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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
83/90

チーム里見再結成|先鋒

クライアント(依頼人)の 天田あまだ弁護士 を、

盲点もうてんライン発 =͟͟͞͞ =不意打ち襲撃しゅうげき)=͟͟͞͞ = から守る、

ポアンカレ予想解明なみに難題なんだいの<ボディーガード・ミッション>は、

二十四時間ベタ付き|昼夜二交代制|で行われることに決定した。

━━ どちらかと言えば、

   K・コスナーよりも、

   G・ペレルマン博士を必要とする任務であろう。


夜間19時から翌朝9時までは・・里見所長が受け持ち、

昼間は・・

鈴木サユリ と くすのき 南平なんぺい による日替わり交互担当である。


トップバッターは、社会人一年目の南平が務める。

初日のみ 開始時間が中途ハンパゆえ、22時までの変則勤務。


その理由を述べておくと・・

所長&助手コンビは、

ツインズ♂ネコとの再会を首を長くして待ちわびている飼い主に、

返却・訪問するという大事な使命しめいを控えていたからである$

本来、里見一人で事足ことたりる用件ではある、

しかし、サユリ助手は、飼い主の人柄ひとがら

その お宅の飼育しいく環境を、自身の目で確かめたいと言い張り、

同行を願い出たのだ。


なお・・

里見所長と、

NOWカノ(=現在の彼女)には言いそびれてしまったが、

南平は・・

東京支社へ転勤辞令(じれい)を受け、

出張がてら、喜びを胸に秘め、

会社で借りてくれた〈ライオン・パレス〉の内覧ないらん

すでに済ませていた。

U駅徒歩十分・・

二階建ての家具付き1DK、

しかも二階の角部屋 ━ ラッキーストライク!

学生時代を過ごした第二の故郷に里帰りするのは、嬉しく、

また なんとなく運命(・・)を感じた。


吉兆きっちょう気分を胸にかかえ、

探偵事務所へ挨拶あいさつに訪れるやいなや、

初対面の天田さんからは、

流れダマクレームを頂戴ちょうだいし、

<ツインズ♂ネコ>騒動そうどうに巻き込まれ、

有給休暇七日分が付与ふよされたというタイミングも追い風(?)となり、

あれよあれよという間に・・

所長からボディーガード・チームに入るよう依頼され、

引き受けてしまった という経緯けいいなのである。


極々(ごくごく) 内輪うちわでは・・

ひんした挙句あげく倹約家けんやくか》と呼ばれている、

あの里見さんが(珍しや⁉)高額ギャランティーを約束してくれた。

・・吉兆は ()り したと言っていいかもしれない!


任務のため、

天田さんをアテンドして、

探偵事務所から自宅まで送り届ける直前・・

 サユリと里見は、

 所長デスク越しに、

 顔を突き合わせ、

 小声で、

 必要経費に関しての 押し問答火花 を散らしていた。

ー「○○さんを呼び寄せてもいいですか?」

ー「いいや、そいつは認められんね」

ー「どうしても必要な措置そちなんです」

ー「ムダな経費は、びた一文いちもん使わない」

ー「どこが、どのように、ムダなんですか?

  説明してくださいよ、明確に。

  私の考えるところでは・・云々(うんぬん)かんぬん・・」


サユリちゃんの

()押し(=なかなか折れようとしない)

自己主張の萌芽ほうがは、

ホテル勤めの中頃(なかごろ)から 感じていたけれど、

そのクキ

(重力屈性に従い)

確実に伸ばし始めていた。

|ジャックと豆の木|化しないことをいのるばかりだ。


「いやはや 先行き不安な曇天どんてん模様・・」

南平は肩をすくめると、

いまさっき・・経費で買いそろえた、

洗面具タオル等々の入ったデイパックを背負い、

右手にビジネスバッグをげ、

天田さんと二人・・迎えのタクシーに乗り込んだ。


━〇━

奥さんに先立さきだたれた天田氏は、

広々とした邸宅に独居どっきょしていた。

老齢を重ねていく父の身を案じた長男夫妻から

二世帯同居の提案を受けたけれど、

他人(=天田氏)に 気兼きがねする「(よめ)」の立場をおもんばかり、

キッパリ断った、とは本人の談である。

フォロー・タイミングで・・

同じ弁護士を生業なりわいとしている長男は、

おもんばかりの返礼、三軒ほど隣に新築住居を構えてくれた。

したがって、

三歳の愛しいまごには頻繁ひんぱんに会えるし、

 (震災で泣きらしていた初孫ういまごくんは、

  国際派弁護士を目指し、現在英国留学中とのこと)

病気や怪我ケガなど、いざという時は、

身内の者が、すぐ駆け付けられる態勢たいせいおよび距離ゆえ、

(双方向有線式ダイレクトコールも設置済み)

心配や不自由は、ほぼ皆無かいむである。

つね日頃、水泳で鍛えている天田氏は、

冬場に訪れる足の痛み(3・11地震の骨折箇所)をのぞけば、

すこぶる健康体であった。

食事の世話は、

長男の嫁が朝晩欠かさず、手作りを届けてくれる。

それ以外の家事全般は、通いの家政婦に依頼していた。

悠々自適の毎日なのである ・・

┃渦巻幻視┃ さえ消失しょうしつすれば。

━〇━


「勤務時間内は全面的に寄りかたちになるので

たいへん不自由でしょうけど・・何卒なにとぞ・・」

書斎しょさい入りしたあと、

改めて、注釈ちゅうしゃくじえた挨拶あいさつをする南平を、

クライアントは得心顔でさえぎった。

「いやいや。ワシが無理を言って、お願いしたのですから、

多少の窮屈きゅうくつり込みずみ、

我慢がまんするのは大人おとなのたしなみ。当然のことだ。

今現在・・厄介やっかい頭痛(・・)の方は中程度。

強くは感じられません。

幻視(・・)発現はつげんもなし。ご安心くだされ。

まあ・・せんい話・・を申せば、

どんなに警戒けいかいしても 渦巻(うずまき)幻視 からは

のがれられそうにない気も・・します。

かりに、堅牢けんろうな<核シェルター>へ逃げ込もうとも、

インフラが長期ストップしたら・・絶命必至!

敵の襲撃しゅうげきは、

単一たんいつ方向からという確約などない。

桶狭間おけはざま仕掛しかけられたら万事休す!

考えれば考えるほど厄介やっかいなのだ。

えざる敵┃が・・

おさなまご標的ひょうてきにするのを、

心底!ワシは危惧きぐしとります。

頭痛が消え去るまで、

金輪際こんりんざい、孫には会わないと決めました」


デスクに腰を落ち着けている天田氏は、

確固かっこたるに口調にくるんで諦観ていかん心情をらし、

PCを立ち上げた。

「半隠居(いんきょ)の身とはいえ、

それなりに仕事をかかえとります。

ワシはしばらくの間、集中しますので、

どうぞ、本でも読んでくつろいでいてください。

イヤフォン使用なら スマホ視聴 だって構いませんぞ」


予備机前に腰かけ、

机上にスマホと充電器を置き、

首をぐるりと回して室内を見回す、新米しんまいボディーガードの南平。

書斎内は十畳間(16・2㎡)程度・・

一般家屋(かおく)より高い天井てんじょうが特徴的な快適スペース。

法律書やら専門書、大判の美術専門書、数えきれない画集、

新書、図鑑、文学全集、百科事典、小説etc、

意外やコミックに至るまで隙間すきまなく、

スライド式木製本棚に収められていた。

CDやDVDコレクションの量も、南平を圧倒した。

目いっぱい高く設計された固定書棚×2を占領せんりょうしている。

・・まさに個人図書館といったおもむきだ。


特筆すべきはAV機器とオーディオ設備。

大画面テレビが鎮座ちんざしており、

こんなモニターと音響設備で、

映画を見たらすごい迫力だろうと想像する。

また、

視聴覚専用の椅子チェアときたら、

ひじ掛け&足掛け(プラス)リクライニング機能まで備え、

夢のようなしつらえであった。


この部屋でサユリちゃんと二人きり、

彼女の好きな、

『深夜の告白(1944)/日本公開(1953)』Blu-ray版でも見れたら最高だろうな。

 J・(マハラン)・ケインの原作を・・

 後年名をせることになる作家と監督との二人がかりで

 異常なる軋轢あつれきを乗り越え、

 (当時としては)非常に先進的な脚色を完成させた。

 構成のお手本と称されるストーリーテリングは、

 モノ黒画面に移植いしょくされ、

 ダークなハードボイルド映画の(いち)典型てんけいとなり、絶賛された。

世紀変わりした現在の目で見ても・・まったくズレを感じさせない。

俳優もピタリとはまっている、

頭がキレる保険勧誘員~ネフ役の男優(適演)

危険な色香をかもし出す~後妻のフィリス役(好艶)

まま娘・ローラのあつかいには~うならされる。

特筆とくひつすべきは、

ネフの上司で調査員役~バートン・キーズ。

カン働き(・・・・)の鋭さで主人公を窮地きゅうちに追い込み、

作品に、ヒリヒリする緊張きんちょうもたらした。※

ロウマッチの渋いラストシーンにもグッとくる!


補足ほそく:昭和28年()に見た日本人には、

 ドライブスルーの場面はピンとこなかったと想像する)


サユリちゃんが夢中になるのも納得がいく。

彼女は ━ 巧みに構築された作品を好む傾向にあった。

プラス ━「自分にはどうしても書けない!」と、

     常日頃なげいているのが、

     核心かくしんき、

     読者を折伏しゃくぶくさせてしまうダイアローグ&独白である。

確かに ━ 名作映画は、胸にズシンと響くフレーズを、内蔵ないぞうしている。


—「殺人はスイカズラのにおいがする」— なんて、

とがを含んだ、なんとも 詩的してきな言い回し ではないか。


CG以前の、こういった旧作こそ・・

大画面と優れた音響に味方につけ堪能たんのうしたいと思う、南平であった。


二時間ばかり経過後、天田氏が席を立った。

南平もスタンドアップ。

「心配無用!ワシントンクラブ。つまり、WC=トイレです」

といい、

書斎を出たクライアントの後を

ひたひたといていく南平。

天田氏は振り返ると、いささか不機嫌な表情を向けてきた。

南平はバツが悪そうに、

「申し訳ありません。

これも、ボディーガードの一環いっかんなのです。

里見所長の指示でして・・」

すまなそうな顔の若いしゅうに、

「トイレ内にまで、付き添うつもりなのかね?」


「まさか!

ドア外で待機しますので、どうぞ ご安心を」


水洗音と共にドアが開いた。

姿を見せた天田氏と目を合わせないよう気を配り、

背後から影のようにいていく南平・・ストーカー気分である。


「さて、お茶の時間にするかな」

弁護士はインターフォンのボタンを押し、

家政婦に指示を与えた。


南平は・・

額装がくそうされたゴッホのレプリカ『星月夜』を見上げながら、

運ばれて来たブレンドコーヒーにミルクとシュガーを落とし、

銀のスプーンで、かき混ぜすすった。

質感高く、キレもあり、飲みごたえあり☕

次いで、高く渦を巻いたモンブランケーキにフォークを刺すと同時に、

・・脳内に生じた〈?マーク〉を言葉に変換へんかんさせた。






(のち)の佳作『ストレンジャー(46)』にも類似役で登場(こちらもナイス!)。

 ◎折れたパイプ(白い修繕しゅうぜんテープ)の視覚効果

 ◎移動撮影とオーバーラップを組み合わせた流麗な映像

 ━ さすがは・・O・ウェルズ監督である。

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