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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
一章
17/74

17話

「連理っ!!そっち行ったよ!」


「ちょこまかと!おらぁ!!!」


何をしているのかと言うと…話は長くなるが….。


約一時間前…。



「烏丸さん、連理さん今日の業務は脱走したウサギの捕獲です」


「「え?」」


「え?じゃありません。ではよろしくお願いしますね」


完璧で不気味な笑顔でフィリアが言う。


「ってどこに行ったかくらい教えろ」


「えーそれを自分で考えるのが生徒会業務ですよ~」


この女…。まあいい。


「行くぞ美羽」


「え、ええ!?」



って事があった訳だ。


どうやって居場所を探したか?そりゃ聞き込みだ。


「ウサギ見ませんでしたか?」


なんて間抜けな質問を美羽が繰り返していた。


「連理ぼさってしてないで!」


「あ、ああ。不細工ウサギめ!」


「ぴぎー!!ぴぎゃっ!?」


それは正しい鳴き声なのか…?


「お手柄です。思ったより早く終わったね」


「ぷぎゃ!ぷgy」


「ぷぎゃー!!!!」


「なんでウサギの真似してるの…」


「なんとなくだ」



「あら、もう終わったんですか?」


「お前が逃がしたんだろ?可笑しいと思ったぜ」


「どうしてそう思うのですか?」


「そもそも厳重に鍵が掛けてあるのに脱走出来る訳ねぇだろ」


それに、あの時間に自由に行動できる奴はコイツ位だ。教師すら自由に動ける訳では無い。


「ふふ…正解です。でもバレちゃいましたか」


「何が目的だ?お互いメリットが無いだろ」


ウサギを逃がす事によるデメリット、捕まえることによるメリット、どちらも無い。


「今日は特に生徒会活動がないですからね…良い暇つぶしになったでしょ?」


くだらねぇな。そんなことに付き合わされていたのか。


「歓楽街の件調査が終わりました。やはり裏で手を引いていたのは”下”のギャングでしたね」


フィリアが言う。


「お前にそれを調べる能力があるのか?」


「私じゃなくても、私の部下に居れば十分です」


それもそうだな。叢雲とか言うクソデカい家柄らしいからそれも容易なのだろう。


「放っておくのか?潰すにしても少々厄介だろ」


「放っておきます。実害が出てから潰すかどうかは決めようかと」


既に実害が出てはいるが、仮にまたあの量の脳を集めるのは時間が掛かるだろう。


「それと、関わってしまった男子生徒たちは一応の謹慎処分を課しました」


気の毒だが、社会的制裁は必要だろう。それが戒めとなり人は成長する。


「それに…東城先生も少し気になりますし」


どういうことだ?何故あの哲学教諭の名前が出てくるのか理解できない。


「東城先生がなぜ?何かギャングと関りが有るのですか?」


美羽が俺の思ったことを口に出す。その疑問は当然だろう。


「少し話が長くなりますが…あの人も被害者ですから」


ギャングの被害者側か。”下”から縄張りを広げているのだろう。


”下”で満足しておけばいい物を…。


「でも東城も結構な家柄では…」


「ええ、でも家柄で全てが決まる訳じゃ無い。あなたもそれは理解して居るはず」


家柄なんぞ”下”の奴らには何の価値もない。むしろ人質としての価値が高い分好都合だろう。


”下”の奴らは基本的に善意もクソもない。利己的、裏切りも日常そんな奴らだ。


「彼女は両親が殺されたの。それも目の前で」


しかも犯人が捕まっていない…ね。だからこそ手掛かりになる”下”の奴らの調査をしている訳か。


「確か…東城家襲撃事件が確かにありました。あれがギャングの仕業だったなんて…」


「ええ、その事件以降彼女は塞ぎ込んで最近社会復帰したばかりだったんですが…」


あの女にもそんな事があったのか。ご愁傷様だな。家柄があるだけマシ…いや家柄のせいで起こった事件か。



「貴方たちが…ことの発端ですか」


暗闇から男が出てくる。


「なっ!?お、お前どこから…!?」


「それは可笑しな質問だね。入り口は一つだろ?」


「嘘をつくな!!気配が全くしなかったぞ!?」


男は目の前に立つ男が心底不気味に見える。心から凍り付くような視線、冷や汗がだらだらと止まらない。


「お、おい!?お前ら出てこい!!侵入者だ!」


………….。返事が全くない。何をしている!?こんな時の為に”下”から連れて来たと言うのに!!


「ああ......あれ君の仲間だったんだ。急に切りかかって来たから殺したよ」


男が呆気からんと言い放つ。可笑しい。少なくとも二十人は待機していた筈だ。


それを殺しただと!?俺は一体何と対峙している!?


「ああ、別に君を殺すつもりは無い。今まで通り活動してくれて構わない。しかし条件がある」


な、何が目的だ!?こいつは”上”の人間だ。なぜ”下”の俺達を知り、関わってくる!?


「条件はですね…」


「そ、それだけで良いのか…?もう俺たちに関わらないでくれ…」


男から告げられた条件は普通の…ごく自然な事だった。


「それでは良い人生を」


そういい男の姿が急に消える。


「なんだよ!?あいつは一体何だったんだよ!?」


俺は暗闇の中そうつぶやく事しかできなかった。

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