妖精息子2の38
「グヘェッ!!」
王子は苦悶の表情を浮かべる。
ハンターは
「ハンッ!思ったとおり、しくじったな!おまえは、安易にコチラの物質を取りこみすぎた。おかげで、本来アチラモノに通じるはずのないコチラの物理攻撃が通じるようになった!どうだ?あたしのお手製特別爆弾の味は?」
せせら笑む。
お手製爆弾って!
そういえば、地の王子はいっぱいコチラの食事を取っていたし、なによりもいま術師の肉体を取りこんだところだ。コチラの存在に近くなっている。口の中で爆弾が炸裂したら、そりゃ痛いだろう。
「貴様!よぐみょ高貴にゃ存在でありゅ我輩に、ごにょようにゃ!」
地の王子は涙をこぼして苦しんでいる。
どうも口の中から爛れ崩れているようだ。
「トッピングに強めの酸を加えておいたからな。内側からいくらでも蕩けるぜ」
うめく王子をうち置くと、ハンターは佐和子に向かって
「この隙に出るぞ!」
言うと一閃、小刀で切りつけると、ふたたび壁が切り裂かれた。
「はやく出ろ!」
顧問を抱えるハンターのうながしに応じて、佐和子も絵里を抱えて裂け目をくぐる。
――と、そこは見慣れた学園の庭園だった。
ふりかえると、もはや裂け目も見えずあのぬめった空間の気配はなにもない。
「えっ?いったいどうやって出たの?」
「これよ」
ハンターが持つのは、壁を切り裂いた銀色の小刀……というよりまるで
「メスだ。アチラモノの手術につかう特殊なものだが、さすがによく切れる」
嘆賞すると、つづけて
「昨日追いかけた王子が幽冥界に逃げこんだのはわかったが、あいにくあたしの手持ちに幽冥の壁を越えるものがなかったんでな。知り合いのところに行ってちょろまか……いや、借りてきた」
おかしそうに言う。
「ついでにこれも借りてきてよかった。おかげで居場所がわかった」
おなじく掌にするのは、射手の像がついた羅針盤状のものだった。