそんなものができるとは。絵里のことしか考えていないと思っていたが。仕方ない、じゃあそれなりの対処が必要だな」
次の手に移らんとしたとき
――ゴゴゴゴゴゴゴッ
にわかに、地面全体がうねり盛り上がる。
「「なんだ!?」」
あらわれでた巨大なものは、表面が焼きただれてはいるが
「地の王子だな?幽冥界に逃げたのが、もどってきたのか?……おうおう、術師と融合したのか?身を醜く崩して……あわれだねえ……あれじゃ、高貴な妖魔もなにもあったものじゃない。そう思わないか?直実」
真吾のあざけりに、直実はただ痛ましい表情を浮かべる。
「うがががががががぁ!!」
雷・木どちらの陣営も、痛みから狂ったようにのたくるその巨体をかわすので、手いっぱいになる。
真吾があきれて
「どうする直実!?さすがにあんな大きいの、おれたちの手に負えないぞ!それこそ、アーティファクトでもないと!」
さけんだとき
「……だそうです。頼みましたよ、銀狼先生」
「承知」
事務的なやり取りの声がした。
と、次の瞬間
閃光とともに、地の王子の巨体がずたずたに切り裂かれる!
そのあと、けたたましい轟音とともに崩れ落ちた残骸破片の前に立っているのは、両の手に二振りの日本刀を握る、袴すがたの精悍な男性だった。




