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靴屋の娘と三人のお兄様  作者: こじまき
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告白

「痛…」


暗闇の中で目が覚めた。私は落下の衝撃で馬車から投げ出されたようだが、毛布に包まれていたおかげで衝撃が和らいだのだろう。頭がガンガンして全身が痛むが、何とか立ち上がることはできた。


暗闇のせいでよく見えないけれど、近くに馬車の残骸はないようだ。床に寝かされていた私だけ、相当飛ばされたらしい。歩き出そうとした瞬間に、脚に鋭い痛みを感じて、へたり込んだ。


どうしよう。今は春のはじめ。山の夜は冷えるから、こんな格好では下手したら凍死してしまう。とりあえず腰のリボンとトレーンを取り外し、上半身に巻く。今はこの薄くて優雅な生地が恨めしい。


アレンお兄様がいてくれたら。軽々抱き上げて、大きな胸と腕で包んで安心させてくれるのに。


「アレンお兄様…」


そのとき、ガサガサと草をかき分ける音がした。恐怖で体が固まる。あの男たち?それとも狼?熊?


本当に怖いとき、声は出ないんだと知る。


「デイジー?」

「お兄様…っ」


ランタンの灯りで照らされたアレンお兄様の顔が見えた。アレンお兄様が来てくれた…


お兄様は私を優しく抱きしめた。大きな身体にすっぽりと包まれ、温かさと安心感で力が抜ける。身体の痛みすら和らいだように感じる。


「よかった、本当によかった…壊れた馬車を見つけて、デイジーを失ったのかと…怖かった…」

「私も怖かったです。二度とアレンお兄様に会えないかもと思って…」


アレンお兄様はピタリと動きと止めた。


「私に?イーライでもカラバスでもなく、私に会いたかったのか?」

「ええ」


涙が溢れてくる。いつも私を見守ってくれて、助けに来てくれる人。大きな安心できる手の持ち主。


「デイジー」


お兄様はぼさぼさになった私の髪をそっと撫でた。


「キスしたいんだが、いいか?」


笑いがこみ上げてきた。笑うと身体が痛むが、止められない。こんなときまで真面目に私の許可を得るんだから…そういうところが好きなのかもしれない。


私はアレンお兄様の顔を手で挟んで、キスをした。


軽くて、すぐに離れるキス。


「足りない」


アレンお兄様は私を抱きしめて深いキスを返してくれる。


「愛してる」

「私も愛してます、アレンお兄様」


アレンお兄様はもう一度私を抱きしめてくれた。


山道までお兄様に抱えられて戻り、二人で馬に揺られて、どうやって私を見つけたのか説明されながら帰る。


カラバスお兄様がホークボロー家の馬車の横で倒れているのを発見したこと。カラバスお兄様が息も絶え絶えに、ならず者が走り去った方角を教えてくれたこと。馬で馬車の轍を追いかけ、山道でスリップした跡を発見し、山に分け入ってついに私を見つけたこと…


「カラバスお兄様は、大丈夫なんですか?」

「怪我はひどかったが、命に別状はない」

「よかった…私、魔法使いなのに何もできなくて…」


俯くとボロボロのドレスが目に入って、なんだか笑えてしまう。


「どうした?」

「だってせっかくお兄様が"愛してる"って言ってくださったのに、私ったらひどい格好で。ドレスも髪もめちゃくちゃで…」


「それは私もだ」とお兄様も笑う。それもそうだ。木の枝や草をかき分けて山中を進んできたのだから、顔もタキシードも傷だらけで泥だらけなのだ。


アレンお兄様が後ろから私に身体を寄せて「私はどんな格好のデイジーでも愛してる」と耳元で囁く。耳の横に持ってこられたお兄様の顔を振り返りながら「私もです」と返すと、そっと唇と唇が重なった。


「不安だった。デイジーがイーライやカラバスを選ぶのではないかと…」とアレンお兄様が呟く。


「どうしてですか?」

「私は跡取りだし…イーライやカラバスと結婚したほうが自由な生活を送れる。そのほうがデイジーにとって幸せなのではないかと…」


それを聞いて私はまた笑い出してしまう。笑うと身体が痛い。アレンお兄様はいつも堂々として自信満々なのかと思っていたが、違うようだ。でもがっかりはしない。可愛いと思ってしまう。


「愛する人のそばにいること以上の幸せは、どこにもありません」


そう言ってまた私はアレンお兄様にキスをした。

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