妖精息子2の43
駆け上がった校舎の屋上には、長い金髪をなびかせた長身の貴公子……
雷の王子が立っていた。
「ほう。やっと来たか」
そしてそのわきには、ぼろぼろの状態で倒れた赤髪……火の王子のすがたがあった。
「ぷーすけ!!」
思わず飛び出そうとした少女を、狩人がおさえる。
「なにするの?ぷーすけがあんな目に!行かせて!」
「……そんなことしても、あいつにやられるだけだ。さっきの少年に、おまえの身柄を守るよう頼まれたのでな」
「そんな、でも!」
「いいから、ちょっと待ってろ。おまえの息子のことは、あたしがあいつを狩ったあとだ」
ハンターが得物を手に前に出る。
「余を狩るとは、大言壮語にもほどがあるぞ下等種……ほう?余と正面切って対峙できるとは、稀な人間か……たしかサカイモノとかぬかしたな」
高慢な王子に対し、
狩人は
「おまえらがコチラにただ来る場合、あたしらはなにも文句を言わぬ。が、ここまで手広くコチラモノに手を出されては黙っておけぬ。そりゃ、反撃されても文句はあるまい」
「ふん、愚かな。なぜ余ら上等種がうぬら下等種ごときに気を使わねばならん。うぬらにゆるされた選択は、だまって家畜となるか、逆らってなぐさみものとなるかのどちらかよ」
「そうは言うがなぁ。自然界において、狩る狩られる立場が不変ということは無いぜ。あたしがこの道に入って、まず教わったことがそれだ」
「ぬかせ!雷撃!」
王子の攻撃を、ハンターは超人的な動きでかわすと同時に、暗器を投げつける。
(やっぱり、あのひと人間じゃないよ!王子と互角にやりあうなんて!)
とにかくそのすきに、佐和子はぷーすけのもとに駆け寄る。
息子はぐったりとして
「母上、申し訳ありません。みっともないすがたをお見せしまして……」
「そんなこと、どうでもいいから!」
常に強気な子の弱々しい態度に、胸がしめつけられる。
「……母上。他の人間たちはどうしました?」
「来てないよ。下にいる」
母の返事に、
息子はさらにしおれて
「そうですか……それはこまりました。あの女の秘めた力をあてにして、わたしは生き恥をさらしてここにおりましたに……」
「秘めた力って……あなた、あの子の力に気づいていたの?」
魔能を隠し持っていた少女・絵里に気づいていたのか。
「ええ。彼女は局面を変え得ます」
そんなことを言っても、いま彼女は下で気を失っている。
目の前で繰り広げられる戦いを見守るしかしようが無い。
王子の雷撃に、ハンターは
「あたしもプロなんでな。アチラモノと闘争になった場合、想定される攻撃には前もって備えている。当然、電気もな。このローブには絶縁体を練り込んである。これぐらいの攻撃、屁でもないわ!」
意気高く両手に暗器を持つと
「さあ、くらえ、我が刃を!」
襲いかかる。