第一章 はじまりのオーガ 一層目
ディープオブメルト。
オリジナルの同人ゲーム用にこさえたシナリオです。
内容的には短く、単純にまとめていく予定ですが話自体は長くなる予定です。
拙い表現、逆に細かすぎる部分もあると思いますが、読んで楽しんでいただければ幸いです。
遠き地、遠き星、それは確かに存在した。
多くの命と多くの種族が共存し、互いに生き、互い争うこともあった。
ある時、そんな星に大きな存在が現れる。
大きな存在の影響は凄まじく、星の生命の全てが滅びに瀕した。
だが、もう一つの小さな存在がそれを封じ、結果的に星の窮地は救われた。
そんな大層な伝承の中から、今にも残る噂があった。
闇の水晶。
大きな存在が封じられる時に遺したとされるそれは、手にした者に大いなる富と名声が齎される。
そんな噂を信じ、多くの冒険家や探窟家がそれを求めたが手にした者は未だいないという。
真否もわからない噂。
今、その噂を信じた娘が一人、危険な旅を始めようとしていた。
【ディープオブメルト】
第一章 はじまりのオーガ 一層目
星のへそとも呼ばれる大穴が発見されたのはここほんの数年の話であった。
闇の水晶がそこにある。
そんな噂がどこから現れたのかは定かでは無い。
僅かな噂でも王家や豪族たちはすがり、多くの兵隊や探窟家を差し向けた。
しかし、誰一人として戻る者はいなかった。
豪族たちも、しばらくして星のへその探索を諦めざるを得なかった。
いつの日かその洞窟は人喰いの大穴オーガと呼ばれるようになった。
「ここが人喰い洞窟?」
星のへそとも、人喰い大穴オーガとも呼ばれる洞窟の前に一人立ったのは、まだ見た目若い娘であった。
探窟家の、それもまだまだ見習いでもあるメルトがオーガに行き着いたのは偶然ではない。
「ここに闇の水晶がある、ほんとかなぁ…?」
噂や、大勢の人がこの大穴に挑み帰らぬ者になったことは遠く離れた地にも伝わっている。
しかしそれでもメルトは闇の水晶を求め、ここまでやってきたのだ。
全ては己の願いのため………。
まるで鬼のように大きく開いた口を目の前にして、メルトはおそるおそる中へと踏み行っていった。
山深い中にある大穴は、入り口自体はまだ明るく見える。
だが少し奥に進むだけでも、すぐに薄暗く、やがて足元も確認出来ないほどの暗さへと変わっていった。
狭くはないが、暗く、湿気が強く、ぴちゃぴちゃとした音に不気味さを感じさせる何かがある。
メルトはランタンで前を照らし確認しつつ、足元の変化にも注意しながら進んでいった。
「さすがに雰囲気出てきたかな…」
メルトの周囲には入ってすぐに何かに襲われ、命を落としたのであろうと思われる人骨が四散していた。
物怖じせずメルトはそれに近寄った。
「ぬるぬるしてる?」
人骨に触れ、その感触の違和感を確認する。
死者からの情報は多い。
見逃せるものなど何もないのだ。
「スライムかな…」
スライム、粘液性不定形生物の総称とされている。
魔物として認知されており、物理的な攻撃が通じにくいために一般的な武装の兵隊では対処が難しかったのだろうとメルトは考察した。
「ジメジメしてるし、どこから出てきてもおかしくなさそうね…」
メルトは周囲を確認しながら、ゆっくりと進んでいく。
じゅるるる……。
不意にそんな音がメルトの耳をかすめた。
「出た?」
すぐに身を構える。
だがどこから来るかはわからない。
魔物と戦った経験などないメルトにとって、低級とされるスライムだろうと恐怖の対象でしかない。
じゅる…、じゅるるるる……。
近づいてくるのがわかる。
洞窟内の不気味な暗がり、滴る水滴の音が、敵が近づいてくる方向の位置を掻き乱す。
(やばいやばいやばいやばい…)
メルトは混乱していた。
音に乱され、どこから現れるのか、どんな姿なのか、何もわからないものに恐怖するのは当たり前だ。
ぴちゃん!!と大きな滴りが聞こえる。
メルトはその音で思わず恐怖に身をかがめてしまった。
そこへ……、しゅっとした音と共に、スライムがメルトの目前まで現れた。
「ひっ!?」
さらに思わず、メルトは後方へと倒れてしまう。
「うわわわわわ……」
メルトは目を丸くしながら、じゅるじゅると近づいてくるスライムを見た。
(た、たしか……)
スライムは男性にとって最も脅威的な存在と言っても過言ではない。
そう思い出す。
それは全ての種の魔物であってもそうではあるが、スライムは特に遭遇する確率も高い。
その上、捕食のために取り付いた者は、すぐにでも融解し同化しようとする。
男性であれば取り込みに躊躇などなく、それは少しでも触れたところから溶かし始めるのである。
では、女性であればどうだろう。
(や、やばいよね…、いきなり孕まされるとか!?)
メルトは混乱する頭の中で、そこだけは冷静に思い出した。
そう、魔物にとって他種族の、特に人間やエルフ族の女性は子を宿すための苗床にするのに最も適しているとされているのだ。
メルトは腰袋からナイフを取り出すと、既に足元に絡みつくスライムに突き刺した。
が、まるでどろどろの飴に突き刺したような感触。
全く手応えのないそれに、メルトはさらに焦りを感じる。
じゅる……じゅる……と、不気味な音を立てながらスライムはメルトの上半身まで這い上がってくる。
「う、うわわわわわ……」
(気持ち悪すぎる……!)
体中を這い寄る感触に、メルトは背筋に怖気を走らせながら、なんとか後ずさった。
しかし…。
「ひ、ひゃあ!?」
可愛い声を上げ、メルトの脳が覚醒する。
(な、中にはいりこんだ!?)
スライムはにゅるにゅると器用にメルトの短パンに潜りこみ、下着を弄っているところだ。
「や、やだやだ! やめてったら!」
メルトはなんとかスライムを引き剥がそうと右手で抵抗する。
しかし、ぬるぬるとした感触でスライムには全く手応えがない。
(どうする!? どうする!?)
メルトは必死に考えを巡らせた。
「ひあ!?」
上着にも容赦なく潜りこみ、メルトの敏感そうな部分をつねあげる。
「うあ! あっ!や、やだ……!?」
ビクビクと身体全体が震え、今までに感じたことのない感覚がメルトを襲った。
(これやばい! きっとやばいやつだ!)
既に身体のほとんどの自由を奪われたメルトにとって、死ぬこと以上の辛さを味わうには覚悟が出来ていなかった。
(考えろ! どうすればいいか!)
メルトはさらに必死に状況の打破を思案する。
(そういえば!?)
メルトは何かを感づいた。
「ひう!? やだってばぁ!」
敏感な部分をつねられ、下着の上から肉を弄られ、メルトは初めての快感に翻弄されつつあった。
しかし、一つの思いが快感に流されることを拒んだのだ。
(右手は動く!?)
身体のほとんどの部分は動かない。
だが右半身には自由がきく。
(そうか!)
メルトは何かの答えに行き着き、右手でそれを握った。
その瞬間、明らかにスライムの動きがにぶる。
「火だ!」
メルトはランタンの灯火をスライムに向けた。
すると、あっという間にスライムはメルトの身体から離れていく。
(火に弱いんだ!)
思い立ったがメルトは松明に火を灯すと、逃げようとするスライムにそれをあてがった。
ずる…ずる…とスライムは不気味な音を立てながら、燃え広がっていく火に抵抗も出来ずに焼失していく。
「やった!」
メルトは窮地を脱出した安堵に包まれながら、へなへなと腰を落ち着けた。
「危なかった……」
またいつこのような事になるかわからない。
そんな不安を抱えながらも、しばらくしてメルトは立ち上がった。
メルトはとりあえず手持ちの道具を確認した。
備えは万端ではなく、今持っている物はナイフ、それに数本の松明、そしてランタンと基本的な探窟道具のみである。
およそ武器になりそうな物はナイフと、探窟用のツルハシくらいしかない。
「まさか、棲んでる魔物がスライムだけってことはないよね?」
と、辺りを見回し、洞窟内に散乱する先人の遺品から、使えそうなものを拝借していく。
非力なため、重いものは持っていけない。
それでも、魔物を対応するには必要になるだろう。
メルトはいくつかの松明の残りや、手ぬぐい程度の持ち運びがしやすいものを選びながら洞窟の奥へと進んでいった。
スライムは際限なく現れる。
メルトはその都度松明で撃退していった。
ずる…ずる…と蒸発と分裂を繰り返しながら、最終的に焼失していくスライム。
「うー、この音だいっきらい…」
そんな嫌悪感を抱きながら、奥へ奥へと進んでいくと…。
「ぎ…ぎぎぎ…」
「ごぎゃ!ぎききき!」
人の言葉ではない、何か得体のしれないものの話し声が聞こえてくる。
松明を持っているのか、僅かな風に揺らめく灯りが見える。
メルトは自分のランタンの火を消し、岩陰に息を潜めた。
(魔物? まだ浅い階層だし、いるとすれば…)
ゴブリン。
人の子供程の背丈で、腕力はあるが賢くはない。
妖精のような種族の魔物。
人に対しては非常に敵対的であり、男性は食料に、女性は繁殖用に監禁するという。
メルトは手持ちの布に石礫を包み、くるくると振り回す。
いわゆる印地と呼ばれる投石技術だ。
メルトのように非力な女性でも簡単に高い威力を出せるため、攻撃手段として優秀である。
「ぎ!ぎゃぎ!」
「ぎげげげ!ぎきき!」
何の会話をしているのかは全くわからないが、薄暗がりの中でゴブリン達はふた手に別れた。
一人は奥へと、もう一人はメルトが隠れている方向へと向かってきている。
(しばらく一本道だし、やるしかない……)
メルトは石礫をくるくるとまわし、向かってくるゴブリンの頭部目掛けて打ち放った。
「ぎょぎ!?」
ゴリッという鈍い音と共に、ゴブリンが倒れる音を確認する。
ゴブリンが手にしていた松明が地に落ち周囲を照らす。
「やった!」
メルトは得意になって、倒れたゴブリンへと近寄った。
「ぎ、ぎぎぎぎぎ………」
「まだ生きてる!?」
ゴブリンは頭部から血をながしながら、ビクビクと身を震わせている。
「この!」
メルトは躊躇なくゴブリンの頭にナイフを突き刺そうとするが…。
「ぎきゃ!」
「うわっ!?」
突然腕を掴まれ、洞窟の壁面へと叩きつけられた。
(しまった…、調子に乗って周りを見てなかった!)
メルトは咄嗟に身を起こそうとするも…。
「きゃ!?」
捕まれた腕が、そのまま壁面へと抑え込まれてしまう。
さらに目の前にはゴブリンの下卑た笑みが迫る。
「ぎききき!!」
ゴブリンはやられた仲間のことなど意に介さず、目の前に見つけた獲物の値踏みをする。
「は、はなして!!」
メルトはゴブリンを押し返そうとするが、小柄な割に腕力のあるゴブリンの腕を引き剥がす事が出来ない。
「ぐききききき…」
ゴブリンは怪しげな笑い声を吐きながら、長い舌を出してメルトの頬を舐め上げた。
「うあ! やだっ!気持ち悪いってば!」
嫌悪感たっぷりに首を振りながら、必死にゴブリンを振り払おうとするも、全く歯が立たない。
ゴブリンはべろべろとメルトの頬から首筋を舐り、いよいよ服に手をかけようとした。
その時……。
ゴブリンがメルトの衣服を破り取ろうと腕を離したのだ。
この機会を見逃す手はないと、メルトの右手はすぐに地をまさぐった。
「こ、この!?」
メルトは咄嗟に地に転がっていた石を持つと、それをゴブリンの頭部に叩きつけた。
「ごきゃ!?」
たまらず倒れ伏すゴブリン。
「と、トドメ!!」
メルトは再びナイフを手にすると、ゴブリンの首にそれを突き刺した。
「ぎっ!? ぎぎぎぎ…」
ゴブリンは首に刺さった刃物を抜くことも出来ず、血しぶきをあげながら悶え狂う。
そしてすぐに倒れ、ビクビクと身体を震わせて息絶えた。
その光景をメルトは呆気に取られながら見守ることしか出来なかった。
(あ、危なかった……)
少し冷静さを取り戻し、ゴブリンの首に刺さったナイフを取り戻そうとしたが…。
「うあ…、刃こぼれしてる…」
思い切り突き刺したのが原因か、そもそも耐久性の問題か、そのナイフはもう使えそうにない。
メルトはもう片方のゴブリンも既に事切れているのを確認し、周囲に使えそうなものを物色する。
「あ…。 こんなものしかないか…」
メルトはゴブリンが使っていたものであろう短剣を発見する。
粗野な作りだが、ナイフ代わりにはなるだろう。
また松明や、先人から奪ったものであろう道具を頂き、メルトは先への道を確認した。
かすかな風が奥から吹き付ける。
その様子に、この洞窟はまだまだ長く続きそうな予感を感じさせた。
そして、奥から吹き付ける不気味な瘴気を受けながら、メルトはゆっくりと進むのであった。
ディープオブメルトにはこの先様々な怪物、魔物、悪魔、そういった類の者がたくさん登場します。
元々は色々なファンタジー要素を持つお話に登場する者と大概変わりませんが、ディープオブメルト独自の設定を作っていくように心がけています。
そのため、特定の怪物はそういった動きや設定は無いのでは?みたいなこともあると思いますが、そういった垣根を取り払って自由に描きたいと思っていますのでよろしくお願いします。
R-18版
の予定もあります。
こちらはゲームの方で採用、お話だけでも公開の予定をしています。
また、絵担当のフルフルにもデザインをしてもらいますので、気に入ったらなんか反応してくれると嬉しいです。
よろしく(*゜Д゜)b