12話 温泉の許可と冒険者との揉め事
ようやく、繫がった道、これで交易もできるってもんだ。
そして俺は、温泉探しの旅に出るのだ。
「というわけで、温泉のある場所を教えてください」
「というわけではない。これから交易が始まるのにその代表者がいきなりいなくなってどうする!?」
と、シミル。
「そこは、シミルを信じてるから」
「はぁ、駄目だ。交易は始まったばかりで、まだ何が起こるかわからん。こちらとしても問題が起きた時に居てくれないと困る」
「何故だ!? 信用してくれているのだろう?」
「私は信用はしている。しかし、まだまだ領民も他の冒険者ギルド会員も信頼を得ていないだうが」
確かにまだ他の冒険者や領民に信用はされてないかもしれない。
「では、いっそ、我がダンジョンが危険ではないと、いうことを信じてもう為に、ダンジョンツアーでも組むか? 特に目新しいものはまだないが」
「それこそまだまだ先の話しになるだろうな。冒険者はともかく一般的な領民は誰もダンジョンなんて行きたがる奴がいないぞ。本来ダンジョンは人間の敵であって、味方ではないからな」
「私は違うと言っているぞ」
「だから……。はあ、もういい、とにかくガイア、君には当分ダンジョンかこの町の冒険者ギルドに居てもらう必要がある。温泉はしばらく諦めろ」
ムムム!諦めきれんぞ温泉。
「なら場所だけでも教えてくれ。配下に取ってこさせる」
「それこそだめだ、温泉街には、この事を知らんやつらばかりだ。いきなりモンスターが現れたらパニックになる。どうしてもというなら依頼をだせ」
「依頼?」
「あのな、ここは、冒険者ギルドだぞ。依頼をだせば、誰かが受注してくれるかもしれんぞ。ほら」
と1枚の紙を渡された。
「これは?冒険者ギルドの依頼表だ、そこに依頼内容と金額を書け」
「わかった……」
俺は渋々依頼表を書くことにした。
依頼内容
・温泉街に行き、各種温泉水を採取してきて欲しい。
「こんなもんか?」
「ああそれでいい、しかし、各種温泉水って結構な量になるな、これなら、金貨1枚で請け負うぞ」
「む!? 結構高いな。しかし、背に腹は代えられん。それで頼む」
「毎度あり。後で、受付に回しておくよ。まったく、急に来るから何事かと思えば温泉とはな。用はそれだけなのか?」
「いや、ついでにこの世界を見て回りたいから冒険者ギルドの会員にしてくれ。そうすれば身分証の代わりになるんだろ」
「は?」
「いや、だから冒険者になりたいといっているんだが」
「どの世界にダンジョンコアが冒険者になりたい奴が……。ここにいるな。それも現段階では登録はできん」
「それもダメなのか!?」
「理由は温泉と同じだ。もし与えたら勝手に違う町に行くつもりだろうが!?」
「ちっ、バレていたか」
「取り敢えずこの町だけだが、許可証は特例で領主のマキノからもらったろ? それでしばらくは、我慢しておけ」
「わかったよ、それで、一応今日の分の納品分を持ってきた。裏に置いたがそれでいんだよな?」
「ああ、それで構わない、こちらも今日の分を今頃用意しているだろう」
ガシャン!とギルドに併設されている酒場から大きな音がした。
「問題が起きたみたいだぞ? ギルド長」
「そのようだな、見に行くか」
俺とシミルは、酒場へと移動すると、そこには俺が連れてきたゴブリンと冒険者が言い争っていた。
「ほらみろ、早速問題起きてるぞ、ガイア」
「そのようだな、話しを聞きに行くか」
と、シミルと俺はゴブリンと冒険者に近づく。
「ゴブリン風情が酒なんか飲んでじゃねえよ!」
「こっちはちゃんと、許可をもらってお金も払ったゴブ! お前にとやかく言われる筋合いはないゴブ!」
「2人とも落ち着け」
「あっ、マスター、おいらは何もしてないゴブ、勝手に向こうが絡んできたゴブ」
「マスターだあ?てめえがモンスターどもの親玉か?」
「そうだが、家のゴブリンは悪さはしてないようにみえるぞ」
「うるせえ! てえめらモンスターが今までしてきた事を考えろ!」
「うちのモンスターは無暗に人を襲わない、それを言うなら君たち人間だって、盗賊に身をやつした連中だっているだろうに。家はその逆バージョンだと思ってくれ」
「双方そこまでにしておけ、これは、冒険者ギルドと領主様が決めたことだ。仲良くしろとは言わんが、せめて問題をおこすな」
「ギルド長! こいつらの肩を持つんですか!? こいつらは所詮モンスターだ。どうせすぐに裏切るに決まってる!」
「肩を持っているわけはない。お前たちも現状ポーションの材料が少なく十分な数が揃わない為に仕事に支障きたしている者もいるだろう。それを今回の交易で補えるのだ。感情だけで動くな」
「ちっ、覚えてやがれ」
と、俺を睨みながら舌打ちをして去っていく冒険者。
これは、帰り道は気を付けた方がいいかな?
「なあ、帰り道にもし襲われたら盗賊として、止む無く処理してしまってもいいか?」
「それは勘弁してやってくれ。できれば、捕縛で頼む」
「あいよ、でもああいう輩は、いつか怒りが爆発して何をされるか分かったもんじゃない」
「こちらでも注意はしておくよ」
「頼むぞ本当に、面倒事は嫌いなんだ」
「奇遇だな、私もだ」
そして帰り道、案の定というか、お約束というか、俺達は、先ほどの冒険者達に囲まれていた。
「お前たちダンジョンモンスターなんて信じられねえ。ここで、死んでもらう」
「ゴブさん達、やっておしまいなさい!」
「分かったゴブ盗賊は成敗してくれてやるゴブ」
「成敗しては、いけません。全員捕縛しろ」
「了解ゴブ」
家のゴブたちは、鍛錬を欠かしていないので、相当強いよ。
それに、ここは俺が作った町までの街道だ。
俺の他の配下達が見回りをしている。
そろそろ、配下の増援もくる。
「てめえら、ゴブリンごときに何してやがる!?」
「そうはいってもこいつら結構やりやがる」
そうこうしている内に増援が到着。
「何!? スケルトンにミノタウルスだと!?」
「やべえよ、逃げようぜ!あの数じゃこっちがやられちまう」
「逃がすな、全員捕縛しろ!」
「了解ゴブ」
「了解です、マスター」
逃げる冒険者達を家の配下達が捕まえる。
冒険者を捕縛完了。
取り敢えず、ダンジョンに連れて帰るか。
ダンジョンに着いてから思ったことがある。
この前の盗賊の時もそうだが、こいつらを閉じ込めておく部屋がない。
ので、俺の技能、階層改築で牢屋を作ってみた。
ゴゴゴゴゴゴゴとダンジョンが変化していくのはなんだかリフォーム工事しているみたいで楽しい物がるな。
そろそろ階層ごとに特色を出して行ってもいいかもしれない。
今のところ、ただの洞窟だし。
「マスター、冒険者達をこの牢屋に入れておくゴブか?」
「ああ、頼む。さてまた明日も町にいかなければならないな。こいつらを届けに」
「取り敢えず食事にしましょう」
と、ミノタウルス。
なぜかミノタウルス達はいつも丁寧にしゃべるから、違和感が半端ない。
もっとこう、『だべ』とか語尾に『モウ』とかゴブリンみたいに『ゴブ』とかつけば、面白いのに。
「そんな喋り方はしませんよ。それに考えてることが口に出てますよ」
どうやら口に出ていたらしい。
1人事って人に聞かれると、恥ずかしいよな。
まあ、この場合は、ミノタウルスだから、モンスターだけど。
「よし、取り敢えず今日は酒も手に入ったから、交代で飲んでいいぞ。でもあまり飲みすぎて、仕事に支障が出ないようにな」
はあ、今日はことごとくシミルに却下されるし、冒険者達もからんでくるし、酒でも飲まんとやってらんない。
だれか温泉水の依頼を受けてくれています、ように。




