36.王子たち(5)
「どこにも逃げられねぇぞ。もうそこいらの地下には隈なく根を張り巡らせてる」
愉快げにあざける。
「——くそ、こうなったら!」
やぶれかぶれになったのか、金の王子は自らの身体を流体金属状にすると
「くらえっ!!」
我が身を爆発的に飛び散らせたが、それらの金属片が佐和子たちにまで届くことはなかった。
その前に、金の王子を周囲ごと包む大きな火球があったからだ。
その球内部に、金の王子の成分はすべて封じ置かれていた。
「……水精の技がなかなかおもしろかったのでね、マネさせてもらった」
ぷーすけはおかしげに言うと、そのあとは火属性らしからぬ冷ややかな声で
「だが、ここまでだ。きみはあまりに母上にとって危険だ」
そう言って手を握りしめていくと、その動きに合わせて火球がぐんぐんと圧縮され小さくなる。
「これは?おい、おまえ助けてくれ……きょうだいじゃないか!?」
あわてて命乞いする金の王子に
「同じようなことを言いながら、土の王子は滅んでいったな——さらばだ、同胞よ」
極限まで圧縮されると、金属は燃やし尽くされた。
「終わりましたよ」
ふりかえった息子の声に
「ぷー……」
佐和子が思わず、駆けよろうとするが
「ちくわ!!!」
それを押しのけ、緑髪の子に抱きついたのは直実だった。
「よかった!……よかったよぉ!」
涙でグシュグシュになったにきび顔を、すべすべと美しい少年の頬に摺りつける。
ちくわは
「バカ!抱きつくな、みっともない」
と口では言っているが、表情は満更でもない様子だ。
ぷーすけの
「上位存在であるわたしが蘇ったので、ついでに蘇ったのだな。下位存在」
ことばにも
「——だれが、ついでの下位存在だ!お前がアブねぇ戦い方するから、こっちまで死ぬところだったじゃねえか!」
元気に文句を言っている。うん、もとどおりだ。
そして
「ははうえ」
「なによ」
仕切り直して両手を広げて立つ火の王子を、佐和子はいぶかし見る。
「なにって……ほら、死に別れたと思っていた子との感動の再会ですよ。いくらでも涙を流して熱い抱擁をしてくださってよろしいんですよ」
キラキラした目をして待ち受ける息子に対して、
しかし同級生の父性愛の狂乱を見て冷静を取りもどした少女は
「——いやよ、そんなの恥ずかしい」
ぷいとする。
そのつれないことばに、絶世の美男子は肩を落として、しょぼんとしおれる。
「……母上は、先程わたしのことを『あたしの息子』と呼んでくださったではありませんか」
「気の迷いよ」
こちらも、もとどおりになってしまった。




