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20話 あなたの代わりに




「なんでこんなことに……?」


豪華なシャンデリアが煌めき、

その下では人々の笑い声と、食器の触れ合う音。


賑やかな広間の片隅で、

メイド服を身に纏ったクラリスの背を、じっとりと汗が伝った。


クラリスは、スカートの裾をぎゅっと握りしめる。








城に着いたところまでは良かったのだ。

だが。


「今は、ヒポクルス国の料理人によるワタンボの解体ショーが行われておりますよ」


にこりと微笑み、メイドは去っていった。


「ど、どうしよう!そのまま配られるんだよね!?生で食べたら、感染するよ!?」


クラリスは頭を抱えていたが、はっと顔を上げた。


「あ!じゃあ、メイドさんに“食べないで”って伝えてもらえば!?」


「駄目だ」


ルスカは即座に遮った。


「これは交流目的の会だ。そんなことをすれば、外交問題になる」


そこまで言って、ルスカは口をつぐむ。


「……今の俺の立場では、知ったことではないが」


「そ、そっか。善意で出される料理に“危ない”なんて言えないよね……」


顎に手を当て、考え込んでいたルスカが顔を上げる。


「……あの解体中のワタンボのアメーバを消すのはどうだ?」


「それだ!」


クラリスの表情が、ぱっと明るくなる。


その時、トレーを手にしたメイドが、ちょうど二人の横を通り過ぎた。


次の瞬間。


ルスカは、メイドの顔の横、壁に手をついた。


「えっ…?」


突然の壁ドンに、メイドは目を丸くする。


「……命令だ。お前にしか、できないことだ」


「……えっ?」


頬を染めるメイド。

にやりと口角を上げるルスカ。


その光景を見て、クラリスは思わず息を呑んだ。








「えっ!?ほ、本気で脱ぐんですか!?こ、ここで!?」


「ごめんね……国の存亡がかかってて……」


部屋の隅。

鎧を纏った兵を壁代わりにしながら、クラリスはいそいそと服を脱ぐ。


メイドは唖然としたまま、震える手でエプロンの紐を解いていた。


「どこの悪代官かと思ったよね……」


下着姿のまま、クラリスは自分のズボンをメイドに手渡す。


「これ、その服の下に履いて。パンツ見えないから。

あ、頭のそれ取るね」


ホワイトブリムを外し、自分の頭に乗せる。


「えーと……失礼!」


呆然とするメイドにズボンを履かせ、自身はメイドから脱がせた服を着る。


「よし、完成!」


「おい、まだか!?ショーが終わるぞ!」


「いま終わったよ!せっかちだなあ」


ぽかんとしたままのメイドに手を合わせ、メイド服姿になったクラリスは兵の間をすり抜けた。


ルスカはその姿をちらりと見て、思わず目を止め――すぐに視線を逸らす。


視線に気づいたクラリスはスカートの裾をつまみ、にやりと笑った。


「……何なりとご命令を、ご主人様?」


「やめろ。珍しくスカートを穿いたかと思えば……」


咳払いをして、ルスカは広間の扉へと視線を向ける。


「いいか。魔法を使っていることを、向こうに悟られるな。外交問題になりかねん」


真剣な声に、クラリスはこくりと頷いた。


そうして、通りがかったメイドの後に続き、

するりと、広間へと足を踏み入れた。



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