冒険者と泊まり先
傭兵団とやらがバタバタと慌ただしく動き始める。乱暴な言葉遣いながらも会計を済ませ、レニーの顔色をうかがいながら店から去っていった。
自分の席に座り直し、一息つく。
「冒険者さん」
目を輝かせながら店員が話しかけてくる。
「あなた、凄く頼りになるんだね!」
声が先ほどよりも明らかに弾んでいた。
「お腹に余裕があるなら一品サービスさせてよ。お礼になるかわからないけどさ」
「いや、この上ないご褒美にはなるだろうけど……」
外を見る。夕闇が活気を鎮め始めるころだ。美味しいものを食べて野宿でもいいが、できれば宿には泊まりたい。
「おすすめの宿とかあるかい」
「……うーん、この時間だとどこも泊まれないだろうしなぁ」
眉間に人差し指を当てながら、店員が悩む。
「約束はできないけど、ここで泊まれないか、店長にかけあってはみる」
腰に手を当てて、店員はニカっと笑う。
「それはありがたい」
確約、ではないが、ないよりはいいだろう。
「――あの」
遠慮がちな声が間に入ってくる。目を向けると、最初に絡まれていた女性だった。
「さっきはありがとう。あの人たち、怖かったから」
「気にしなくていい。やつらが悪い」
手を振りながら、レニーは即答した。
「それであの……宿泊先に困っているならウチに来る?」
「……いいの?」
こくりと頷かれる。
「リミーヤさん、大丈夫なの」
店員からリミーヤと呼ばれた女性はぎこちなく笑う。
「大丈夫。心配してくれてありがとう」
何やら事情がありそうだったが、部外者のレニーが深堀りしようとするものではないだろう。気にしないことにした。
店員が仕切り直すように大きく手を叩く。
「そうなれば、憂い無し、だね。どれにする? 個人的にはおすすめはピザかな」
「ならそれをお願いしようかな」
「わかった!」
レニーは視線をリミーヤに合わせる。
「キミも、ピザ食べる?」
「へ?」
「お腹空いてるならだけど。怖い目にあったんなら、何かで帳消しにしとかないと」
タダだし、と。
レニーは続ける。
「オレひとりで食べ切れるかわからないし。ま、物足りなかったら追加で頼ませてもらうよ。急ぐ必要なくなったし」
レニーは店員に目を向ける。店員は無言のまま、ウィンクで返した。
「飲み物でも頼んで落ち着く時間をつくったほうがいい。ほら、相席しておけば変な声掛けもないだろうから」
リミーヤは周りを見渡してから、静かに頷いた。
「ではお言葉に甘えて――さっき、夕食、頼もうとしたところだったので」
「おあずけ食らったわけ」
「えぇ。なのでおなかペコペコ、だなんて」
――腹の虫が鳴った。
冗談めかして笑っていたリミーヤの顔が固まり、真っ赤に染まる。それを見た店員は大きく頷いた
「半分にカットして出すから、ちょっと待ってて!」
そういって離れていく店員を見送ってから、レニーはテーブルを手で示して、微笑んだ。
「というわけで。半分どうぞ、レディ」




