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デート

「エリー、とっても可愛いよ」

下へ降りるとエントランスでルーク殿下が待っていた。

私はシンプルなデザインの白いワンピース、ハーフアップした髪には同じ白の細いリボン、殿下もシンプルな白いシャツに黒のパンツに革靴、黒のキャスケットをかぶっていた。


「ありがとう。ルーク殿下も素敵」

「ふふ、ありがとう。じゃあ行こうか」

エスコートされ外に待たせてあった馬車に乗り込む。家紋もなく、小さめのこの馬車でこの出で立ち、少し裕福な商家の者というイメージだ。


「エルは家にいなかったの?」

うるさく言ってくるはずのエルが全く姿を現さなかったのを不思議に思ったのだろう。


「実はね、お母様に相談したの。いたら絶対に反対されて妨害されそうだったから。そうしたら私に任せてって言ってくれて……ふふ、お父様とエルを城から呼び出されるようにしてくれたの」

「つまり、父上も……いや、母上かな、グルってことだね」

「ふふふ、そうだと思うわ」


「じゃあ、今日は心置きなくエリーを独り占めできるね」

ボンッ。とびきりの笑顔で言われて、またもや私の顔が真っ赤になる爆発が起きた。

『我が居るから独り占めではないぞ』

その言葉と共に、手のひらに乗る程の大きさのアステルが現れた。


「アステル、随分小さくなったね」

『だろ。小さくならないと不便だったからな。これでどこに行くにもついて行けるようになったぞ』


私の肩に乗って嬉しそうにしているアステル。

「ふふ、頑張ったのよね、小さくなる練習」

「そっか。なら今日はアステルが行きたい所に行こうか?」

『本当か?』

「本当だよ。ね、エリー」

私に優しい笑顔を向けて言うルーク殿下。

「ええ、アステルの行きたい所に行きましょう」

殿下の気持ちが嬉しくて、私も自然と笑顔になったのだった。


「まあ予想はしていたよ」

とても可愛らしいカフェの奥の席に、テーブル一杯のスイーツを載せて私たちはいた。


『最近エリーが食べるのを控えているせいで食べられなかったのだ』

自分の顔より大きいであろう、カップケーキにかぶりつきながらアステルが言う。

「だって、もう魔力は落ち着いているから、昔ほど食べられなくなってしまったのだもの」


どこにどう入ったのか、テーブル一杯のスイーツのほとんどを食べたアステルはとっても幸せそうな顔だ。

「エリーはもうお菓子を食べていないの?」

「食べないわけではないけれど、昔みたいに何も気にせず食べるなんて事はなくなったわ。素直に太ってしまうようになったから」

「そうなの?私はエリーがぷくぷくになっても可愛いと思うけど」

「私は嫌なの。好きな服が着られなくなってしまうもの」

「そっか」


ふとアステルが大人しいことに気付いてテーブルを見ると、お腹を出して寝ている。

殿下がそっと持ち上げて、自分のシャツのポケットに入れた。


「ふふ、それとっても可愛い」

ポケットのヘリから、前足と顔だけ出ていてとても可愛らしい。

「私としては今のエリーの笑顔の方が可愛いと思うけど」

ボンッ。本日二度目の爆発が起きてしまった。


「ほら、今のその表情も」

「あの……あんまり言わないで、恥ずかしい」

「エリー……その顔はズルい」

「え?」

殿下を見ると、殿下の顔も少し赤くなっている。


殿下は顔を隠すように片手で口元を隠しながら

「少し外を歩こうか?」

そう言って、立ち上がり私にもう片方の手を差しだした。


 街の広場、大きな噴水がある近くのベンチに座る。

春には少し早いけれど、今日はポカポカしていて気持ちいい。

「そういえば、もうすぐ花祭りだね」

「ええ、そうね。殿下は今年もパレードの先頭なのね」


王族は毎年、花祭りにパレードで市井の人々に顔見せをする。

平素は国王が先頭でパレードが進むのだが王太子が居る場合、次期国王であるというアピールの為に結婚した翌年までの間、パレードの先頭に座るのだ。


「そうだよ。花姫たちと一緒に一番前のフロートでね」

その言葉を聞いた瞬間、私の胸がツキンと痛んだ。


花姫というのは16歳から18歳で、婚約者の居ない娘の中から無作為に三人選ばれる。これも平素は貴族、庶民関係なく選ばれるのだが、王太子にまだ婚約者が居ない場合、暗黙の了解で貴族から選ばれる。体のいいお見合いだ。


「えっと、殿下は、その……今年の花祭りで、あの……婚約者を決めるの?」

「ん?そうだねえ、去年は立太子のすぐ後だったから、そんな事考える余裕もなかったけど、今年はちょっと真剣に考えようかなって思っているよ」

「そう……なんだ」


泣きたくなってしまった。

「そっか……見つかると、いいね」

なんとかそう言うが、これ以上は何も言えない。

だって、涙がこぼれそうだから。


そこで私は唐突にわかってしまった。


そうか。私、殿下の事好きになっちゃったんだ。殿下の言葉がこんなにも痛いなんて。ああ、気付きたくなかったな。胸の奥にたくさん針が刺さってしまっているみたいなこんな痛み、知りたくなかったな。


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