42 空の部屋
俺は自分の部屋を蓮華に見せて喜んで貰おうとウキウキした楽しい気分で手を引いて空を飛んだ。
「わぁ~~♪何ですか此れは?」
「其れは小型の宇宙船なのだ♪なかなか格好良いでしょ?」
俺の部屋に入ると直ぐ目の前には、落ち着いた高級感を漂わせる金属光沢を放つ流線型の乗り物が鎮座していた、全て水分子機械群で出来ていて大きさは4畳くらいだった。
「さあ、乗って♪此れで部屋を探検するのだ。」
「ふふふっ、何だかワクワクしますね♪」
俺と蓮華が近付いて地面に着地すると『ブシュ~!!』格好良い効果音が響き、熱く無い水蒸気が足元をに溢れた、小宇宙船の透明な天井部分の全てが、ゆっくりと90度の角度まで持ち上がって止まる。
「此の内部の複雑そうな機械が光っているのは何故ですか?」
蓮華が小宇宙船の中を覗き込んで興味深く見ていた。
俺は後ろから蓮華の露出した綺麗な白い肌の太もも見つつ後姿も綺麗だなぁ~~と感心しながら、得意顔で説明した。
「それは無意味な装飾だから意味は無いんだ♪」
「え~~!意味が無いんですか?」
蓮華が驚いた顔をして振り向いた、蓮華の顔はどんな表情をしても綺麗に見えるなと思った。
「強いて言うなら、、、」
「も~何ですか?」
「格好良い!!」
蓮華は凛々しく真面目な顔で俺を見詰めていた、俺は得意顔で見詰め返す。
「あっはははは、空、可笑しいです♪」
「ふふふっ、男の憧れなのだ♪」
俺は笑う蓮華の右手を優しく取ると、小宇宙船の中に恭しく招待した。
俺と蓮華が座席に着くと『ブ~ン!!』と近未来的な効果音と共に神秘的な柔らかい光が船体の輪郭を包み、余剰光力が部屋の中を照らしながら小宇宙船の天井の蓋が閉まる、俺と蓮華は柔らかく座り心地の良い座席の中から部屋の変化を安心して楽しむ。
『発進過程進行中、船長準備完了しました!!』
電子型複合人工知性体の涼やかな女性の声が船内に落ち着いた声音で響く、俺は淡い青い光が明滅する船内で左隣の蓮華の顔を見た。
「早く発進させましょう♪」
「そうだね、発進!!」
小宇宙船は一度小さく身震いすると『ブオン』と効果音を響かせて空中に浮かんだ。
『船長、目的地をどうぞ!』
「目的地は隣の部屋だ!」
『了解!目的地、隣の部屋!船長、御武運を!!』
「空?何と戦うんです?」
「蓮華、此れは大人の格式美で何とも戦わないんだ。」
「むむ、楽しいのですか?」
「宇宙船の船長に成る事は、一度は夢見る男の憧れなのだ。」
俺は内心を上手く隠せたと満足しながら蓮華に船長ゴッコの楽しさを伝授すべく熱く語る、蓮華は真面目な顔で聞いてくれた。
そんな会話をしている内に、小宇宙船が部屋の壁に近付くと、隠し扉の壁が自動で持ち上がり天井に消えていった、隣の部屋に着くと、其処は見渡す限り森林に成っていた。
「わぁ~~♪可愛い木ですね♪」
「ふふふっ、そうでしょ?極小の森と山の景色を上空から見て、綺麗に見えるように頑張ったのだ。」
『未確認降下物体を観測しました!!敵性反応確認されました、内部力素が急激に高まっています、警告!!対衝撃に備えて下さい。』
船内に画面が展開されると、空に浮かぶ小さな赤い点から、赤い高力素が光線状に成って小宇宙船に雨のように降り注ぎ船体を激しく揺らす。
「わぁーー大変なのだ、悪の宇宙怪獣が攻めてきたのだ!」
俺は少し棒読みに成りつつ、蓮華の身体に覆いかぶさって蓮華を守った、蓮華の身体は柔らかな感触を伝えてきて、俺の頬を緩ませる。
「空?どいて下さい、そんなに揺れてませんよ?」
「無事か、蓮華!!おのれ宇宙怪獣め!人類の底力を見せてやる。」
俺は笑顔で座席に、ゆったりと前のめりに座り、無意味に装飾された格好良い機械の淡く青光に明滅するボタンを軽やかに押しまくる、すると俺と蓮華の目の前に小型の拳銃に見える、小宇宙船の攻撃標準装置が床から迫り出してきた。
画面に映っている赤い点が流星速さで急激に巨大化した、カブト虫のような立派な角を生やした物体は灼熱した真紅の外骨格に炎を纏わせながら、宇宙船を強襲したのだった。
『ズゴーン!!』俺の背丈程の大きさの真紅に輝く角が小宇宙船の外郭に傷一つ付けられずに接触し巨大な音が身体を圧迫する体感と同時に船内が演出で揺れた、その時、船外では周囲に無数の衝撃が生成された結果、小宇宙船の周りの樹齢何千年の巨木が何本も宙を舞い、砂埃を巻き上げ視界を塞いだ。
『防御機構に深刻な損傷を確認!!防御力場は3分後に消失します、船長!』
「大変なのだ蓮華!!3分以内に決着を着けないと、、、俺達は、、、」
俺はノリノリで深刻な表情を作って蓮華を見た、蓮華は楽しそうな笑顔で拳銃を構え、小宇宙船の光子力重力場兵器を撃ちまくっていた。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
俺は慌てて船外の宇宙怪獣を確認した、宇宙怪獣の弱点に設定していた赤い核が外骨格の中から、もう露出していて、今まさに打ち抜かれた瞬間だった!!
『ボコ~~ン!!』弱点の赤い核が打ち抜かれた宇宙怪獣は、お約束で大爆発を起こし消えた、目の前に残った景色は無残に破壊された森林と黒い煙だけだった。
『船長やりましたね♪我々の勝利です!』
俺はボー然とした。
「やりました空、私が空を守りましたよ♪}
凄く楽しそうな蓮華は凄く可愛かった、、、俺は思わず、蓮華の大きな柔らかな胸に飛び込んだ。
「空そんなに喜ばなくても。」
「ふふふっ、蓮華の胸は柔らかくて癒されるのだ。」
俺は幸せな柔らかさを感じながら考えた、蓮華の判断は正しかった、3分以内に撃墜しなくては、ならない場合は悠長に会話をしている暇は無く、最速で撃破する事が求められる。
あ~~下手に臨場感を出そうとして、3分という時間制限を掛けなければ良かった、、、3分以内で決着を着けるのは格式美なのだぁ~~とノリノリで考えた俺は、、、俺の両手は優しく蓮華の胸をモミモミと揉んだ、充分に幸せな柔らかさ堪能し癒された俺は顔を上げた。
「蓮華、ありがとう俺を守ってくれて。」
「当然ですよ、空は大事な人ですから。」
蓮華の優しい落ち着いた声は俺の心の胸を不意にきゅんと、ときめかせた。
「次は俺が蓮華を守るよ。」
「ふふふっ、期待してますね♪」
俺は内心で決意した、次の部屋で俺は蓮華を格好良く守るのだ!
●
俺と蓮華の乗った小宇宙船は黒い煙が燻ぶる森林の部屋を背後にした、森林の部屋は時間が早送りされたかのように、小さな芽が生えると急激に成長し巨木へと姿を変え見事な自然を取り戻した、天井裏では第2の宇宙怪獣が次の来訪者を待って休眠に入った、青空に見えている隠し扉が天井に消えて行き次の部屋へ移動する。
『船長と蓮華隊員は不安と希望を胸に抱き、それでも前に進むのだった、未だ見ぬ景色を求めるという理由だけで、、、何という冒険心だ!!』
「空、何です此れは?」
「蓮華♪此れは、お約束の美学なんだよ、この煽り文句が見ている人の胸に淡い憧れを抱かせるだよ。」
「そう何ですか?」
「そう何だよ、前人未踏とか煽り文句が入ってても、そんな事在り得ないしね、、、現地の人が先に入ってて、寂れた頃に日本人が案内人付きで、如何にも初めてひりますよ~~という緊張感を演出しているだけなんだ、、、人類に地球は狭過ぎたんだ。」
「空に真面目な顔は似合いませんね♪」
「にゃにぉ~~今、格好良い顔してたでしょ!!」
「あっはははははは、普通の顔の方が自然で私は好きですよ♪」
「むぅ~~。」
暖かい雰囲気の中で楽しく蓮華と会話をしていると、目の前の画面には、いったい何年経年劣化したのか検討も付かない色褪せた木と石で出来た巨大な建造物が横たわっていた。
「空何です?此れは?」
「ふふふっ、俺は超未来世界に生まれたからね、もう神秘の古代遺跡に逢えないなと思って、ならば俺が考えた古代遺跡を部屋に作ればいいじゃんと思いついたのだ。」
「空、、、此処で生活出来るんですか?」
「あっ!!あ~大丈夫だよ、寝るときは蓮華のベッドで寝て、、」
「空、私も一人に成りたい時が在るので、2階の自分の部屋は普通に生活出来る部屋を作ってくださいね?」
「ははははっ、そうだね」
巨大な朽ちた入り口が小さな宇宙船を飲み込んでいった。
ドンドンドン、何処からか太古の太鼓が怪しい音色で聞こえてきた、遺跡内は俺の要望で明るく成っており通路の先まで見渡せる。
通路の真ん中まで来た時だった、遺跡内部に仕込まれた動感知機械が小宇宙船の移動を感知して罠を発動させた。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオ!!』
「空、太鼓の音に紛れて、何か音がします。」
「何!?蓮華それは大変だ!画面には何か映っていないか?」
「ちょっと待って下さい、此れは、、、巨大な金属塊が宇宙船の背後から転がってきます。」
『警告!!質量球が迫ってきています!!』
「よし蓮華、小型射撃装置を構えて撃ちまくるのだ!」
「了解です。」
画面に映った丸い金属塊に俺と蓮華で銃を撃ちまくると、光線が通り抜けるたびに穴が空いていき、ついに無残にもボコボコの穴だらけ成った丸い金属塊は哀愁を漂わせて通路の途中で回転を止めた。
「ふ~~お約束の美学からしたら逃げたい処なんだけどねぇ~~遺跡に、こんな金属塊が転がってくるのって不自然じゃん?だから何時か壊してやりたいと思っていたのだ。」
「そうなんですか?空の考えてる遺跡は不思議が一杯ですね。」
「神秘だからね♪」
通路を抜けると色褪せた巨石が擂鉢状に成った部屋に出た、其処には煌びやかな宝箱に入った、大量の金貨と宝石が溢れかえっていた。
「やった!!宝だよ蓮華!!」
「嬉しいですか?」
「それは嬉しいよ、遺跡といったら、お宝は、お約束の美学から外しては、いけない要素だよ!」
「空、万能点数で宝石などは自由に作れるでしょうに、、、」
蓮華を見ると、凛々しい顔で半眼に成っていた、あふん♪蓮華に呆れた感じで見られるのは案外良いかもしれない。
『動体反応検知!!生命反応無し!!未知の物体です!!気をつけて下さい船長!!』
「了解!!蓮華は画面を注視して」
「はぁ~~い。」
ドン、ドン、ドドドドド、太鼓の音がドンドン狭まって行き、音が高みを目指し頂点に達すると空間が波紋状に歪んだ。
ヌルリ!!湿った水を掻き分ける音が部屋に木霊して、波紋状の空間から白い骸骨の右腕が現れた!!瞬間、空間を引き裂く光線が宇宙船から放たれた!!
『ビュン、ビュン、ビュン!!』空間を唸らせる光線が骸骨の右腕を木っ端微塵に粉砕し、勢い余って歪んだ空間の向こう側にいる本体をも粉砕した、お約束の美学、やられた敵は謎の原理で爆発するが観測された!!
これから更に盛り上がろうとしていた音楽が最高調に達した瞬間に現れる筈だった骸骨の海賊船長は、爆発するという時期だけが音楽と見事な一致を見せ、登場すら出来ず音楽だけを盛り上げて退場してしまった。
「ぶほっッ、あっははははははは!!もう何だコレ??神秘が台無しだ!!あはははは!!」
「ふふっ、空、私は自分の才能が怖いです、此れからは宇宙一の射撃名人と呼んでも良いですよ?」
「あははは、ははは、蓮華は可愛いな、状況判断は的確だし、よっ!名人蓮華!!」
『やりましたね船長!!未知の物体に対して損害ありません!!』
俺は得意顔をする蓮華が可笑しくて、神秘の失敗を悟り、代わりに、お笑い劇場の切符を強制的に握り締めていたのだという事実に気が付いたのだった。
思いっきり笑った結果、俺の気分は爽快だった。
「あ~宝は全部回収してね」
『了解!!船長、作業終了予定時間は5分です!』




