妖精息子2の23
(――地震?)
だが、王子たちはそれが何者の力によるものか、見抜いていた。
金髪王子が手をとめ
「……ほう。今さらになって姿を見せるか、図体ばかり大きいやつめ」
あざけると、
床のすきまの闇からぬめりと姿をあらわしたのは
「おもしろそうな遊びをしているじゃないか、電気の。我輩も混ぜておくれよ」
地の王子、そしてそれに従う術師だった。
雷の王子が金色の眼をすがめて
「余の眼前から尻尾を巻いて逃げだした臆病者が、どういう風のふきまわしだ?」
問うと、
地の王子は
「ふふっ。風を吹かすのはそこの緑髪の得意技で、我輩の領分ではないよ」
しゃれめかして
「ただ我輩も、ことのなりゆき……風向きのひとつやふたつは読むぜ。今きみにマナあふれる食事を摂られてしまっては、我輩も不利になる。それで、しぶしぶだが出てきたというところだ。まあ、これもきみは読んでいたろうがね。このさわぎには、我輩をおびき出す意味もあったはずだ」
まるい王子のことばに、金髪王子は鼻を鳴らして
「わかっておるではないか。このコチラ生まれの野良どもといっしょにまとめて、蹴散らしてくれる」
掌まわりにふたたび放電気をまとわせる。
今まで強く大きなそれは空気を激しく鳴動させる。
それを見た地の王子は、巨大な球形の体躯をふるわせて
「おお、怖っ。たしかにきみは強い。アチラでやりあったときも我輩の分が悪かった……が」
にぃまりと口を笑み曲げて
「今回、我輩はきみよりほんの少し早くコチラに来た。そのメリットを活かそう。きみはまだよくわかっていないだろうが、この世界の住人……コチラモノの力もなかなかバカにしたものじゃないぜ……なあ、術師」
「はい、あるじ……」
球体の背後に控えていた術師はこたえると
“…and I felt every fibre in my frame thrill as if I had touched the wire of a galvanic battery, while the angel forms became meaningless spectres, with heads of flame, and I saw that from them there would be no help…”
(……そしてわたしは体中の神経にふるえを覚えた。まるで電圧線に触れたようだった。一方天使の形は意味なくおぞましいものに転じていた。その頭部は燃え上がり、私は彼らがなんの助けにもならないことを悟った……)
本を片手に、なにやら英語の文章らしきものをつぶやき出す。
すると、実際に術師の体が震え、またまわりの講堂の床や壁全体が、生き物のようにぬめぬめとのたくり出した。