20:誹謗
「透、アンタさぁ、“みずのペット探偵事務所”に改名しなって。星4,9でしょ?高評価じゃん」
「まだ諦めて無いんだよ……」
「フン、アンタはアンタ、お父さんはお父さんなの。同じ人間じゃないんだから向き不向きがあるんだよ。
……別にお父さんと同じ事しないと親孝行にならない訳じゃないんだから」
恒例の姉弟の朝の語らい。
今日は窘め担当?の花井さんはお休み。
珈琲の芳しい香りが立ちのぼる。
そろそろ純喫茶みずのの開店時刻だ。
1番にご来店されたのは彩さんの占いの常連、奈良原さんだ。
「あら、奈良原ちゃんいらっしゃい!」
「彩先生、大変です!コレ、見て下さいよ!」
奈良原さんが見せてくれたタブレットの画面には《みずの探偵事務所》のレビューが載っている。
「えっ?星1,8?どうして?」
そこには僕も見たことのない低評価とレビューが並んでいた。
【みずの探偵事務所:レビュー星1,8】
“一向に探してくれず、平気で高額料金を請求してくる”
“担当者が女好きみたいで説いてきてウザい”
“動物の扱いが雑でココの従業員がキライ”
《真実のみずの探偵事務所》
◯探してくれない→5分弱で見つける
◯女好き→何やら理由あり?モテそうなのに女性は避けてる(恋愛を避けてる)
◯動物の扱いが雑→マタタビオーラでめっちゃ動物に好かれる
ちっとも該当しないよ!
「……あり得ない事しか書いとらん!!」
「ね、信じられないですよね」
「ありがとうございます、奈良原さん。教えて下さって」
「透さん大丈夫ですか?」
「透、誰かこんなコトする人覚えある?」
「覚えはないんだけど……」
そこにご来店のお客様が。八須賀さんと保さん(霊)だ。
「なんか深刻そうだな。何かあったのか、彩さん?」
「実はねぇ……」
斯々然々彩さんが2人に話しをした。
「ふ〜ん、ねぇ、透君、もしかして心当たりがあるんじゃない?例えば最近出来たペット探偵事務所とか」
「うん……。この前まさにそこから電話掛かってきて、言い掛かりつけられたんだよね。
こんなに直ぐ見つかるはずはないとか、探索料金があんな値段なんてオカシイとかさ。
レビューも、盛って書かせているか、サクラだろ、とか」
透のマタタビオーラでスムーズに見つけるのと、下調べや張り込みはほぼ必要無いので料金を抑えめにしている。あとは、ひとり社長だから大々的にやってないし、サクラを使って集客しなくてもやっていけるほど依頼がある。
『よりによって、みずの探偵事務所の近くに事務所出すなんてなぁ。普通は競合店の調査しないかぁ?』
「そうですよね、保さん」
奈良原さんは頷く。実はこの方も保さんが視えているのだ。霊が視える人多くない?
『そうだ、透さん。オレがあの辺りを調べてみようか?
霊だからよ、オレ、上手くやれると思うんだ』
「いや、保さんにこんなことお願いするわけには……」
「いや透君、実際問題、えぇとペット探偵110番ワンだっけ?あそこがやったって証拠が必要でしょ?
保さんなら証拠、上手く見つけてくれる筈だよ。
視えないからね」
透は迷った末、保さんへ相手の敷地内に入らない、必ず公道から調査をお願いした。
自分で証拠を探したいトコロだろうが、残念なことに依頼がパンパンに入っているのだ。
「八須賀さん、発信者情報開示請求と損害賠償請求を依頼したいんですが、お願い出来ますか?」
「勿論」
なんと八須賀さん、弁護士だったのだ。
僕の職業予想は見事にハズレ。
なんでも、今では八須賀さんと保さん(霊)はプライベートも仲の良いビジネスパートナーになっているとか。
縁って面白いよね。
因みにお給料は?お供え物でOKとのこと。




