王都ルドス
ダルタニアへ送られたのはこの人です。
日々更新チャレンジ中(2020/10/6)!
3点リーダ等微修正しました(2020/10/29)
ダルタニア王国王都ルドスにある、王宮のとある一室にて。
「ねむ……」
ユエンは、欠伸を噛み殺した。
(隊長……じゃねーや宰相もいきなりだもんなー)
対魔の儀のしばらく後、いきなりダルタニアへ行けと言われ、あれよあれよと言う間に『ダルタニアの政治を学ぶ将来有望なラーマナの事務官』としてダルタニアの中枢に送り込まれた。話がきて3日後には出立していたので、あの宰相の手際の良さには毎回驚きを通り越して笑わされる。
「ユエンさん、欠伸はちょっと」
隣でそう声をかけてくるのは、ラーマナの東にあるガガン王国から同じように送られてきた留学生のバンナムだ。金髪に白い肌、細目に細い顔。ヒョロヒョロしていて、こんなので自国で事務官が務められていたのか不安になったが、案外優秀らしく頭は切れる。
この教室には、合計で8人の生徒がいる。全員、近隣の王国から教育という名目で送られてきた者達ばかりだ。勿論、そのほぼ全員がそんな単純な名目でここにいるのではないであろう事を、お互いよく理解している。
ハラハラとユエンを見たり前にいる講師を見たりと忙しいバンナムを尻目にユエンはというと、しっとりとした茶色い髪を指で後ろに流して形を整えようとしている。
顔の作りは悪くないと自分では思っているのだが、各々薄いパーツがどうも軽そうな印象を与えるらしい。全体的に軽薄感が漂う、とは、ユエンの婚約者のアリーの台詞である。婚約者とは思えない発言だ。口数が少なく、自分を読めるなら読んでみろとでも言わんばかりの力強い目をした最高の女だ。
「ほら、ちゃんと授業聞かないとだめですよユエンさんってば」
小声でヒソヒソと袖を引っ張ってくる。余計なお世話だと思うが、悪い奴ではないのだろう、こいつも割と変な奴だ。ひと月も見てればユエンがどんな奴だか分かるだろうに、未だユエンの周りをチョロチョロとしては心配している。
「聞いてるって」
ユエンの特技。聞いた事はほぼ忘れない。だから国土調査隊に振り分けられた。新しく入ったあの元騎士団団員と似てるかもしれないが、彼女と違うのは、ユエンは何人の話も同時に耳に入ってくる事だ。逆に本を読んでもあまり記憶に残らない。
色んな話が入ってきて、後は皆繰り返し同じ話をする。つまらないな、と思っていた新人時代に取り立ててくれたのがシュウだった。
あの人は、ただ話を覚えるだけでなく、自分で思考し、検討し、解釈して結論を出す事を教えてくれた。自分の思考だけは飽きない。捻くれた目をしていたユエンに、考える楽しさを教えてくれた人だ、尊敬はしている。
が、しかし。
(くっそつまんねえ……)
どうでもいいダルタニアの歴史。経済の発展の歴史。通貨の成り立ち。一回聞いたら十分だった。
一回聞いて分かるのはユエンさんくらいです、とバンナムに以前言われたが、一回聞いて分からない奴の事などユエンには分からない。
それに、シュウに言われたキーワードは2つ。結界と、目立つ事。それ以外は言われていない。あとは考えろという、実にあの人らしい宿題だった。
多分、この話の直前にラーマナ国王と王妃両陛下に謁見したダルタニアの魔術師に関わりがあるのだろう、とは推測される。
だが、相手はなかなか出てこない。もう少し辛抱が必要そうだった。
「ユエンさんてば……」
チラッとユエンに一瞥をくれた講師の目線を敏感に察して、ユエンがダラダラしてるのを止めようとしているバンナムは、あまり場の力関係というものを読めない人種なのかもしれなかった。
「大丈夫だって」
以前、同じようにダラダラしているユエンを注意した講師に対し、今まで語ってきた内容の矛盾点を事細かに指摘したところ、以降絡まれなくなった。もっと抵抗が欲しかったのだが。
(くそつまんねえ……)
国土調査隊とは、実に面白い飽きない職場なのだと、改めて実感した。
「師匠、結局結界のことは分からず、今後の方針も出ず、陛下は怒りまくるのが予想され、僕はどうしたらいいんですか?」
大陸中の結界を半年もかけて見て回った結果は、該当なし。どこかの国が、恐らく嘘をついている。ダルタニアに嘘をつくなどあり得ない考えであるが、強国であるというだけで逆らってくる輩は昔からいる。
王宮に戻ってから、また1から検証し直したが、やはり分からず。
ダルタニア王アレン・ラゾフ・ダルタニアからの呼び出しに、従兄弟であり気安い関係である筈の師匠は相変わらず応じず、毎回の人身御供のイリヤである。
「アレン様怖いんですよ、なんの材料もなしに放り込むなんて師匠それでも人間ですか?」
ラーマナにいた際剃った髭も、今は無精髭を通り越して立派な顎髭になった師匠ことセシルが、大きな水桶に張った水を憂鬱そうに覗き込みながらチラッとイリヤを見て言った。
「あいつはどうも苦手なんだよ」
「苦手だからって、毎回弟子を寄越すのもどうかと思いますけど」
というか、イリヤだって怖い。あの赤眼の王は、隙がなさすぎる。いつも怒っているような表情だし笑わないし、そもそも報告する内容もろくにないから終始頭を下げざるを得ない。苦痛以外の何ものでもない。
「ちょっともう1回異世界の入り口から辿ってみようかと思うんだが」
「もう1回って、魔力足りないでしょ師匠」
世界の果ての空間の奥にある並行世界の前までは何とか行けても、壁はふたりの力では突破出来ない。
「だから、はいこれ」
セシルが、イリヤの手の上に大きな水晶玉を置いた。メロンぐらいある水晶玉は透明で、乱雑な部屋の中を歪ませて映している。嫌な予感がした。
「師匠……勘弁してくださいよ」
「今度は穴を開けたらどっちに風が吹くのか、糸でも付けようと思ってさ。何持ってこようか? 今回は何でもいいから、イリヤが欲しい物にするよ」
「そうじゃなくて」
「ある程度重さが必要だけど引っ張った後逃げられるとまずいもんなあ。生き物以外な」
「師匠ってば」
セシルは何にしようかと楽しそうに考えていて、イリヤの問いには答えない。まあ、分かってやっているのは知っている。
「……じゃあ、あれがいいです。タイヤがついて動いてた金属の箱。人が乗ってたやつです。こっちじゃ乗れないだろうけど、作りに興味があるんで」
諦めた。諦めて、興味を持った物を挙げた。
「あー、あれね。どうやって動いてるか不思議だったよね。いいよいいよ。じゃあこれアレンに、ね?」
「……はい」
「よろしく!」
重い腰を上げて、水晶玉を抱えたままイリヤは嫌々部屋を出て行った。向かうは王の間である。この国で一番偉い人物から呼び出しを食らっている、早く行かねばならない。
「これ……僕がお願いするのかあ?」
大きな水晶玉を見つめながら呟く。
前回、『あれ』を異世界に探しに行くのに、誰かがいつの時代にか切り拓いた細い跡を辿って世界の果てまでは何とか師匠と一緒に辿り着くことが出来た。だが、壁は厚かった。触れようものなら弾かれ、本来不可侵である筈のふたつの領域をきっちりと隔てていた。精神体だけで行かないと辿り着けない境界線は、行くだけでも相当な労力がいったが、離れている間の体力の消耗もかなり酷かった。本来、行っていいところではないのだ。
過去に、一体どんな化け物が道を切り開いたのか。想像がつかなかった。
始めに水晶玉を差し出してきたのは、アレンだった。自身の魔力を収めたから使え、と言われ、畏れ多くて使用するのを躊躇していたが、怖いもの知らずの師匠が遠慮なく使ってみたところ、壁を突破することが出来た。
始めは何を探せばいいのかも分からず、ただ闇雲に異世界を覗き見た。水晶玉の魔力が尽きると、瞬間その世界から弾き飛ばされた。その勢いで、イリヤは3日起き上がれなかった。師匠のセシルは1日で起き上がったが、血を吐きながら作業をしていたので、無理を押し通していたのだろう。
だから、アレンに複数の水晶玉を用意してもらった。アレンにもかなりキツイ作業だったようだったが、何も言わなかった。
そもそも、『あれ』を探せと要求してきたのはアレンだ。アレンから聞くまで、そんなものがこの世に存在している事すらイリヤは知らなかった。
何ヶ月にも及ぶ異世界探索、衰弱していくふたりの魔術師たちを見て、見かねたアレンがヒントをくれた。心の目で見ろ、と。魔力を見る時のように見ると、淡き金の光を感じられるだろう、と。
何故アレンがその事を知っているのかは、恐ろしくて聞けなかった。
だが、そうした途端、イリヤたちは『あれ』の気配を辿ることが出来た。あの世界には、魔法が存在しない。『あれ』があの世界に唯一の魔力を帯びた存在であった為、後はただ辿り着けばいいだけだった。
それが、こちらの世界に引っ張ってきてからは気配が分からなくなってしまった。魔力があちこちに存在するこの世界では、『あれ』の気配は紛れてしまって掴めない。
せめて、傍にいた人間がいれば。
『あれ』がすでに移動してしまっていても、『あれ』の気配を知る人間を確保すれば、この世界でも辿れる可能性が高い。
(嘘をついてる国は、滅茶苦茶にしてやる)
どれ程の期間を、文字通り死ぬような思いをして探したか。イリヤの尊敬する師匠セシルと国王アレンに無駄な魔力を消費させたことか。尊敬する者たちの衰弱した姿など、見たくなかった。彼らは、常に輝いていなければならない存在なのに、どこかの馬鹿な国が保身のために嘘をつくから。
王の間の大きな扉の前に辿り着いた。衛兵がイリヤを一瞥し、槍を掲げて塞いでいた扉の前を開放する。
「シュタフ様、陛下がお待ちでございます。中へどうぞ」
「……どうも」
ふわふわの蜂蜜色の髪を魔術師の黒いマントの襟元から出す。すっかり伸びてしまい、後ろにひとつにまとめているが、作業の邪魔になる為マントの後ろにしまい込んでいた。だが、流石にその恰好で謁見はないだろう、と自分でも思った。
「陛下、イリヤ・シュタフです!」
扉をドンドン、と叩いて開ける。
いつもと同じように、高い天井の古めかしくも豪奢な装飾の王の間の一番奥に座しているのは、イリヤの尊敬する国王アレン。
黒髪、赤眼。端正な顔立ちに不機嫌さを隠す事なくイリヤを無言で見つめている。
(あー、怒ってる)
「失礼します」
玉座の少し手前まで歩み寄り、両膝を床について頭を下げる。
「ご報告が遅くなり申し訳ございません、その、あまりご報告できる内容がなく」
「説明はいい。それを見て理解した」
聴いていると頭がぼうっとしてしまいそうな聞き心地のいい声で、アレンが言った。それ、とは、イリヤが抱えている水晶玉の事であろう。面をあげよ、と言われて素直にアレンを見る。
「セシルはまた来ないのか?」
従兄弟なのにちっとも顔を見せようとはしない。先日ラーマナでアレンの姉には会ったと聞き、もしかしたらやきもちを妬いているのかもしれない。このアレンという男にそういった感情が存在するのならば、の話だが。
「師のセシルは、現在髭だらけになっていてとても陛下と謁見出来るような状態ではございません」
あの髭、まさか本当にそういうつもりで伸ばしてるんじゃなかろうか。ふとそんな疑問が頭をよぎった。であれば、髭の生えない体質の自分の体が恨めしい。
「……まあ、いい。それはひとつで足りるか?」
「はい、今回は動かない物を持ってきて、辿れるように何か糸みたいな物を着けておこうという話になりまして」
アレンが肘をついて考えている。
「糸……それもいいが、なら私の魔力を詰めた何かを用意しよう。自分の気配なら自分で追える」
成程、確かにアレンの独特で強力な魔力をあの金属の箱に入れておけば気配を追える。セシルが言っていた糸などよりも全然現実的だ。
「ありがとうございます、師も喜びます」
「明日また来るように。次はセシルが来いと伝えてくれ。それまでに用意しておく」
「かしこまりました!」
ああ、これで終わる、とホッとしたところで、アレンがじっとイリヤを見つめている事に気付いた。
赤い瞳を細めて、イリヤを無言で見ている。感情が読めない声色で、報告をするように告げた。
「あまり人を、軽く殺すな。怨嗟はいつか自分に返ってくる」
イリヤは、唾を呑み込んだ。何故この王がそれを知っている。この偉大な王の赤い眼には、一体何が視えているのか。
「お前が気にしなくとも、いつかお前の大切な師匠に返ってくるだろう。気をつけよ」
イリヤの胃がきゅ、となった。嫌な事を言う。
「……肝に銘じておきます」
それ以外、何も言えなかった。イリヤは、逃げるようにその場を辞した。いや、逃げたのだ。何もかもを見透かす様な赤い瞳から。
イリヤは、王の間から一番近い城壁の上に出た。風が気持ちいい。調査に行き詰まったりする時は、たまにここに来て何となくぼーっと王都を見渡したり空を見上げたりして気持ちを入れ替えている。
衛兵が数名見回りをしているが、王宮内の人間は基本出入り自由だ。時折息抜きに来ている官も見かける。
少し出っ張って城門前の広間が見渡せるいつもの特等席に向かうと、すでに先客がいた。見たことのない人間だ。
首が隠れるくらいの長さの茶色いサラサラな髪を風にたなびかせ、塀の上で片肘をついている。旅慣れているのか、細いが足ががっしりとしている。どこの府の者だろうか。
「あーイライラする」
ぶつぶつ言っているのが聞こえた。
出っ張りの先端はそれなりの幅がある。イリヤは少し離れたところに立った。何も見知らぬ男にわざわざ特等席を譲る気はない。
「同じ話を繰り返し繰り返し……拷問だ……」
隣の男をちら、と見ると、手に顎を乗せて空を見上げている。見目は別段悪くないが、何となく薄っぺらい印象を受ける。
「あーアリーに蔑まれてえ……」
何かおかしな事を言っている。思考がやばい奴なのだろうか。
イリヤは基本あまり他の人間に興味を示さない。基本は皆一緒だと思っている。だが。
興味がむくむくと湧いた。変な奴は、正直気になる。その思考の特異さ故に。
我慢できずに声をかけた。
「人に蔑まれたいってどんな心境なの?」
「はあ?」
男が振り返った。
イリヤを上から下までゆっくりと見る。イリヤの黒のマントを見て、察したのだろう。聞かれた。
「……あー、えーと、王宮魔術師さん?」
子供だと言われないのは久々だった。それ程、イリヤは幼く見られる。
「ご名答」
イリヤがつんとしたまま答える。話しかけたのはこちらだというのに、基本態度は変えない。それがイリヤである。
男が、こめかみをぽりぽりとしながら答えた。涼しい風が吹いていて、気持ちいい。
「とりあえず質問への答えはこうだ。俺は基本自分が頭がいいと思っている。だけどそんな俺を目線ひとつであしらえる婚約者がいる。頭の良さと回転の良さは別だ、そう教えてくれた婚約者に会って俺のダメなところをボロクソ言われたい。そういう心境だ」
「……それ楽しいの?」
非常に真面目に答えてくれたが、イリヤには意味が全く分からない。何故、自分よりも劣ると思う人間にそんな事をされて喜べるのだろうか。
「楽しいさ。だって、俺が今まで気付かなかった目線で物事を語ってくれるんだぜ? それを聞いた時の頭の一部が開放されたようなあの感覚。ゾクゾクする。あ、やべえ考えたらもっと会いたくなった」
「目線ねえ……」
違う目線での物事の捉え方を教えてくれる。それは……面白いかもしれない。そういう観点で考えた事はなかった。
「あんた面白いね」
「そう? そりゃよかった」
どうでもよさそうに言われた。少しカチンとくる。太陽はまだ高い。戻らないといけないが、まだ少し話していたかった。
「あんたどこの人間?」
「俺? ラーマナ」
どこの府の者かと聞いたつもりが、全然違う答えが返ってきた。何故ラーマナの人間がわざわざダルタニアの王城まで来て愚痴っているのか。
「今近隣国から留学生集めて授業やってんの知ってる?」
「……知らない」
「俺、それで来てるんだよ。始めは面白いかなと思ってたけど、もう1ヶ月似たような話ばかりで発展性がなくて何やりたいんだか分かんなくて、休憩にかこつけて逃げてきた」
1ヶ月ずっと同じ話ばかりでは辛いだろう。イリヤはこの男が若干哀れに思えた。これがイリヤには非常に珍しい同情という感情だという事に、本人は気付いていない。
「授業やってそれでその後は?」
「いやあんたいいこと聞くね」
男が話に乗ってきた。ずっと誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
「俺も聞いたわけだよ。授業やって、それでその先に何を用意してるのか。歴史とか経済とか、もう分かったからそれで? てやつだよ。そしたらさ、何て答えたと思う?」
「さあ」
冷たいイリヤのひと言に、男ががくっと肩を落とした。そこは乗れよな、とかぶつぶつ言っている。
「試験して、合格証もらえたらおしまいだってさ」
「何そのクソつまんないの」
同調者を見つけたと思ったのか、男が顔を上げた。
「だろ? そう思うだろ? せめてさ、この国の主要地を見学させたり、王宮内部の仕組みを実際に見せてくれるとかさ、文化の違いとかを見せるとかさ、そういう参考になるような事をさせてくれりゃあ張り合いあるってのに、試験!試験てなんだよ!」
「何、受かる気ないの」
相変わらず冷たく聞く。男が半泣きのような顔で言った。
「受かるさ、余裕なんだよ! 今でも満点取れるさ! なんで1ヶ月もかけて繰り返しやってんのか理解出来ないんだよ!」
つまり、この男は退屈してるのだ。だけど国から送られて来たものだから逃げられない。それは確かに苦痛だろう。
「これがあと2ヶ月続くんだぜ……俺精神崩壊しそう」
「そりゃ長いな」
大分哀れに思えてきた。そして、興味が湧いた。この男、これまでに一体何を見てきて何を知っているんだろうか。
「あんた今日はいつ頃終わるんだ?」
「ん? 夕方だけど」
「その頃、ここで待ってろよ。飯行こう」
イリヤからこんな事を言うのは人生で初めてだった。基本、イリヤは他の人間に興味はなかったから。
男は一瞬考えたようだ。だが、この同調者を逃したくなかったのだろう、話に乗ってきた。
「おう。面白い話に飢えてる。楽しみだ」
「じゃあその頃また。あんた名前は?」
「俺? ユエン。あんたは?」
「イリヤだ」
「じゃあイリヤ。後でな。俺そろそろ戻らないと周りの奴が迷惑するみたいだから」
「分かった」
お互い手で軽く挨拶して、別れた。あの調子で周りを振り回しているのだろう。何となく想像がつく。
「何で飯に誘ったんだろう……」
自分の行動がよく分からなかったが、それもユエンと話せば分かるのかもしれない。
少し気分が晴れたイリヤは、師匠の元に戻る事にした。
次回はダルタニア国王の差の顔が判明します。
『愛慕』明日(2020/10/7)更新予定です!