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イリヤ・シュタフ ☆

今回はいよいよイリヤくんの正体判明します。

師匠セシルの孤独と焦燥感。是非ご堪能くださいませ。


誤字修正しました。私⇒俺(2020/10/15)

3点リーダ等微修正しました(2020/11/2)


挿絵(By みてみん)

 ユエンは、出来るだけ拘束された風に、だがなるべくこの王族の男に失礼にならないように細心の注意を払いながら暴れた。


「いや、なかなかよかったよ君」


 セシルの執務室に入ってようやく肩から降ろされたユエンは、そんな感想を言われて複雑な気分になった。喜ぶべきか、呆れるべきか。


 乱れた服をぱっぱと払って直す。


「それで、お話とは」

「まあ、いいから寛いで」


 そう言われたが、執務内を見渡すものの椅子は1脚しかなく、セシルを差し置いて一介の留学生が座るわけにもいかない。結局、ユエンはただその場に立ち尽くすしか選択肢はなかった。セシルがその様子を見て声をかける。


「椅子あるよ」

「ご冗談を」


 そんなんできるか、と心の中で言ったが、勿論口にも顔にも出さない。それが出来る程度にはユエンは鍛えられていた。そして思う。サルタスは、あまりにもあのシュウという男に振り回されるあまり、あの鉄面皮を取得してしまったのだろうと。


 だが、このままいけば遅かれ早かれ自分も同じ道を辿りそうだった。それも悪くはない、と思う自分がいた。


「まあ、じゃあお互い立ったままで」

「殿下はお座り下さい」

「その殿下ってのはやめてほしいなあ」


 穏やかに笑っている。読めない人だ。


「では、何とお呼びすれば」

「セシルでいいよ」

「いや、それはちょっと」


 思わず地が出た。何だかこの人と話していると調子が狂う。王族なのに、ちっともそれらしくない。だが立ち振る舞いは緩くとも底にはしっかりと王族として確立されているものを感じた。


 セシルが腕を組んで壁にもたれかかった。


「俺はね、今はアレンの従兄弟ではなくイリヤの師匠として話をしている。だから、不必要に警戒しないでもらいたい」


 不必要とは、随分と踏み込んだ言い方をするものだ。王族という事を忘れろ、という意味であろうが、そう簡単にその言葉を信用していいものかどうか。初対面の人間である。まだ判断はつかなかった。


「……それで、イリヤについてお話とは」


 面倒そうな事には反応しないに限る。話を進める事にした。そんなユエンを見て、セシルが納得したように頷いた。


「成程。これならイリヤも気に入る筈だ」


 どこが、というのは聞かない事にした。ただ、イリヤが気に入ってくれていた、と聞くのは少し嬉しかった。そのイリヤの話がちっとも進まないのだが。何故自分がここに連れて来たのか、この男は忘れているのではないか。


「セシル様」

「ああ、悪い。君にまずは聞きたいんだ」


 ユエンは待った。この大柄な男は、何を迷っているのか、言い淀んでいた。


 ユエンは溜息をついた。ユエンがなかなか心を開かないので、どう言うべきか悩んでしまっているのだろう。であれば、立場的に当然こちらが譲らねばならなかった。それがどういう結果をもたらそうとも。


「分かりました、分かりました! 腹の探り合いはやめましょう。時間の無駄です」


 セシルがホッとした顔をした。大丈夫かこの人。そう思ってしまった。あまり駆け引きは向いていないのかもしれない。


「聞きたいことは何ですか? 答えますよ。俺に不利益がなければ」


 セシルがユエンのその言葉を聞いて笑った。楽しそうな笑顔だった。


「素直だね君。国じゃなくて俺なんだ」

「当たり前でしょう。命あってこその捻くれ人生ですから」

「捻くれ人生……ふ、ふふ」


 何故かツボに入ったらしい。腹を押さえて苦しそうにしている。しばらく震えていた。ユエンはそれが過ぎるのを静かに待った。まさかツッコミを入れる訳にもいくまい。


 ようやく落ち着いたセシルが、息を整えた後ユエンに聞いた。


「で、君はどこまで知ってる?」


 随分と抽象的な言い方だ。抽象的だが、核心をついている。そして、抽象的な言い方には抽象的な返答しかない。


「半分程度かと」

「半分ね」


 セシルがにこ、と笑う。


「実はね、君の事を少し調べさせてもらったんだよ。ラーマナでは国土調査隊に所属。どんな隊なんだろうなあと思って更に調べたら、元隊長にあの人の名前があった。何にも隠してないからまさかとは思ったけど、あの宰相なら成程ねと思ったよ」


 ただの留学生の履歴を調べた訳である。ダルタニアに来た際身分証代わりのラーマナ王国王府発行の書簡を持たされたが、そこにはそこまで書いてなかった筈だ。ユエンは無言で続きを待った。


「じゃあ、この間俺たちがまた結界を破った事は知ってる?」


 段々包囲網が迫ってきた気がした。前言撤回だ。駆け引きもきっと得意に違いない。自分の立ち位置をよく理解して、相手が逃げられないようにゆっくり、ゆっくりと狭めていく。ユエンを抱えて連れて行ってしまう辺りは無計画としか言いようがないが。


「破りたいのは知ってましたけどね、破ったのは知らないですよ」

「じゃあ君のところの宰相は君を大事に思ってるんだね」

「はあ……」


 あまりあの宰相に大事にされた記憶はない。まあ、こちらからの扱いも大分雑ではあったが。


「部下にちゃんと逃げ道作ってくれてる、頭のいい宰相だね。グルニア殿はいい宰相を見つけたな」


 いいかどうかは別として、確かに頭は切れるし敵に回したら面倒そうな男ではある。逃げ道を作ったのではなく、ただ忘れられている気もしたが。


 ただ、今目の前にいるこの男も相当面倒くさい。にこにこしたままセシルが聞いてきた。


「じゃあ本題だ。君はイリヤを幾つくらいだと思っている?」

「それは見た目ですか、中身がですか」

「中身」


 即答された。ユエンがセシルを見返す。セシルの顔は笑顔だが、青い目は笑っていなかった。ユエンという男を、この返答次第では切り捨てるつもりでいるのかもしれない。誤魔化しは利かなさそうだった。


「……これはイリヤにも話したんですが、俺のまあ尊敬する人が言ってたんですけど、相手の目を見たら大体分かると」

「あの宰相?」

「今は宰相ですけどね。元々は直属の上司でしたから、かなり仕込まれましたよ」

「そりゃ大変そうだね」


 感想を述べられたが、そこについては返答を避けた。この男のシュウに対する評価は、おおよそ間違ってはいない。シュウも、随分と面倒な人に目を付けられたものだ。


「……イリヤは見た目を気にしてましたが、俺から見れば中身は実年齢の22歳よりももっと上に見えましたよ」


 イリヤの中には、ある種の諦めのようなものが見えた。人と混じれない諦めなのだろうか?だが、完全な諦念感とは違う、自分の中にあるものを消化し切れない焦燥感。イリヤは何かを追い求めている。そう見えた。あのイリヤの大きな瞳は、ユエンの奥に何があるか探していた、そんな印象を受けた。


「何かを諦めて、でもしがみつきたい、そんな焦りかなあ。そう言うと年寄りみたいだけどなあ」


 腕を組んで自分の腕を何となく見ながら、ぼそりと呟いた。何かもっとしっくりくる言葉がないか。ユエンは考える。もっとぴったりな言葉がある筈だ。


「ああ、すがりついて救いを求める」


 セシルがぴくり、と反応したのが視界に入った。ユエンは、一瞬だが完全に自分だけの思考に入り込んでいた事に気付いた。やってしまった。王族にため口を聞かせるなどあってはならない話だった。


「申し訳ありません。つい考え込んでしまい」

「いや、いいよ別に」


 壁にもたれかかったままの黒髪の美丈夫からは、先程までの人好きのする笑顔が消えていた。いいよ、という事は、失礼な口調でぶつぶつ言ったのは気にしてないということだ。


 となれば、言葉の内容そのものに反応したのだ。


「……それで、俺のイリヤに対する印象を聞いてどうするんですか」


 真っ直ぐにセシルを見た。面倒なのは嫌いだった。セシルは真剣だった。


「イリヤを救い上げてほしい」

「……イリヤは今どうしてるんですか」

「生きる気力をなくしている」


 セシル自身が救って欲しそうな顔をしながら言った。生きる気力、とはどういう事だろう。先日は、あんなに楽しそうだったのに。


「少し長いが、聞いてくれるか?」

「……分かりました」


 ユエンはそう言うと、壁にもたれ掛かったセシルの横に行き、同じようにもたれ掛かった。セシルが、小さく笑った。







 セシルには師と呼べる男がいた。


 まだ成人する前から、暇があれば王宮専属魔術師のその男の執務室に顔を出しては、男が行なう実験を眺めたりしていた。師は始めは迷惑そうな顔を隠しもしなかったが、仮にも王族のセシルを追い払う訳にもいかなかったのだろう、文句を言いながらも何だかんだ見せてくれた。次第に、セシルの興味が本物だと理解したのか、ある時から気が付けばセシルは師の考えをまとめる際の聞き役となっていた。


 王宮は退屈だったが、この男といる時だけは心の底から楽しかった。セシルが思いつかないような発想で次々と実験していく。


 見えないだけで、物事には色んな可能性があると教えてくれた人だった。


 セシルは変わり者だった。政治には一切興味を示さず、気が向いた時にふらっと街に降りてしまう。お付きの者たちは大変だったと思う。だが、従兄弟に赤目のアレンが生まれてから、彼の王位継承権は第3位に下がり、これでようやく自由になれると思った。アレン、自身の父、そして自分。もう番は回ってこない。ようやくそう思えてほっとした事を覚えている。


 18歳で成人した時、だから迷いなくこの王宮専属魔術師に師事することを選んだ。森羅万象を知りたい、その一心だった。アレンの誕生がセシルの成人よりも遅ければ叶わなかった夢が叶い、そういう意味でもいつも何だかんだ自分の周りをチョロチョロとしている女の子に見紛う小さなアレンは、なんだか可愛く思えたものだった。


 その後の数年は楽しかった。


 色んな国に行っては色んな物を採取したり、王宮図書館に籠って師匠と髭だらけになりながらひとつの事を調べたり。フィオーレとの婚姻もまだ数年は先で、そうとなればせめてそれまでは好きに人生を楽しみたい。恋というものをした事はなかったが、この師と過ごす時間は正に恋い焦がれた時間だったように思う。


 その宝石のような時間が少しずつ陰りを見せ始めたのは、師の変化によるものだった。


 綺麗な蜂蜜色をした髪の毛は大分白くなってきていた。実験に夢中になるあまり、自身の身体を顧みなかった事にも原因があるのだろう。何の病を拾ってしまったのか、しょっちゅう空咳をしては血を吐くようになってしまった。王宮に所属する医療系魔術師にも診てもらったが、もう休めとしか言われなかった。体が限界を迎えていたのだ。


 セシルは師を休ませようとした。大事な人だ。絶対にこんな事で死なせたくはなかった。だが、師はセシルを避けた。近寄るな、と。その若さが欲しくなる、だから近寄るなと。師の渇望がよく分かってしまったから、もうそれ以上は近寄れなくなった。セシルを大切に想う師の気持ちも、そんなセシルを見て若さに嫉妬してしまう気持ちも。


 血を吐くような師の言葉。それが王宮内で師から聞いた最後の言葉になった。セシルが25歳の時の話だ。師は最後の力を振り絞り、自身の身体を治す方法を探求しに旅に出た。残されたのは1通の置き手紙。『必ず帰る、場所を取っておけ。手紙を書く』とだけ書いてあった。病に冒される以前の師らしいその素っ気ない言葉に、セシルは涙が止まらなくなった。


 セシルはこの場所を守る事に専念した。弟子は取らず、ひとりで研究を始めた。師から時折くる手紙は向こうからの一方通行だったが、それでも生きているのが分かったから、いつか師が戻ってきたらすぐに場所を譲れるように、そう思っての事だった。


 1年程は、師の手紙の内容はあまり変わり映えのないものだった。いつからだったろうか、段々とおかしなものになってきたのは。治す方法が見つかったかもしれない、そう書いてある手紙からは、嬉しさとか喜びとかいうものが一切感じられなかった。セシルは不安になった。追って探しに行きたかった。だが、師が正確にどこにいるかは分からない。師がその時にいる国名しか書いていない手紙は、あえてそうしたとしか思えなかった。


 セシルが27歳になり、アレンが即位した。そこからは怒涛の日々が待っていた。


 フィオーレとの婚約解消、セシルの面倒を見ていた者たちも総入れ替えとなってしまった。アレンが何を考えていたのかは分からない。ただ、どんどん壁に追い詰められている気がした。あんなに自分に懐いていたアレンが敵対する。セシルと親しかった人間が、皆アレンの手によって排除されていく。途中で気付いた。フィオーレと連絡がつかないようにしたいのではないかと。セシルの為に危ない橋を渡る人間を排除しようとしているのだと。抗うことは出来なかった。


 そんなどんどん追い詰められていくセシルを見て、父は何を思ったのだろうか。ある日突然倒れ、帰らぬ人となった。すでに母はなく、セシルはひとりとなった。味方だと思っていたアレンは敵となってしまった。


 全てが虚しくなった。


 また王宮は窮屈な場所に戻ってしまった。師もいなくなり、フィオーレもいなくなり、親しい人間も遠ざけられ、父も亡くなった。残ったのは、師と過ごしたこの執務室だけだった。疲れ果てて執務室で転がっている時、そういえばと思い手紙を確認した。


 師からの最後の手紙が来ていた。それは、贖罪の手紙だった。禁忌を犯してしまった、もう戻れない、許してくれ、忘れてくれ。そう、書いてあった。血が体の下に一気に落ちた気がした。


 何もかも奪われてしまったセシルから、師までもが離れようとしている。セシルは恐ろしくなった。これの前の手紙は、マゼル王国からだった。ダルタニアから北西の、比較的小さな冬の国。そうであれば、マゼルに行くしかもうセシルに生きる道は残されていなかった。このままでは、心が死んでしまいそうだった。


 セシルは、誰にも何も告げず即座に旅立った。普段からふらふらと街に降りているので、誰にも見咎められなかった。初めていつもふらふらしている自分を褒めたくなった。アレンが怒り狂ってそうだとは思ったが、もう知ったことではなかった。勘弁して欲しかった。


 マゼルに向かった。馬を借り、次の町でまた別の馬を借り、急いだ。師がいなくなってしまう前に間に合うように、急いで急いで前に進んだ。

 

 マゼルに入ってからは、町や村の住人に師の特徴を伝えて順繰り回った。少しずつ、情報が入り始めたのはマゼルに入って半年程経った頃だった。だが、どうも年齢が違うようで、半信半疑のまま情報が指し示す町へと向かった。


 そこは、マゼルの王都から比較的近い、それなりに大きい町だった。人口も多い。マゼル全体の治安は悪くはない。だが、その町では妙な噂が立っていた。


 人が消える、という噂だった。


 始めはならず者たちが消えていっていたので、何か問題があって逃げたとか殺されたとかなのだろう、というのが大方の見方だった。それが、段々と夜の酒場にいた酔っ払いや、宿屋に宿泊していた筈の旅人が忽然と消えていった。


 この町には何かいる。そういう噂が立ち、夜は人が出歩かない活気のない町へと変わってしまった、という。セシルは嫌な予感がした。だが、確かめねばならなかった。


 宿屋の主人が止めるのも聞かず、夜の町に出た。辺りは一面の暗闇だった。時折家の窓から漏れる灯りだけが頼りだった。闇が支配する道を行く。どれぐらい歩いただろうか。今日は戻ろう、そう思った時、遠くで争う声がした。男の声だった。離せ、やめろ、そう悲痛な叫びを上げていた。


 セシルは急いで声のする方に向かった。声が聞こえてきたのは、細い路地の奥からだった。風が吹き、路地から黒い塵のようなものが大量に舞った。暗闇の奥から、小さな影が現れた。


 月明りが、辺りを照らした。通りで立ち竦むセシルに気付いたのか、影がこちらを向いた。セシルは唾を飲み込んだ。影から、人が出てきた。


 それは、ひとりの少年だった。13・14位だろうか。美しい少年だった。まるで天から降りてきた神を見ているような、幻想的な姿だった。


 ふわふわの蜂蜜色の髪を風にたなびかせ、透き通るような肌の中に見える大きな瞳が月の光を反射させてこちらを見ている。可愛らしい小さめの口が何かを言ったが、聞こえなかった。


「師匠」


 セシルが枯れた声で言った。年齢は大分違うが、大好きな尊敬する師の瞳だった。間違う筈がなかった。少年が悲しそうに笑った。


「忘れろと言っただろう、馬鹿弟子が」


 ゆっくりと歩き出す。セシルが追う。すると、師はポツリ、ポツリとこれまでの事を話してくれた。旅の途中、賊に襲われた事。咄嗟に放出した自身の時間を進める魔法ちからが賊を襲い、塵となって消えた事。その途端、今まで自分を苦しめていた身体の痛みがすっと消えた事。


 この町に来て、賊を消してしまった事を見ていた賊の仲間に襲われた。その時にはもうやり方が分かっていたという。その時は賊は3人。一気に消し去った。身体が軽くなった。鏡がある店を探した。鏡を見ると、数年前の師の顔がそこにはあった。もうそこからは止まらなかった。もっと時間を取り戻したかった。もっともっと、時間が欲しかった。師は自身の見目が優れている事を熟知していた。それを利用して、他者の時間を貪るように吸い取った。そしてある日師は気が付いた。自身の手が汚れている事に。もうやめよう、やめようと思っても絡まれると消してしまう。自分の中でたがが外れた事が分かった。だから、弟子に最後の手紙を送ったのだ、忘れろと。


 セシルが大分背の低くなった師を見下ろした。師は、前を見つめたまま静かに涙を流していた。汚れた手を持つ師のその横顔は神々しく、美しかった。


 だから、決心した。


「師匠。俺には貴方を手放す事は出来ません」

「セシル?」


 振り返った涙顔の師に、渾身の力を放った。今まで、近しい人間以外にはひた隠しにしていた自身の魔法ちから。記憶の、操作。今までの記憶を奪い、セシルの傍で生きていく事が出来るよう、セシルに都合のいい勝手な歴史を組み込む。自分勝手でどうしようもない能力だ。


 師が気を失ってその場に崩れ落ちそうになった。セシルはそれを軽々と支えると優しく抱き抱え、宿屋へと戻っていった。





 長い、長い話が終わった。


 ユエンは、何も言えなかった。その師、というのが誰の事を差しているのか、もう分かっていた。分かってはいたが、セシルの言葉を待ちたかった。


 ユエンの横で、セシルが言った。


「それが、イリヤだ」


 ユエンは目を閉じた。少し考える時間が欲しかった。


次回は出来たら明日、または明後日更新予定です!


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