(仮)師匠 (ザックSIDE)
行商人の情報は、僕を久しぶりにワクワクした気持ちにさせてくれた。
何せ、この世界で初めて会える流通業者であり、村人より確実に多くの知見があるだろうし。
異世界物語に出る商人ってやつだ!
仲良くなって知識チートの可能性があるんじゃないの!?とワクワクすっぞ!
護衛の冒険者ってのも気になる!
護衛って事は、狩人のおじさんと違い、本物の戦闘職でしょ。
武器や防具を持っているんだろうし、お話も聞いてみたい。
「父さん、春に行商人の人が来るんでしょ。うちも何か買うの?」
「そうだなあ、まあ塩は買うが、あとは何かあるかな母さん?」
「そうねぇ、手頃な布があれば嬉しいけど。子供達が沢山食べるから、去年の秋は、麦あんまり売れなかったからねぇ」
おふぅ。子沢山農家の現実よ、、、。
そりゃあそうだなあ。年貢と自分達の食料以外の余剰農産物しか、売れる物がないもんなあ。
なんか良い商品ないかなあ。
異世界先輩諸兄!ヒントを下さい!
お願いします。
いやあ、僕の知識じゃ厳しいわ。
先輩諸兄定番のリバーシは可能性あるけど、権利関係の確定しない中で、村人が行商人との取引はキツい。
あと、異世界物語であるのが、石鹸・化粧品・薬・ポーションとかかあ、ポーションは存在自体が不明だなあ、薬師もどきのおばさんにもう一度聞いてみるか。
化粧品・薬関係も僕には厳しそう。石鹸は油と草木灰でいけるよね?油がなあ。オリーブとかないし。厳しい。
いかん、いかん!また自分を追い詰めてどうすんのよ。
気楽に楽しもうよ!楽しみながら行ける範囲で行こう。
行商人さん、指折り数えて待ってるよ!楽しみだ!!
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カーン・カーン・カーン
広い村に板木を叩く音が響きわたる
「ザフトさんが来たぞー!」
カーン・カーン・カーン
春の芽吹きが始まった頃、僕らの家にも板木の音が届いてきた。
おお!とうとう行商人さんがやって来た!ザフトさんっていうのね。
娯楽のないこの村では大イベントだ!
姉さん・兄さん・僕は
「早く、早くぅ」
とソワソワ両親をせかし、釣られてノルンもキャッキャしてる。かわゆす。
広場には、1頭だての幌馬車が、停まっており、40代ぐらいのおじさんが村長さんとお話している。あれがザフトさんかな。
近くには、20代半ばぐらいのお兄さんが2人。 冒険者だ!!
2人共に、革の胸当てと、腕甲と脚甲を装着している!
ウヒョー!かっちょいい!
大きな体格で剣を腰に差し、手には小盾を持っている強面のお兄さん、もう片方は中肉で槍を持って、幌馬車のそばで警戒してる。
村長さんとの話が終わると、3人で布を敷き、商品と思われる物を幌馬車から降ろして並べていく。
村人達がワイワイと商品見学をし始めたので、僕らも見ていく。
塩・干し肉などの食料関係、布・毛糸・糸・針などの裁縫関係、ナイフ・農具・鍋などの鉄器関係、残りは木の食器や櫛・髪飾りなども置いてある。
「ナイフいいなあ」
「素敵な布地ねぇ」
「塩買わなきゃねぇ」
と、家族でワイワイ見学した。
正直、僕が欲しいのはナイフぐらいだけど楽しい!これぞ文明の香り!
しばらく、意味もなくウロウロ見学したり、村人達の買い物のやり取りを聞いたりして充分に楽しんだ。
よし!冒険者にアタックだ!
まずは槍のお兄さん
「お兄さん、カッコいいね。冒険者さんなの?」
「なんだ坊主、冒険者になりたいのか?」
「うん、僕は次男だから、お兄さんみたいになりたい。いつも行商人さんと旅をしてるの?」
「そうかあ、俺も農家の次男よ。
ザフトさんの行商の護衛は、春と秋だな、いつもはラブルにる」
槍のお兄さんは、ジャックスさん。
180cmぐらいで引き締まった体つきで、少し軽い感じで、子供の僕でも話し易い人だ。
ラブルは子爵領都でここから一番近い街(それでも馬車で1週間ぐらいかかる)、に普段はいて、剣のお兄さん、チェイスさんと2人で魔獣討伐や護衛の仕事をしてるんだって。
2m近くありそうで大柄かつ強面のチェイスさんも、話してみると寡黙気味だが優しい人で、色々と情報を教えてくれた。
野蛮系な冒険者じゃなくて良かった。今日は村長さんの家に泊まって明日の午前中まで商売して、別の村に行くらしい。
くそぅ、時間がなさすぎる。
僕は一度家に帰って、自家製の木槍と石ナイフ、くくり罠を持って、再度アタックする事にした。
「ジャックスさん、これ僕が作ったんだけど、これでホーンラビット捕れる?」
「ん?お前そんな事したいのか?お前まだ3つか、4つぐらいだろ」
「うん、3歳だよ。だけど、うちは6歳2人と僕と1歳の弟いるから、食べれる物が欲しいの」
「・・・そうかあ、俺も農家の出だから、わからん事もないけどなあ、ちょっと待ってろ」
ジャックスさんは、ザフトさんとチェイスさんに声をかけて、少し離れた所で話をしてくれた。
ジャックスさん・チェイスさんは同じ農村の次男同士らしい。
少年の頃に冒険者を目指す事を決め、運良くその村には元冒険者の狩人がいて手ほどきを受けたとの事で、僕にも色々教えてくれた。
やはり、僕の幼い体格で、ホーンラビットと木槍で対決は、無謀すぎるから絶対にやめろと怒られた。
(うん、そう思う)
ただ、くくり罠は良く出来ており、ちゃんと設置すれば、捕獲して殺す事は出来ると思うと。
その場合は、槍ではなくて、石斧の様な物を作って、罠にかかった兎の頭蓋を殴った方が僕の体格なら良いと思うとの事。
安全の為に簡単でもいいから木盾を作れと言われた。
「ホーンラビットは、攻撃的なの?
目・耳・鼻がいいとかある?
罠設置する時に見つかったら逃げれる?」
「あいつらは警戒心が強いな。耳がいいから近づくと気付かれやすいだろうな。目と鼻は悪くはないが普通だ。
特別に攻撃的ではないが、縄張り意識が強いから、縄張りに入ると襲って来る。縄張りの外まで追って来る事は、滅多にないからヤバい時は逃げろ。
お前はまだ小さいから、縄張りには入るなよ。縄張りの端に罠を設置しろ。 昼間は奴らは巣の中にいる事が多い。
その間にな。
縄張りは足跡を良く観察すればわかる」
大変ためになるアドバイスを頂いた。
ジャックスさんは、(仮)師匠だ!
その後も、くくり罠の設置方法や、簡単な槍の振り方・静かな歩き方・足跡の見かたを教えてくれて、参考までにと、チェイスさんの小盾も見せてくれた。
行商人のザフトさんとは話せなかったけど、(仮)師匠のジャックスさんを得た!
異世界先輩諸兄!僕、急ぎ足チートは無理だけど、一歩一歩前進します。
明日の朝も会いに行こう!




