1:予期せぬ
「貴方は転移しました。今いるところは、並行世界です!!」
髪が長く色白の綺麗な女性が、ドヤッとした表情で僕を見据える。えーと、ヤバい宗教の人に捕まったのか?
望月蒼(33)、ピンチ?
一先ず、他に変な人が出てくる前に逃走すべき?
キョドりながら、たった5分前、この女性との出会いが頭を駆け巡る。
【その5分前—】
「へぁっ!?」
何にもないところで足がガクンとなり転んだ。
地面に這いつくばっている。
はぁ、大人になって転ぶとちょっと悲しい。
周り誰もいないし、暗いし、痛いし。
身体を起こしてスラックスに付いたであろう、砂を叩く。怪我はないみたいだ。
深夜0時。
しんと空気が冷たくてほろ酔いの身体に気持ちいい。
目の前の神社の灯籠に仄かな明かりが灯り、星空と相まって神秘的に綺麗だ。
気持ちが持ち直る。
ゆっくり立ち上がると、女性がコチラへ走ってきた。
「ちょっと貴方!」
「はい?」
「私、見たわ」
何を?
「大丈夫、保護してあげるから」
保護とは?
「取り敢えず、こっちへいらっしゃい!」
有無を言わせずグイグイと力強く引っ張られる。
怪力な女性だな!
跳ね除けることはできるだろうが、そうしてしまうとこの女性が怪我しそうだったので仕方なくついて行く。
神社の近くに喫茶店がある……こんなとこにあったっけ?最近出来たの?
その喫茶店に連れ込まれた。
「取り敢えず、そこに座って」
渋々椅子に腰掛ける。
レトロ喫茶?アンティークな調度品が並ぶお洒落な店だ。
「珈琲でいいかしら?いいわよね?」
返事をする前に珈琲用意してるじゃないか。
直ぐにフワッと珈琲のいい香りが漂う。
「貴方みたいな人、初めて見たわ。
お陰でちょっと動揺してる」
珈琲が僕の前に置かれる。温かい。
—が、飲むのが怖くなった。
「私はね、ここで喫茶店をやってる水野彩です。
眠れなくてぼんやり店に降りてきたところだったのね。そしたら貴方が見えたから慌てて来たのよ」
えっと……
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やっぱり5分前の事を思い起こしても、この女性、変な人かも。
“並行世界”だなんて、漫画の中の話じゃあるまいし。
「どぅした姉ちゃん?」
そこへ長身の男性が現れた。僕と同じくらいの年だろうか?
色気があって、色白。起きがけだからだろうか、アンニュイな雰囲気もある。
「透聞いて!こちら並行世界から来た人なの!」
「はぁ?」
「だから、並行世界!!よくご覧なさい!」
「ヘブっ!?」
そう言うと、彩さんは、透さん?の顔を掴むとグイッと僕の方へ顔を向けさせる。
あ…彼、首大丈夫かな?
「ほら、並行世界よ!言ってみて」
「ふぇんこぉーせふぁい」
あぁ、顔をムギュッとされてるけど痛くないかな?
「分かったでしょう?」
ドヤッと彩さんが言うけど、少なくとも僕は分からない。納得いってない表情の透さん?もきっとそうだろう。
「まぁ、分からないの?だから人関係の依頼がないのよ!人への観察が足りない!
はぁ~、動物には観察が働くのに残念ね」
「むぅ。あ、分かった!彼、瞳の色が黒いけどちょっと違うね。コンタクトじゃなくて裸眼でその感じでしょ?透明感が強い感じ。
わぁ、はじめまして水野透です」
えっ……。瞳の透明感!?……普通だったかと思うのだけど、近くに鏡はないから確かめることは出来ない。
「あの、僕は望月蒼と申します。
並行世界とは、何のことか分からないのですが、どういう事でしょうか?」




