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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
98/105

本質




いわゆる ∥冬クール∥ ドラマ。


年明け 一月〈January〉より、

プライムタイムわくで放送される特撮(とくさつ)番組

『チャンバラ戦団(せんだん)(とつ)レンジャー』は、

ON TV!まで一ヶ月を切り、秒読み段階をむかえていた。


制作上の都合により、

|一話完結ストーリー|から

|連続もの|へと

大きくかじを切った成果せいかは、

いまのところ、まだ出ていない。


セリフを一言(ひとこと)はっしないナチュラル女優・笹森ささもりと、   

様式美ようしきびオニ南禅寺なんぜんじマロ監督ではりの合うはずもなく、

水面下すいめんかでは無言むごん闘争とうそうひろげており、

撮影現場は、

強い磁力じりょくを持つ二人のせいで、心持ち、ゆがみが生じていた。


・・よそおいはたがいにことなりながらも、

  りょう内磁極ないじきょく

  間接かんせつ的な激突(ゲキトツ)が引き起こす

  反発ケミカルは劇薬げきやく指定。

  TV局の (プロデューサー) はお手上げ状態だった。


局Pは一計いっけいあんじじ、

╏パブリシティーに協力することは

笹森ささもりの契約条項(じょうこう)り込まれていたので╏

女優と監督二人きりで、

TVインタビューに応じる場を強行きょうこうセッティングした。

・・ある意味ショック療法りょうほうだ。


━〇━

「おふたかた、本番いきまーす!」

撮影隊のリーダー〈仕切(しき)り役〉から合図(あいず)がかかった。


親密しんみつさをにする意図いとを持つ、

えがくよう配置された、ひじけ椅子二脚(にきゃく)

その両隣りょうどなりこしけ、

心持ち向き合う形でTVカメラを前にした監督と女優は、

おだやかな表情に笑みを浮かべ、

まるで十年の知己ちきのような雰囲気ふんいきかもし、

建前タテマエ 全開ぜんかいで)インタビュー応じた。


いわく~ 撮影は順調です(汐)

━ 曰く~ レンジャー’Sのアンサンブルは非常に素晴らしい(マロ)

━ 曰く~ 監督・脚本・共演者すべてが最高です(汐)

━ 曰く~ 笹森汐こそ、ヘレンケラー役にふさわしい女優である(マロ)

━ 曰く~ 南禅寺なんぜんじさんは役者の意見を取り入れてくれる、

     とてもフレキシブルな監督です(汐)


内情ないじょうを知らない第三者が収録画面(だけ)を見たら、

撮影現場は、すこぶる順調と映ったに相違そういない。


ただし、

SNS界隈かいわいにおいては、

マロの「ヘレンケラー発言」をめぐり、憶測おくそくかまびすしく、

 <監督からの()むに()まれぬ内部ないぶ告発こくはつに違いない>

 <監督発言の際、女優の表情が一瞬・・(コワ)()った>

 <(しおり)(ぼう) がセリフを言わないうわさはコレでうら()りできた>


さらに(女優・監督)二人の顔つきや発言を顕微鏡けんびきょう的に分析して、

 <いかにもな汐坊の表情は演技だと推測すいそくされる。

  普段ふだんくらべ、虹彩こうさい加減かげんが微妙に不自然>

 <アイコンタクトを巧妙こうみょうけている二人>

 <監督の目には嗜虐性(サディズム)宿やどっていた>

 <南禅寺(なんぜんじ)悪党(あくとう)だと思う(知らんけど)>


ネット上では ━ 不仲ふなか証明&レスバトルがっていた。

スレやハッシュタグ名は ━ 『逆・相思(そうし)相愛(そうあい)』。


「終了、お疲れ様です!」

カメラ・ストップした途端とたん、両者は瞬速でそっぽ(・・・)を向いた。

汐は、早足はやあし一直線・・

ドアに向かい〈バタン!開閉して〉消え去り。

うで組みしたマロは・・

しばし時間調整したのち、

組んだ(うで)をほどいて立ち上がり、無言むごんで退室していった。

━ インタビュアーの女性はフリーズし、撮影隊はザワついた。


むろん、局Pから、

緘口令かんこうれいが出されたことは言うまでもない。

・・ ぎゃく療法りょうほうは失敗に終わった

()仕合わせナムナム)。

━〇━


視点してん移動いどうして║

(とつ)レンジャーを撮影しているスタジオに目を向ければ、

サブ監督の猪熊いのくま中和剤ちゅうわざいとなり、

現場は、かろうじてバランスをたもっていた。


マロ監督にとってははらたしいことに、

(とつ)イエローにエンジンがかかると、

他の(スリー)レンジャー’Sも生き生きしてくる事実。

やはり、キャストの推進力すいしんりょくは・・しおりなのである。


18歳は・・

マロ(ぐみ)の時には地蔵じぞう女優にてっし、

猪熊(ぐみ)のときは

演技指導まで買って出るりようであった。

汐の演じたとおりに、

(とつ)(レッド・ブルー・ピンク)がなぞりアクトすると、

まるであつらえたように画面にピタッとはまり、()えるのだ!


妥協だきょうほとんど知らぬ先輩(マロ)監督のおかげで

おくれているスケジュールを、

サクサク進行できるのは、たいへん有難ありがたかった。

一方いっぽうで、

映像表現〈様式美〉よりも、

演技(・・)そのものにおもきを置く

クマ監督にとってはいたかゆし。

まだ基礎きそかたまっていない新人たちの、

成長機会きかいうば危惧きぐぬぐえなかった。

╂ これでは 笹森ささもり しおりあやつり人形ではないか? ╂


たとえ・・

3レンジャー’Sが俳優志望でないとしても、

演技する(みの)喜怒きど哀楽(あいらく)を、

そして(ねつ)を、

そのあとに残るなにか(・・・)を知ってもらいたかった。

━ 今後の人生に、幾許(いくばく)かではあるが、やくつはずである。


しかるに・・心配は杞憂きゆうに終わった。


二十代の若き生命力は、

それぞれに発育はついくはじめ、

物まね演技に、

セルフアレンジを加えるようになっていったのである。

┃アドバイザー(しおり)は そのことにおどろき・・

(3レンジャー’Sより年下なのにもかかわらず)

・・(あね)(よろこ)びした┃


アレンジされた主観しゅかん演技は、

おおむあやまることのない直感ちょっかんを持つ?誰かさん(・・・・)と違い)

いささかあやしげなところ(・・・)も少なくなく、

当該とうがい箇所かしょ自覚じかくさせるため、

猪熊いのくまたましいこもったディスカッションを行い、

気付きづき¦をうながし、

軌道きどう修正しゅうせいをほどこしていった。

ときおり監督VS新人三人(全員大学生)とのあいだ

わされる演技論は、

白熱はくねつび、

身振みぶ手振てぶりは、

激しさを し していく。


「スタニスラフスキー・システムのメソッド演技がー」

   とか

「アドラー手法がー」

   とか

「マイズナーの本能ほんのうアプローチこそがー」などと、


口角こうかくあわを飛ばし、

自己じこの 青い主張しゅちょう こそが正義せいぎであるとばかり

若者三名は、

人間力にんげんりょく芝居を「根本/MUST」理念(りねん)えるクマ(猪熊)監督と、

舌戦ぜっせんひろげた。


/あるとき/

レンジャー’Sは、

対監督との議論ぎろんを、

ニコニコしながら遠目とおめながめているプロ女優に、

彼女自身の「演技論」開陳かいちんもとめたことがある。


・・しばし考えこむしおり


たして、

売れっ子女優から、

いかなる┃芝居への独自どくじアプローチ┃がけるのか?

3レンジャー’Sにくわえ、

猪熊クマ監督までもが、

興味津々(しんしん)ていで、

笹森ささもりランゲージをっていた。



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