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まおうさまの勇者育成計画  作者: okamiyu
第九章:魔王とは何か、王が王になる前の話――千年前の地獄と九つの罪
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第百五十六話:地獄は解けないパズル――ルービックキューブの中心にいるのは誰か

地獄は、落ちる場所ではない。

設計された世界であり、回り続ける装置であり、

そして――試されるのは、罪ではなく「覚悟」だ。


百年を一手に使う魔王と、

三十日しか持たない勇者たち。


動く地獄の中心で、

四人は手を取り合い、最初の一歩を踏み出す。


さて――

最初に転がり出るのは、

蛇(悪魔)か、蛇(悪魔)か。

地獄の世界は人間の世界とは異なり、まるでルービックキューブのような形をしている。

六つの面は、天道、地獄道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道という六道を表している。

八つの頂点と一つの核は、九つの罪を犯した者が堕ちる地獄である:

等活とうかつ地獄

怒りに駆られ人を殺めた者が堕ちる地獄。

黒縄こくじょう地獄

窃盗、強盗など金銭に関わる罪を犯した者が堕ちる地獄。

衆合しゅうごう地獄

邪淫を犯した者が堕ちる地獄。

叫喚きょうかん地獄

飲酒によって罪を犯した者が堕ちる地獄。

焦熱しょうねつ地獄

暴飲暴食に耽った者が堕ちる地獄。

紅蓮ぐれん地獄

妄語を繰り返し罪を犯した者が堕ちる地獄。

無間むけん地獄

働かず自堕落に生きた者が堕ちる地獄。

阿鼻あび地獄

聖者を裏切った者が堕ちる地獄。

そして最後に

孤独こどく地獄

あらゆる罪を犯し、最も罪深き者が堕ちる地獄である。

地獄の世界はルービックキューブのように絶えず動き続けている。しかし、八つの頂点が互いに隣接することは決してなく、また、唯一動かない中心の位置には──モリアがいる。

そういうわけで、毛玉は黒板に板書を書きながら説明していた。

「1ヶ月だけで地獄を回りきることすら難しいんじゃないか」レンが質問した。

「大丈夫だ。事前に転移用のアジトをいくつか作ってあるから、一瞬で移動できる。ただ、世界そのものが動いているから座標も常に変わる。どの角に飛ぶかは私にもわからない」

「でも、七十二柱の悪魔さんたちがいらっしゃいますね。一日に二体倒しても間に合いません」セリナは改めて一ヶ月という時間の短さを実感した。

「それは大丈夫。既に六十二柱には勝っているから」

「……???」

毛玉の淡々とした告白に、二人は思わず吹き出しそうになった。

「すげえじゃねえか! 見直したよ! ちなみに、一体にどれくらい時間かけたんだ?」

「気にしたことはないが、平均して一体に百年くらいか」

「……え?」

百年。毛玉は平然と言っているが、セリナとレンにとっては普通の人間の一生より長い時間だ。

「一体で百年ですから、六十二体だと六千二百年でありますね」

エンプラもまた人間の時間感覚を持たない分、ごく普通に計算している。

「長えよ! どんだけ時間かけてんだよ! それじゃあモリアも切れるだろ! このペースだとまだ千年かかるってことか! 待てるわけねえだろそんなの!」レンは激しいツッコミを入れた。

「バカか、君は。相手は悪魔だ。ちょっとしたミスが命取りになる。やり直すチャンスはない。あの強者たちから逃げ切れるわけがない。だからこそ、情報収集、弱点分析、戦術設計、事前仕込みをしっかりやる。私はそうやってここまで生き延びてきたんだ」

毛玉の言う通り、永遠の命を持っているとはいえ、神格を持たない彼は殺されれば死んでしまう。何度殺しても死なない悪魔たちとは違う。負けたらそこでゲームオーバー。すべてが終わる。それにそのお陰で、転移先のアジトができたことだし、その気持ちは理解できるが――

(七千二百年は長すぎだろ…)

だからこそ、モリアは彼女たちを未来から呼び寄せ、急がせようとしたのだ。「一ヶ月で」と言っているが、彼女の時間感覚で言えば――

『今すぐ、できる限り早くしなさい。これ以上待てない』という最終通告なのだろう。

「あの……残りの十柱の悪魔さんたちは、どんな方たちですか?」セリナは前向きに、一ヶ月でどうにかするため話を先へ進めようとした。

「王クラスが九柱、公爵クラスが一柱だ」

「手強いのばっかり残してやがったな」

「悪魔公爵アスタロト、

憤怒の王ザベルト、

強欲の王マムブス、

憂鬱の王バラム、

虚栄の王ザガン、

怠惰の王ヴェネゴール、

暴食の王ベリアル、

色欲の王アスモデウス、

傲慢の王リバエル、

そしてラスボスの――

嫉妬の王パイモン、モリアのことだ」

「あいつが嫉妬か! はは! お似合いすぎる! いかにもねじねじした性格してるしな!」レンは腹を抱えて笑いを堪えられなかった。

「まあ、オリジナルは心が狭いでありますからね」

「ダメですよ! たとえ本当のことでも、言い出すと彼女が可哀想じゃありませんか……痛っ!」

いきなり空から三つのたらいが落ち、三人の頭を直撃した。

「痛え……あいつ全知だから、このくらいのこと許してもいいじゃねえか。やっぱ心が狭いな」

さらに空からたらいが三つ、今度はレンめがけて落ちてきた。

「同じ手を二度もくらうかよって……で、痛っ!」

見事に避けたはずが、三つのたらいは地面に落ちず、再び彼の頭上に命中した。さらに紙切れが一枚ついていた。

「『男の胸に負けた可哀想な女の子(笑)』 ちくしょう、ムカつく!」

「あの……話を戻してもいいかね……」

毛玉は今の騒がしい雰囲気にまだ慣れておらず、少し置いてけぼりを食らっていた。*

「やはり、まずは公爵のアスタロトを攻略すべきであります。公爵なら、王より弱いに違いありません」

「いや、そうとは限らない。私も最初はそう考えて下位階級から攻略を始めたが、すぐに思い知らされた。王クラスは特別だが、下位階級が必ずしも弱いわけではない。戦闘特化した者なら王以上の実力を持つこともある。悪魔侯爵サブナックは、侯爵でありながら戦闘技術が高かった、かなり私を追い詰めた。結局ギリギリで勝ったが、危うかった。他にも君主のシトリーや伯爵のフルフルなど……」

まるで苦虫を噛み潰したような表情で毛玉は語った。百年の準備を重ねても、実際に彼らと戦った記憶は、どれも思い出したくないほどの苦痛だった。

「アスタロト? あっ、思い出しました」

セリナは未来の世界で毛玉との最終決戦を思い出す。確かに九人の王がいた。その時、唯一王ではなかった彼女――アスタロトもまた、その場にいた。

「未来の彼らに会ったのか。なるほど、だからモリアが君たちを過去へこの時点へ送ったわけだ」

実際、セリナたちには王クラスの悪魔に勝てるほどの力はない。だが、こうした些細な情報が、過去の毛玉にとっては貴重な助けとなる。

「もっと詳しく教えてくれ。王クラスに関する情報収集は正直リスクが高く、あまり進んでいない。どんな些細なことでも構わない」

「はい。あのアスタロトさんは、綺麗で可愛らしい女性の方で、ドラゴンの角と尻尾が生えていました」

「ドラゴンの角と尻尾……なるほど。本体はドラゴンの可能性が高いな。ブレスも使えると考えるべきで、対策が必要だ」

毛玉は熱心にセリナの話をメモに取る。

「でも、最初は彼女、ザガンと名乗っていた気がします。なぜでしょう?」

「偽装だ。ザガンは虚栄の王。アスタロトを影に隠していたのか。道理でずっとアスタロトには遭遇していなかったわけだ。ザガンとの戦いでは、アスタロトも一緒と考えるべきかもしれないな」

セリナの情報を糧に、彼の思考は高速で回転し、次々と計画が練られていく。

「俺もアスモデウスに会ったことある。彼女は幻術が得意で、あの……せい…魔術もすごいらしい」

「性魔術」という単語に顔を赤らめながらも、レンは協力を惜しまなかった。

「ほう……幻術と性魔術のスタイルか。これは用心が必要だ。ただ性魔術は相手に接近し拘束してかけるコンボが前提となる。彼女は近接格闘も強い可能性が十分にあるだろう」

「嘘!? ただのエロ技しか使わないお姉さんだと思ってた」

さらに情報を元に、仮説を立てていく。

「ベリアルの名前は前線の報告から聞いたことがあります。鎌で津波を両断し、そのまま黒い炎で焼き尽くしたとのことであります」

エンプラも自身のデータベースから、該当する報告書を探し出し、毛玉に伝える。

「武器はデスサイズ……津波を両断するほどの力に、黒い炎による侵食か。厄介だな。何でも『食べる』ということは、ほとんどの攻撃が効かない可能性がある。できれば早くは会いたくないな」

明らかに危険な対象は、できる限り戦闘を後回しにする。その間に、対策を練るのだ。

「助かった。これだけで、二百年ほどの時間を節約できた気がする。みんな、お疲れ様」

「それはよかったけど……それでもまだ八百年分の作業が残ってるじゃねえか…」

二百年の短縮は助かるが、本来の計画である千年に比べれば、大して縮んでいない。ましてや彼女たちに与えられた期限は、たった一ヶ月だ。

「急がば回れ。急ぐことで、かえって余計な手間がかかり、計画以上の時間を費やすこともある。回り道こそが、最短の道なのだ」

「そうですね」

セリナは思い出す。昔、自分が成長を急ぎ、ブラックセリナになった時、毛玉は同じ言葉を彼女にかけていた。

(やっぱり、マオウさんはマオウさんですね)

「では、移動しよう。今はできればサベルト、ベリアル、リバエルには会いたくないな。私との相性が悪すぎる。だが、そんなことを望んだところで、この世界が優しく応じてくれるわけでもないだろう。キューブを回すのはモリアだ。余計なことを考えても仕方ないか……」

毛玉はセリナとレンの手を取った。

「マオウさん?」

「ちょっと、いきなり手を握らないでよ。心の準備ができてないだろ」

「ほら、そこのポンコツ、円陣を組むぞ」

「円陣♪円陣♪円陣♪であります! で、吾輩はポンコツじゃないでありますよ」

ワクワクしながらエンプラはレンとセリナの手を取った。

「なんですか。この恥ずかしい行為……」

「前にやった時に気づいた。どうすれば全員がばらけずに転移できるか――この円陣を一つの個体として移動させればいい。だから着くまで絶対に手を離すなよ」

「離したらどうなるでありますか?」

「空間の狭間に取り残されて、二度と出られなくなる」

「危ない! モリアさんみたいにパッと移動できないか?」

「無茶を言うな。こっちはずっとソロでやってきたから、多数の味方を同時に転移させる魔法の研究なんてしてない。未来の俺はともかく、今の俺はこれが精一杯だ。それとも歩いていくか? 安全だけど、着く前に時間切れるぞ」

「ああ……もうわかったから飛ばしてくれ。手を離したら呪うからな」

レンは毛玉の手を強く握った。

「わかった、離さないよ」

毛玉もまた、強く握り返した。

「むっ」

セリナは二人のそんな雰囲気に少しヤキモチを感じ、対抗するかのように、自分も握る力を強めた。

「おお、みんな仲良しであります!」

キューブ世界は回り続ける。それでも、四人の絆はこの円陣のように固く結ばれている。魔法の光とともに、彼らは次の戦場へと向かう。行き先はわからない。だが、どの道を選ぼうと、地獄であることに変わりはない。

さて、最初の相手は蛇(悪魔)が出るか、蛇(悪魔)が出るか――。

依頼期限まで、残り30日。

一ヶ月。

人にとっては短く、

魔王にとっては、瞬きほどの時間。


それでも――

手を取り、円を作り、同じ場所へ立つことを選んだ。


地獄は回る。

王たちは待たない。


だが、

絆だけは、決して離れない。


次に回る角がどこであろうと、

そこが地獄であることに変わりはない。


依頼期限まで、残り三十日。


地獄攻略編、ここに本格始動。

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