『バイト先の制服を着てみたいです』
「ふぅ、これで課題終わった」
「お疲れ様でした。和真君も課題が終わりましたし、お風呂に入りましょうか」
「ああ、そうしよう」
6月後半のとある平日の夜。
優奈の部屋で課題を終わらせた優奈と俺は一緒にお風呂に入ることに。
俺は課題や勉強道具を持って自室に戻る。替えの下着や寝間着を持って浴室に繋がる洗面所に向かった。
洗面所に行くと、既に優奈がいた。俺は優奈と一緒に服を脱ぎ始め――。
「あっ、そうだ。バイト先の制服を持って帰ってきていたんだった。洗濯機に入れるから持ってくるよ」
「分かりました」
俺は自室に戻り、バイト先のマスタードーナッツのスタッフの制服が入っている手提げを持って洗面所に戻る。
バイトの制服は定期的に家に持ち帰って洗うことになっている。そのため、今日はバイト先から制服を持ち帰ってきたのだ。
手提げからバイト先の制服を取り出す。すると、
「あっ、何だか甘い匂いがほんのり香ってきますね」
服を脱いで下着姿になっていた優奈がそんなことを言ってきた。甘い匂いなのもあってか、バイト先の制服に顔を近づけてクンクンと嗅ぐ。
「……いい匂いです。甘い匂いと和真君の匂いが感じられて」
「今日もバイトで着たからな。それに、俺の仕事は接客がメインだけど、色々なドーナッツを取り扱っているから、それでドーナッツの甘い匂いが付いたのかも」
「なるほどです。……この制服を一度着てみたいです。和真君がバイト先で着ているものですから。それに、いい匂いもしますし」
優奈は俺のことを見つめながらそんなことを言ってきた。
俺がバイト先で着ているものだから、制服を一度着てみたいか。いい匂いもするからって言うのもあって、とても可愛いことを考えるなぁって思う。
まあ、着るのは妻の優奈だし、家の中だからバイトの制服を着ても問題はないか。
「着てみていいぞ、優奈。俺の制服だから、優奈にはサイズが大きいかもしれないけど」
「ありがとうございますっ!」
優奈はとても嬉しそうにお礼を言った。可愛いな。あと、下着姿だからドキッとして。
さっそく優奈は俺のバイト先の制服を着始める。
バイト先では男女それぞれの更衣室で制服に着替えるから、女性である優奈がバイト先の制服を着るところを見ることにちょっと罪悪感が。大好きなお嫁さんだし、入浴する前後に着替える姿をいつも見ているから何も問題はないんだけどね。
「着られました!」
優奈が俺のバイト先の制服を着終わった。
バイト先の制服はスラックスに半袖のシャツ、そしてエプロンだ。半袖のシャツとエプロンは特にブカブカな感じはしないけど、スラックスは裾が床に付いてしまっている。ただ、そこがいい。
まさか、俺のバイト先の制服を優奈が着る日が来るとは。
「可愛いな。似合っているよ」
「ありがとうございます!」
優奈はニッコリとした笑顔でお礼を言った。この笑顔で接客したらとても人気のある店員さんになりそうだ。
「どうだ? 着心地は」
「和真君の制服ですから、特にキツくはないですね。スラックスはさすがに丈が長くて、床に付いちゃってますが」
「まあ、俺が穿いてちょうどいいくらいだからな。ただ、そこがいいなって思うよ」
「ふふっ、良かったです。シャツは丈がちょっと長めですけど、着てみたらちょうどいい着心地です。前にボタンがありますし、胸が大きいのでボタンを留められるか不安でしたけど、難なく留められました」
「そうか。まあ、優奈よりも大きな体格の俺が着られるサイズのシャツだからな。着られて良かったよ」
胸のことが話題になったので、優奈の胸を見てしまう。制服越しだけど、優奈の大きな胸は結構な存在感がある。ボタンを難なく留められたのもあって、シャツがパツンパツンになっていたり、ボタンが取れそうだったりすることはない。
「制服を着たので、さっき嗅いだとき以上に和真君の匂いとドーナッツの甘い匂いが感じられて。和真君に包まれている感じがして幸せな気持ちになります」
その言葉が本心であると証明するかのように、優奈の笑顔は幸せそうなものに変わって。俺の匂いのことだし、いつも俺が着ている制服を着ながら言ってくれたので俺も幸せな気持ちになっていく。
「優奈がそう言ってくれて俺も幸せだよ」
「ふふっ、そうですか」
「制服姿が可愛いし、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「いいですよ! あと、私のスマホに送ってください」
「ああ、もちろんさ。ありがとう」
俺は自分の部屋からスマホを持ってきて、バイトの制服姿の優奈の写真を何枚か撮影した。
着られた嬉しさか優奈はいい笑顔だし、ピースサインをしてくれることもあって。どれもいい写真だ。約束通り、撮影した写真は優奈のスマホに送信した。
「送っておいたよ」
「ありがとうございますっ。……和真君のバイト先の制服を着ていますから、店員さんのような振る舞いをしてみたいですね」
そう言うと、優奈は持ち前の柔らかい笑顔になり、俺を見つめながら両手を重ねて、
「いらっしゃいませ。店内でのご利用でしょうか。それとも、お持ち帰りでしょうか」
と、落ち着いた声色で言った。おぉ、本物の店員さんみたいだ。
「こんな感じでしょうか。バイト中の和真君を思い出しながら言ってみたのですが」
「凄いよ、優奈。本物の店員さんみたいだよ」
「ふふっ、それは良かったです」
「ああ。……せっかく店員さんみたいに振る舞ってくれたから、俺はお客さんになるか」
「いいですねっ、お願いします」
「分かった。……お持ち帰りで」
「お持ち帰りですね。では、ご注文をお伺いします」
「……目の前にいる長瀬優奈という店員さんをお持ち帰りで」
せっかく優奈がバイト先の制服を着ているし、店員さんのような振る舞いをしているからな。お持ち帰り注文をしてみたかったのだ。それに、三者面談期間中の頃のバイトで、優奈が俺をお持ち帰り注文をしていたから。
「私をお持ち帰りですね。かしこまりました。少々お待ちください」
優奈は先ほどと同じく落ち着いた声色でそう言い、軽く頭を下げた。
優奈は俺に一歩近づくと、
「お待たせしました! 私ですっ」
ニッコリとした笑顔で俺を見つめながらそう言ってきた。本当に可愛いな、俺のお嫁さん。
俺は優奈のことをそっと抱きしめて、
「確かに受け取りました」
「はいっ。……和真君のバイト先の制服を着られて、和真君に店員さんのように振る舞うことができて嬉しいです。お持ち帰り注文をしてくれましたし」
「それは良かった。俺も制服姿の優奈とか、店員さんのように振る舞う優奈を見られて良かったよ。写真も撮られてくれたし」
「そうですか! 和真君、ありがとうございました」
優奈は持ち前の可愛らしい笑顔でお礼を言うと、俺にキスをしてきた。制服を着させてくれたお礼のキスかな。
優奈とはたくさんキスしているけど、優奈が俺のバイトの制服を着ているし、ドーナッツの甘い匂いがほのかに香ってくるから特別な感じがした。
数秒ほどして優奈から唇を離す。すると、目の前には頬をほんのりと赤らめた優奈の笑顔があった。
その後、優奈も俺も服を全て脱いで一緒にお風呂に入る。
バイト先の制服のこともあってか、いつも以上に気持ち良く感じられたのであった。
『バイト先の制服を着てみたいです』 おわり
ショートストーリー集がスタートしました!
ショートストーリーは4つあり、1日1つずつ公開します。よろしくお願いします。




