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ルーク殿下の強さ

「殿下、強くなりましたね」

剣を交えながら副団長が俺に言う。

「副団長は少しなまりましたか?」

「相変わらず、顔と腹の黒さが一致しない方だ」

「それはお互い様でしょ」


会話しながらも、剣の交じる速さは増々早くなる。

その時、微かにエリーの声が聞こえた。

「ルーク殿下、頑張ってー」

ふふ、きっと顔を真っ赤にして精一杯の大きな声を出しているのだろうな。

「私の可愛い人が応援してくれているので、この辺で決着つけさせてもらいますね」


「は?」

ここだ!一瞬の気の緩み。俺はそれを見逃さず剣を一閃する。その瞬間、副団長の剣が宙に舞った。

「はあ、絶対に私より腹が黒いですよね、殿下は」

「国を預かる者としてはこれくらいでいいでしょ」

「はは、確かに。私が現役のうちに頼みますよ」

「そうなるように、頑張りますよ」


「勝者、ルーク・ランカスター」

割れんばかりの歓声が響く中、副団長と握手を交わし会場を後にした。


「ハハハハ、腕は鈍ってなかったようだな。それどころか鋭さが増して強くなってるじゃないか」

おじ様がとっても楽しそうに笑っているその笑顔をぼーっと見つめる。

「ルーク殿下って本当に強いのね、驚いたわ」

ウィロウも興奮気味で喋っている。


殿下は強かった。そう、本当に強かった。それに、すごく素敵だった……そう思った途端、ボンッという音が聞こえた……ような気がした。頬が熱い。

「エリー、どうしたの?顔が真っ赤よ」

「どれ、頬は熱いが熱はないようだな。ちょっと興奮しすぎたか?」

おじ様に手で熱を測られる。


「殿下がカッコよくて……びっくりしたわ」

「えっ?まさか殿下の事好きになっちゃったの?」

悲痛な顔のサムに聞かれる。

「好き?ええ、好きよ。だってお友達だもの」

「そうじゃなくて」

「?」

「はあ、わかってないみたいだからいいや」


そんな事を話しているうちに魔剣士の方の試合が始まった。

魔剣士は魔法を駆使しながら剣を使う。身体強化や剣に炎や氷を纏わせたり、障壁を作ったりと、直接相手に魔法を使う以外ならなんでもアリなのだ。剣の実力よりも魔法をどう使うかが勝つポイントになる。


リアム殿下は準決勝、エルは決勝までいって残念ながら騎士団の魔剣士に敗れてしまった。

でも私は、ルーク殿下の試合での姿が頭から離れなくて全く集中出来なかった。

皆には内緒だけれど。


「剣術、魔剣士の優勝者がそれぞれ決まった。大きなケガもなく、皆よく頑張ったのお。ここに君たちの健闘を称える。そしてこれから剣術の優勝者と、騎士団団長とのエキシビジョンマッチが開催される。その後、希望者は騎士団員から稽古をつけてもらえるそうじゃから、しばし休憩するといい」


学園長の言葉が終わると、会場にルーク殿下が現れた。

ドックン。何故か私の心臓が大きく跳ねた。

理解不能な自分の身体に首をかしげつつ、後ろのおじ様を見る。

「さあ、じゃあひと暴れしてくるか。エリー、応援よろしくな」

そう言うと、観覧席から会場へと飛び降りる。


「ふふ、やっぱりおじ様カッコイイ」

「ホントよね。いずれライリーがああいう風になるかと思うと楽しみだわ」

「ライリーがああなるとは限らないけどね」

「もう、サムったら。私の将来の楽しみを潰すような事言わないでちょうだい」

「ふふふ」


 客席から会場に降り立った団長。相変わらず行動が豪快なオヤジだ。

「殿下、訓練場に来なくなったからてっきり弱くなったかと思ったのに、鍛錬はしっかりしていたようですな」

「そりゃそうでしょ。鈍ったらいけないからね」

「はは、流石は王太子。一国一城の主になる気概は持ち続けているようで安心しましたよ」

「まあね。守りたいものがあるからね」

「いい事ですよ。守りたい気持ちが強さを生むんですからな」

「はは、ありがとう。精進するよ。じゃあ始めようか?」


 ガキーン!!

今までの試合では聞いたことのない激しい剣のぶつかり合う音。

「お義父様は当然だけど、ルーク殿下があの力に押し負けないって凄くない?」

「確かに。僕が見ていた頃よりも更に強くなっているのは間違いないね。これはひょっとすると、殿下が勝ってしまうなんて事があるかもよ」


「えー。分が悪い殿下を応援しようと思っていたけどどうしようかしら?エリーはお義父様を応援するのでしょ」

「うん、そうなのだけど……」

さっきからルーク殿下しか目に入っていない。久しぶりにおじ様の豪快な剣を見られると楽しみにしていたはずなのに。


今日の私は何かおかしい。どうしてもルーク殿下を目で追ってしまう。

「もう二人とも応援する!」

どうしようもないのでこう結論づけた。


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