ご褒美は
「もう少しだったんだけどなあ」
「ハハハ、そうやすやすと勝たせるわけにはいきませんよ。仮にも騎士団のトップに立っている立場なんでね」
「でも凄かった。俺、オヤジがあそこまで追い詰められる姿を初めて見たよ」
「俺も、兄上があそこまで強くなっているなんて知らなかった」
「悔しいけど、僕たちがまとめて返り討ちされていた時より更に強くなっていたよ」
それぞれが興奮した面持ちで会場から出てきた。
「皆、お疲れ様」
私たちは会場の外で、労う為に待っていた。
「ウィロウ!ごめんね、優勝できなかった」
「謝る必要なんて全然ないわ。カッコよかったわよ、お疲れ様」
「まあ、あれは相性が悪過ぎたよね。ライリーが弱かったんじゃないよ」
「サム!」
ライリーが嬉しさ爆発で、サムに抱きつこうとして肘鉄を返された。
「皆、本当にお疲れ様」
「エリー、惜敗だった僕を慰めて」
「うん、惜しかったね、エル。でもカッコよかったよ」
「俺も慰めてくれ」
「リアム殿下も凄く頑張っていたもの。カッコよかった」
それぞれに労いの言葉をかけていると
「ルーク様!!」
突然後ろから大きな声が響いた。びっくりして振り返る。
薄い桃色の髪に緑の瞳の可愛らしい令嬢が駆け寄ってきた。
「ルーク様、優勝おめでとうございます。それとお疲れ様でした」
言いながらタオルを渡そうとする。
通り過ぎざま睨まれた気がするけれど気のせい?
「ありがとう。悪いけれど、タオルは受け取れないよ。それと、何度も言っていると思うけど、名前で呼ばないでくれるかな」
「そんな、私たちお友達ではありませんか」
「友達になった覚えはないけど。仮に友達だとしても、ここにいる皆も敬称をつけて呼んでくれているんだよ。それが最低限のマナーだと思うのだけど」
超爽やかスマイルで容赦なく言ってのけるルーク殿下。まあ、ルーク殿下の言っていることは至極当然のことなので、フォローする気もない。
「それとね、ここで会話をしていたのに、それを遮って入ってくるっていうのも失礼な事なんだけど、知ってる?」
まだ言うの?そう思って黙って見ていると、令嬢は涙を浮かべた表情で、何も言わず走り去って行った。
しっかり私を睨んでから……なんで?
「もしかして今のが?」
リアム殿下が驚いた顔のまま口にする。
「その通り。なかなか凄いでしょ」
「あれで貴族令嬢?ホントに?」
ウィロウが信じられないとばかりに言う。
「もうね、本当に理解してくれない子だから。優しく諭すなんてことしているとこっちがおかしくなってしまうからね。だから本当に気を付けて」
「はい」
百聞は一見にしかず、皆、大きく頷くのだった。
エルたちは騎士団の方たちに稽古をつけてもらうと言って、おじ様と再び会場へと戻って行った。
ウィロウと私とルーク殿下で帰るために馬車を待つ。
ウィロウの家の馬車はもう待機しており、殿下と二人で見送った。
「さてエリー、大会前の約束覚えているかな?」
「ええ、勿論覚えているわ。ご褒美でしょ、何がいいかはもう決まっているの?」
「決まっているよ」
そう言った殿下がずいっと顔を近付けてきた。
ドクンと私の心臓が鳴る。
殿下との距離が近い。今まではこんなに近くに寄っても平気だったはずなのに。今はこの距離が恥ずかしい。
「ふふ、その顔可愛い」
呆けていると、殿下の長い指の背で頬を撫でられた。
ボンッとまたもや音がした。頬が熱いという事はきっとまた、私の顔は真っ赤になっているのだろう。
そんな私の頬を再びすっと指の背で撫でながら
「エリー、私とデートして」
「デート?」
「そ、デートだよ。私とエリーの二人でね」
「!!」
「それが私にとってのご褒美だよ」
「……」
「ダメ?」
「ダメなんかじゃ……ない」
「じゃあ決まり、デートしよ」
間近で超がつくイケメンの超がつくほど甘やかな笑顔を向けられて、踏ん張っていられた私を褒めたいと、そんなどうでもいい事を考えながらコクコクと頷いたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
おかしいわ。ルークの好感度が全く上がらないじゃない。隠れキャラなだけあって、激ムズなのかしら?
「やっぱり攻略したことないキャラは厳しいなあ」
今までのキャラクターと同じようにしてもダメなのかもしれない。
でも絶対に諦めないわ。一目惚れだったんだもん。
お茶会で初めて見た時は、危うくよっしゃー!と声をあげそうになったくらい。
パッケージでは小さく後ろ姿だけしか写っていなかったのよね。
一番のイケメン。私の好みにドンピシャなのよ。
それにしてもあの女が邪魔で仕方ない。
「どうしようかなあ」
これから先の好感度上げイベントを予想しながら寮へと帰るのだった。




