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不敵なお父様

 ルーク殿下の姿が見えなくなっても尚、しばらく見送っていると

『エレノアは奴の事が好きなのか?』

アステルに聞かれる。

「それは勿論、ルーク殿下は大切な友達だもの」

『そういう事ではなくてだな』

「?」

『……これは先が思いやられるな』

なにやらぼやきながら溜息をつくアステル。


「アステルも、ルーク殿下のこと気に入ったみたいね」

『ほう、どうしてそう思う?』

「だって、最初に対面した時、二人で見つめ合って意思疎通していたじゃない」

『ああ、いきなり念話で話しかけてきたからな。奴はこの国の王子なのか?』

「そうよ、第一王子。次の王様になる方なの」


『なるほどな。アレはなかなか見込みのある男だ。あの男なら国も預けられよう』

「ホント!?うふふ、嬉しい」

『なんでエレノアが喜ぶんだ?』

「だってお友達だし」

『友達だとしてもそんなに喜ぶか?』

「え?……どうなのかな」

『エレノアはどうやら鈍いようだ』


アステルが溜息をつきながらも、面白そうに笑った。


 次の日、アステルの事で王城が大騒ぎになったらしい。

夜、いつもよりもだいぶ早く帰宅してきた父上は難しい顔をしていた。

「陛下が、聖獣に愛されるような素晴らしい娘を、是非ともどちらかの息子の婚約者にしたいって言ってきやがった」


「えっ?」

「しかも了承しなければ、大教会に知らせると脅してきた」

話しながらどんどんお父様の眉間にしわが寄る。


「なんですって?あの狸。結婚は本人たちの意思に任せるって言っていたくせに」

お母様が国王様を狸呼ばわりしている。まあ従兄だからいいのかな?

「リアム殿下でも嫌なのに、あの腹黒になんて絶対あげたくない!というか、エリーはずっと僕と一緒にこの家にいるんだから!!」

エルが叫ぶ。


「その通りだ。エレノアは誰にもやらん」

静かに怒気を含ませてお父様が言う。


「あらあら、エリーをお嫁さんにするのがお嫌なのね」

「当たり前だ。エレノアを嫁にやるなんて、考えただけでも……」

部屋中の明かりが揺れた。どうやらお父様の魔力が膨れ上がったらしい。

お母様は思いっきり握られたお父様の拳を優しく手で包む。

「ブレイク、落ち着いて。ね」

すると明かりの揺れは収まり、眉間のしわもなくなった。


「こうなったら……」

お父様は小さく呟くと、おもむろにアステルに向き合う。

「アステル殿、質問してもよろしいか?」

『なんだ?』


「城をぶっ壊す事は出来るだろうか?」

真剣な顔で物騒なことを聞く。

『エレノアが望むなら城はおろか、この国ごとぶっ壊すなんて造作も無いぞ』

「よし!」

ガッツポーズしているお父様。


「お父様、不穏過ぎです」

「エレノアだって嫌だろう。小さい頃から私たちのようないつまでも仲睦まじい夫婦に憧れるって言っていたじゃないか。政略結婚なんて嫌だって」

「そうですけど……」

「まさか、どちらかの王子に想いを寄せているのか?」

再び部屋の明かりが揺れた。

「ブレイク」

お母様の優しい呼び声に落ち着きを取り戻すお父様。


「ともかく、聖獣目的で結婚をさせようなどと言語道断。しかも脅してくるなどと。だったらこちらも脅すまで」

二ッと笑うお父様。か、かっこいい。我が父ながらキュンとしてしまう。

何故宰相などやっているのかと思ってしまう程の引き締まった身体に鋭い表情のイケメンのお父様。

本当は魔剣士として騎士団に入りたかったらしい。だけれど当時、宰相を任せられるのがお父様しかいないと泣きつかれて渋々了承したとか。


「大丈夫、聖獣殿の力で城なんぞ木っ端みじんに出来るって脅すだけだ」

「そうそう。エレノア、いいのよ。そのくらいの事言わないと、あの狸は本当に強引に話を進めようとするから」


相変わらず国王様を狸呼ばわりするお母様。

国王様とお母様は従兄妹。お母様のお父様、私のおじいさまが先代の王の弟で小さい頃から国王様とは喧嘩馴染みだったらしい。お父様とは王立学園で出会ってお互いに一目惚れ。同じ学年だった国王様に少しも物怖じせず、それどころか全ての事に対して完膚なきまでに打ち負かすお父様の姿に更に好きになってしまったとか。


「王妃様ならもっとやってしまってってきっと言うわよ」

イメージできたのかクスクス笑いながら言うお母様。

「そうだよ。なんなら見せしめに一部分くらい壊しちゃってもいいくらいだよ」

「エルったら」


 翌日、アステルを伴って王城に出向いたお父様は本気で国王様を脅したらしく、これ以上にないほどの上機嫌で帰って来たのだった。


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