肉体強化訓練
「ノル、起きて」
「うにゅう、にっちゃ、もう朝?」
まだ、辺りは真っ暗な感じだよ?
「もうすぐ、朝だよ、いつもより1時間ぐらい早いけどね。
今日から、ノルの素の身体を強化する、【肉体強化】訓練だよ。
ほら、起きて」
にっちゃ、僕はおねむのネムなの。
ボーって頭が霞んでる。
だけど、頑張りゅって、にっちゃと約束したから。
僕はやるのネムネムのネムでも
まだ暗いお外に出る。
もう晩秋だから、肌寒いね。
「もう僕は水汲み終わらせたから、朝食まで時間が1時間ちょっとかな。
まずは身体を温める動きをするよ、動的ストレッチって言うんだけどね、軽く動かしながら、血流を上げて、関節をなめらかにするんだよ。
僕と同じ動きをしてね」
ザックの動きをまねる。だんだんと肌寒さがなくなり、身体が暖かくなる。
「僕は出来なくなっちゃったけど、走るのは全ての運動の基本なんだよ。
ちょっと歩きながら、山の手前の丘まで行くから説明するね」
丘に向いながらザックの説明によると、肉体は目的に最適化する為に鍛えるのが正しいらしい。
筋肉には速筋と遅筋ってのがあって、早くパワーがあるのが速筋、スタミナがあるのか遅筋らしい。
速筋は一瞬で大きなパワーを消費する為、大きい筋肉になるし、遅筋は長くそこそこなパワーを維持する為締まった筋肉になるんだって
(にっちゃ、何でも知りすぎじゃない?)
この村は、1日中長く作業をする人がほとんどで、スタミナ型のタイプがほとんど。
唯一に近くパワー型なのが、樵のおじさんで、彼の仕事は一瞬のパワーとスピードで斧を打ち付ける為、速筋が優位になるそう。
たしかに一番ごついかも
じゃあ僕らが目指す目的は?って事なんだけど、速筋よりのバランス型なんだって。
今、強くなる為に頑張ってるけど、まぁ間違いなく冒険者になると思うんだって。
行商人も悪くないけど、きっと国を超えて旅する行商人なんてほどんどいないと思うって。
冒険者になった場合、戦闘職なんだけど普通は1回の戦闘は5分以内に終わる。
5分でも長いくらいで、余裕をもって最大10分戦える肉体を作るのが目標。
接敵時点で、10分以上の戦闘の可能性がある場合は、即時撤退が基本で、それを理解出来ない冒険者とは組むなって。
だから、5分を基本として最大10分の戦闘を、70%の力で巡行戦闘して、隙やタイミングで最大90%の力を出して緩急をつけれるようにするのが目標なんですと。
決して100%の力ですぐに燃え尽きてもいけないし、60%の力で舐めるような事はあってはならないと。
余裕と緊張感が継続するのが70%だというのが、ザックの自論だ
村の名前の由来となったコプトル山の手前に、高さ50mくらいの丘がある。
「着いたね。この丘を道なりに登って、下りたら、約1キロの距離がある。
普通の大人で往復7~10分、速い人でも5~6分ぐらいかかる。
アップダウンがあるからね、平地の1キロの1.5倍ぐらい負担と時間がかかると思うよ。
ノルの目標は最終的にこれを70%の力で、4分30秒ぐらいで走破出来るようになる事かな。
出来たら、2週で9分いけたら一番いいけどね。
[身体強化]は無しだから、相当難しいし年数がかかると思う。
だけど、成長期に合わせて負荷をかけ続けて欲しい。
自分が走れないくせに、厳しい事ばっかり言う兄ちゃんでごめんね。
でもノルならやりとげるって、信じてるよ。」
「にっちゃ。にっちゃが信じてくれりゅなら、僕は100人力なの!がんばりゅ!」
「うん、頑張って!行くよ。よーいドン!」
結局1周するのに、ヘロヘロになりほとんど歩いている様な状態で、19分ちょっとかかってしまった。泣
「お疲れ様、はいお水を飲んで。
仕方ないよ。まだ5歳で、村の中をちょっと走った事ぐらいしかないだろうからね。
難しいって言ったでしょ。
昨日の投擲と一緒で、まず走るって事を身体に覚えさせる事からだね。
これから毎朝やるよ」
「うにゅー、おえぇ」
吐き気がしたけど、お腹に何にも入ってないから、出るのはさっき飲んだお水とすっぱいヨダレだけ。
にっちゃ、わかってて朝食前にしたのかな?鬼かな?
フラフラしながら家に辿り着き、朝食を食べたけど、あんまりおいしく感じなかった。
かあちゃが心配してたけど、にっちゃが「今、ノルを鍛えてるから」と言うと、少し苦笑いで、「危ない事はしちゃダメよ」って、それ以上かあちゃも、他のみんなも何も言わなかった。
心配そうな、父とケビンのお手伝いを終えて、河原に向かう。
昨日確認したから、今日の罠確認はなし。また明日確認する。
「さて、今から筋肉トレーニング、略して筋トレをやるよ」
「きんとれぇ?」
「そう筋トレ、人のパワーやスピードは、概ね筋肉が役割を担っているからね。
まぁ、筋肉だけって訳じゃないけど、訓練すれば筋肉は一番効果が出やすいからね。
今日は3種目、プランクと首トレとスクワット。
プランクと首トレは僕も一緒にやるよ。スクワットは足の曲げ伸ばしあるから僕は難しいんだ」
それから、ザックが見本を見せながら、プランク各種と首トレ、本当は重りを持ちながらやる予定のスクワットを、フラフラになりながら自重でやった。
少し慣れたらビック3(スクワット・デットリフト・ベンチプレス)を重りを使ってやるんだって、、、。
流石に、ザックも、疲れすぎてるって判断で、その後の投擲は、真剣に狙って左右20投ずつで許してくれた。
(優しいような、いや厳しすぎる気がすりゅ)
でもモモ肉昼食後の魔力関係のメニューは、動かないからとそのまま実行
(やっぱり鬼ぃ、いやオーガ!いや悪魔ぁ)って思ったね。
夜のお部屋で、疲れを残さない為に[柔軟のストレッチ]をやったんだけど、これだけは、僕の身体は柔らかいみたいで、1回で合格のお墨付きをもらった。
まぁ、結局続けなさいって言われたけれども、、、。
最後の魔力枯渇前に、ザックは
「ノル、この3日間、本当に頑張ったね。凄いよ!ノルが産まれてから今までで、一番体力的にきつかったと思う。よく耐えました。
大変だったと思うけど、お願いだから、これからも続けて欲しい。
明日から続けて行くとね、1か月もしない内に、そんなに疲れを感じなくなると思う。
成長期の順応って凄いんだよ。
ノルの場合、身体が全く準備出来てなかったから、身体の順応と、成長・強化で、始めの三ヶ月は、面白いぐらい記録が伸びると思うよ。
その後は、ゆっくりと成長ししていく感じかな。
魔力総量増加で話したみたいに、毎日コツコツやって成長するんだ。
塵も積もればって言うやつね。
だけどね、ノルが頑張ったら、すぐに僕みたいに位階Ⅱに辿り着くと思うよ。
下手すりゃ10代の内に位階Ⅲに届くかもしれない。
そうなると偉人級だよ!
位階が上がると生物的に強くなるから、100歳まで生きるかもしれない。
その100年の中で、どんなに努力したとしても、ノルの5歳~15歳の努力した10年には、絶対に成長量で勝てない。
これは断言出来る。
それだけ成長期ってのは凄いし、人生で一時期しかないんだよ。
魔力の成長と身体の成長が重なってプラスボーナスがある時期なんて、成長期のみだからね。
あの時頑張ってたらなんて事を後悔しないで済むように、お願いします。
愛してるよノル!ありがとう」
にっちゃの熱いお言葉をもらって、僕の鬼の3日間が終わった。




