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天の守護者

 テーブルに戻って新しくお茶を淹れてもらい話を聞く。

アステルは私の膝の上にちょこんと座っている。


『我は天の守護者として存在しているのだがここ十年くらい、心地良い魔力を感じていたのだ。ずっと探していたのだが、魔力が不安定でなかなか見つけ出せなかった。だが、今日やっと見つけたのだ』

「私?」


『そうだ。聖獣が心地良くなる程の上質な魔力なんてもう千年以上感じる事なんてなかったからな。絶対に逃してなるものかと、説明もせずに契約を交わしてしまった。すまなかったな』

「ううん、気にしないで。私はアステルと契約出来て幸せよ」


『それともう一つ、エレノアの身体のどこかに契約紋が出来ているはず。それは契約が終わるまで消えない』

「なんだとー。エリーの綺麗な身体に何してくれてんだ!」

「そう言えば、さっき左胸の上辺りが熱かったような……」

「どれ?ちょっと見せて」


ウィロウが服を引っ張ってのぞく。

「ああ、あるわ。小さいけど金色の紋様があるわね」

「そうなんだ。別に私は気にしないから大丈夫。アステルと繋がってる証だもの」

なんて呑気に言っていたら


「ちょっと待て、エル。おまえ、エリーの綺麗な身体って、なんでわかってるんだ?」


「そういえば。どうして?エリー」

「着替えとか普通にエルが居てもするから」


「はあああああ!?」

エル以外の皆が驚いた声を上げた。またもやのシンクロ。

「なんで?どうして?」

ウィロウが私の肩を掴んでグラグラ揺らす。


「どうしてって、着替えくらい家族がいても気にならないでしょ?たまにエルは私のドレスを選んだりもしているし」

「エリー、来年には学園に入るのだから、それはもう卒業しなきゃダメよ」

「そうなの?わかったわ」


「えー、エリーのドレス選ぶのは、俺の楽しみの一つなのに」

「エル、殺す」

リアム殿下とサムが、恐ろしい笑顔で言っていた。


「それで、アステルの事に話を戻すけどさ。アステルってその大きさが本来の大きさじゃないって言ってたよね。本来の大きさってどの位なの?」

サムが聞くと、アステルは少し考えて

『7メートルほどか』


「マジで!?」

「デカッ」

「可愛くない」

「カッコイイ」


「ライリーだけ違う意見だったようね」

ウィロウが吹きだしそうなのを堪えて言うけれど、私もライリーの意見に賛成だ。

「いつか本来の大きさも見せてくれる?」

『なんなら今見せてもいいんだぞ』

「家の人たちに説明してからじゃないと、びっくりさせちゃうから今度でいいわ」

『わかった』


「ありがとう。改めてこれからよろしくね、アステル」

『こちらこそだ』


 その日の夜。

入浴も済ませ、自分の部屋でアステルを撫でながらまったりしていると、テラスに続く窓からコツっと何かが当たる音がした。


屋敷には悪意のあるものは入ることが出来ないように結界がされている。それに引っかからないという事は賊などではないらしい。

『我が見てやろう』

アステルがテラスへ近づいた。


アステルに続いてテラスに出てみる。すると下から私を呼ぶ声がする。

そっと下を見ると、月の光に輝く金色の髪が見えた。

「ルーク殿下?」

そう私が言えば、見上げたサファイアの煌きと目が合う。やはりルーク殿下だ。

私と目が合った殿下は、ふわりと笑うと器用に木を伝ってテラスに飛び移った。


「ごめんね、こんな時間に」

「そんなことは全然構わないけれど、何かあったの?」

部屋の中へいざないながら聞くと

「こんな時間に、しかも正面から入って来ないような男を簡単に部屋に入れちゃダメだよ」

なんて言う殿下。

「今はそんな話してないでしょ。それに、殿下じゃなかったら入れないわ」

「それは喜ぶべきか悲しむべきか……」


「もう、それで?本当にどうしたの?」

「ああ、エリーが聖獣と契約を交わしたって聞いたから」

「その事?そうなの、アステルって言うのよ。可愛いでしょ」

私の足元にいたアステルを抱えて、殿下の目の前まで持ち上げる。


殿下がじっとアステルを見つめた。アステルもじっと殿下を見る。

しばらくお互い見つめ合って頷き合った。


「本当に聖獣のようだね、綺麗だ」

「でしょ」

「本当に聖獣なのか、エリーに危害を加えるようなことはないのか心配になって来たけれど、どうやら大丈夫のようだね」

「その為にわざわざ?ありがとう」

私の心臓が小さくトクンと鳴った。


「うん。それにしてもエリー、少し見ない間にまた綺麗になったね。これでは来年学園に入ったらエリーの奪い合いになってしまうんじゃないかな」

「そんな事ないわ。それに、そういう心配は自分にしてあげなきゃ。ウィロウから聞いたもの。殿下の奪い合いが凄いって」

「そう?それは私の与り知れない事だからなあ」

「もう」


「ハハ、でもね、エリー。本当に他の令嬢方はどうでもいいんだ」

そう言いながら私の髪を一房掬う。再び私の心臓がトクントクンと鳴り始めた。

「……そろそろ戻るね。エリーの顔も見れたし」

私へと注がれた視線が外れる。ほっとする反面、少し寂しいような気持ちになる。


「じゃあ、またね。アステル、エリーの事頼んだよ」

「キュ」

心得たとばかりにアステルが返事をした。

そして殿下は再びテラスから木に飛び移り、颯爽と走り去って行った。


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