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石の記憶  作者: 弥生 飛鳥
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プロローグ

プロローグ


 私がその石に出会ったのは、会員制のバーだった。

 普通に飲みにきても落ち着いて、いい雰囲気の店だが、奥には会員だけが入れる部屋があった。

 STAFF ONLYと書かれた扉に、私の首にかかる水晶のペンダントを当てるとロックが解除される音がした。

 あらかじめ会員登録の情報が入った水晶がなければ、この部屋には入れない。

 ここの会員は一般人から見ればオカルトかぶれの怪しい人以外の何者でもないのだろう。

 私をここに呼び出した人物はまだ来ていないらしい。1番隅のできるだけ人目につかない席に座った。

 会員でありながらこういってはなんだが、ここに来る人たちの9割は好きではない。私から見てもオカルトかぶれの変人ばかり。

「それでね、地下都市が・・・。」

「駐車場の警備員もその空飛ぶ光をちゃんと見てたらいいし。」

 ほら、聞いてるとこっちまでおかしくなってくる。

 まあ、そんな非日常を味わいたくてここに来てるんだろうし、彼らとて何もタダの妄想を話してるだけではない。それなりの根拠や研究の上。だからここの会員になれたのだ。

 周りの先客達の話があまり耳に入らないようにイヤホンをはめて音楽に集中した。

「お待たせ。」

 1曲聞き終わる前に待ち人は来た。

「あなたに見てもらいたかったのはコレなの。」

 彼女は椅子に座るのももどかしいように立ったままバックをあさった。

「コレ」

 彼女は手のひらサイズの小さな箱を差し出した。

「今回の石の仕入れで見つけたんだけど、何だか不思議な感じがして、とにかくあなたに見てもらいたかったの。」

 箱を開けるとサファイヤのような深い青色の石が入っていた。でもサファイヤではない。何の石なのかわからない上に、何ともいえぬ独特の雰囲気をかもし出していた。

「ね、何かあるでしょ。早く読んでみて。」

 やっと椅子に座った彼女は身を乗り出して私の顔を覗き込んだ。

 そう、私がここの会員になったのは「石をリーディングする能力」があるから。

 石は長い長い年月をいろんな出来事を記憶している。図書館のようなもの。ただ人間が読める文字になっていないだけ。現にこのバーの会員は会員情報の入ったクリスタルを持っている。石とは情報をインプットし保存しておくことができる。

 そして、人間には読めないその図書館を私はなぜか読むことが出来る。

「ね、ね、何が見えるの? どんな記憶?」

 私のリーディングは瞬時にいろんな情報が入ってくる。それを言葉に落とすのがとても大変だった。今回のこの石はとても長い記憶を語ってくれた。

 しかし、それは今までに石から読み取った記憶とは全く違うものだった。石が記憶していることなのだから過去のことのはず、でもこの世界はどう考えても未来にしか思えない!

「どうしたの? そんなにすごい情報なの?」

「どう伝えたらいいのか・・・。」


 石が私に語ったことは、本当に未来にしか思えなかった。舞台はSF映画の設定かと思うほどの異世界。宇宙人や妖怪が出てくるわけではないが、「人間」が2種類いる。

「ナチュラル」と呼ばれる、今の私たちのような人種と、「ジーンリッチ」と呼ばれる優秀な遺伝子を掛け合わせた半分人造人間のような人種。見た目は全く変わりはない人間だが、ジーンリッチの額には石が埋め込まれている。

 この石はその1つ。ある人に埋め込まれていたもの。そして彼の記憶を見せてくれた。



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