リツカ
「ふぅ、後はジェインでコンプリートか。」
リツカは自分のベッドに転がった。
いつもの見慣れた天井。部屋にはオレンジ色の光が差し込んでいる。
「もう夕方かな?うわ、五時間もぶっ通しでプレイしちゃったよ。やば。」
今はまっているゲーム。ついコンプリートが目の前でやり過ぎてしまったようだ。
「ふふ、次はついにジェインだわ。うー楽しみ!」
リツカ一押しのジェイン。イチゴは最後に食べる派のリツカは楽しみでしょうがない。
「りつかー!ご飯よー!」
下から料理自慢の母の声がする。
「はーい。」ベッドから勢いよく立ち上がり、ドアを開けた。
「あれ?」
ドアを開けたはずが天井が見える。見慣れた天井ではなく、豪奢なランプが煌々としている。
窓をみると小さなバルコニーがあり、バルコニー自体は小さめだが、いたる所に細工が施してありとても繊細な雰囲気を醸し出している。
「え?夢・・・。嘘でしょ?すごいリアル。なんでよ。お母さんのご飯・・・食べたかったな。っていうか夢の中でもいいから食べたいよ。」
リツカは楽しみで仕方なかったジェインの回。インする前に、バチバチっと音がしてモニターにエラーが出ていた事までは覚えている。
しかし、止まることなくゲームの世界に来てしまった。入れたのだから大丈夫だろうと楽観視していたのだ。
こちらの世界でご飯を食べたとき、今までにはない違和感があった。胃の中にしっかり入った気がしたのだ。いつもは食べてもなんとなく美味しいかなって味で、お腹がすいたり逆に満腹になったりもなかったのだ。
食べ進めるとやはり、お腹がいっぱいになった。
そして何よりも、美味しくなかったのだ。
この世界の料理って美味しくない。そう認識したとたん母の料理が食べたくなった。
試して帰れないと分かったとき、母の料理で口直しと考えていたのもあって絶望感がハンパなかった。




