गुरु ビスケン・・続き
物質面と親の愛情。
双方にめぐまれた、
ビスケンは児童期から秀才街道を歩んでいた。
半面・・
虚弱体質で、
三半規管に機能障害を抱えているため、
スポーツ方面は、からっきしダメ。
自転車に乗れるようになるまで、半年近くかかった。
小学四年|十歳のとき、
体育専門の家庭教師をつけてもらい、
日々 精進を重ね、
二年の歳月をかけたにも関わらず、
クラスの平均レベルにすら到達できなかった。
┃努力は必ずしも報われない!┃
┃ヒーローマンガとは違う!┃
┃これが現実なのだ!┃
小学六年に進級した少年は、
浅からぬ挫折感を味わった。
思春期にさしかかった頃、
自分が思いを寄せる\華を/まとった異性は、
(例外なく)振り向いてくれずじまい。
不思議なことに、地味系の影薄女子たちからは、
(SOS内包の)秋波を受けた。
青の時代から、
人生の無情を舐めたビスケン少年は、
モテない反動を梃に、
ありったけの思春期パワーを傾注して、
渇望希求を満たすべく、
<個人の幸福を模索し>はじめる。
宗教にはキッパリ背を向け、
秀才頭脳を駆使して・・
難解な思想・哲学書 併せて古典文学を読破。
名盤|名作|迷作|カルトを問わず、
古今の音楽&映画を貪欲に視聴。
さらに、インターネット経由で死体写真やゴア画像を集め、
AV+海外の無修正ものを食い入るように見た。
果ては、
80年代に白夜書房から刊行された、
エロ雑誌(宝の山)を渉猟&鬼収集し、
養分を吸い取っていった。
そして・・
ストレートで志望大学合格を勝ち取り、
念願の東京で独り暮らしを始め、
ついに・・
カウンターカルチャーを下支えした、
イリーガル薬物へと舵を切るコトになる。
並行して、
同好の士を募り、
メール・マガジン『物見遊山』を創刊。
きっちり広告収入を得るビジネス仕様で、
タブーすれすれなアングラ情報の発信を始めた。
メルマガは・・
マイノリティーな若者と 一部好事家に、
カルト人気を博した。
赤字は許容範囲内に収まり、カンパで補填できた。
ここを起点に、
プロライターへと巣立っていった者もいる。
文才に恵まれたビスケン個人の追及対象は、
海外でのパープル体験etcを通して、
至ってシンプルなゴールへ辿り着いた。
┃多幸感の獲得・意識の拡大┃
二点を創造に結び付ける生産性である。
《そのさらに先にある
ニルヴァーナ〈涅槃〉の扉を開くには、
己では力量不足・・限界を早くに悟った。
スポーツや芸術方面のスキルアップには、
努力とセンスに プラスα が不可欠。
マインド修行も また同様なのだ.。
誰もが仙人になれるワケではない!》
一方で・・
非生産性も否定したくなかった。
ビスケン自身・・
■うらなり自覚で生きていた。
いまだに自転車を普通レベルでは乗りこなせないし、
鉄棒の逆上がりなんぞ もってのほか、
懸垂力はゼロ、
水泳だって浮くのが精いっぱい、
普通免許も技能講習で頓挫という、ありさま■
弱肉者として、
この世に生を受けてしまった同類たちへ、
切に届けたかった。
■自閉を拠り所とする、
努力では平均レベルまで這い上がれない、
人生謳歌へ登頂できない・・出力不足な生命体■
彼ら、マイノリティーに向けて、
レクリエーションとしてのブツを、
クールな音楽を紹介するノリで、
布教もしくは幇助してきた。
「心の奥に抱えた不安を
束の間消し去ろうぜ!」
「快楽は万人に平等なり!」
「ただし、
日本以外の合法国で決めような。
約束だぞ!」
・・そんな耳タコアドバイスをしてきた。
ときには手厳しい批判の毒矢を読者から頂戴する。
━「有名大卒のボンのくせしやがって、底辺ヅラすんな。
都心の分譲マンションに住み、
ブランド服を着て ふんぞり返っている。
てめェのWスタンダードには反吐がでるぜ!
貧乏人から小遣い銭を巻き上げやがって。
この守銭奴ヤロー!」
━ ビスケンは敢えて反論を避け、
note上で自己批判をした。
そして・・
自身の欠点を、コンプレックスを、非モテ履歴を、
赤裸々に綴ってみせた。
ビスケンの誠実な一面は、
編集者時代の実績も相まって、
課金者からの評価を高めていく。
いつしか・・
導師と呼ばれるようになっていった。
翻り、
禁忌事項の 言い出しっぺ である当人が、
下手を打って捕まってしまった!
トホホな展開には、間抜けな自分を笑うしかない。
このリアルを、
次回掲載するnoteで
『獄中記』と題し、
塀の中の出来事を、正直に晒そうと思う。
国内で法を破ることへの、抑止効果も期待して。
radikoのタイムフリー機能を使い
『笹森汐のラジオ哉カナ』聴きながら♪
しばし、三昧〈サマディー〉の追憶に・・浸る。
理想のケミカルと考えていたものが犯罪に流用された。
以来・・法整備は進み、
第一級麻薬に指定される顛末を迎えた。
先ほどのパーティー会場で
友人から譲り受けた、
ナロキソン点鼻薬と
ライトブルーの錠剤三個入りジップロックを
二重底構造のポケットから抜き出した。
劇薬タブレットを目の前でひらひらさせる。
ここ最近、
note読者から、
エールとも、苦言ともつかない、
コメントが多く寄せられていた。
「おい、ビスケンよ!
以前に比べ、角が取れすぎと違うか?
社会(法律)に目くばなんかしないで、
過激に中指立てろ。
エッジの効いた存在でいてくれ」
苦笑しつつも・・
言わんとすることは十分理解できる。
自分自身が撒いてきたタネなのだから。
とはいえ、
ビスケンは、うすうす勘づき始めていた。
ドラッグは ━
激しい音楽同様、
━ <青春期の通過儀礼>ではなかろうか?
speedをポンプして捕まり ━
某国で刑務所暮らしをしている知人もいれば・・
東南アジアにて ━
ダウナーの女王の虜になり、
密輸を企て、
無期懲役刑を科せられたメルマガ『物見遊山』の同人。
幻覚剤を服用 ━
ビルから飛び降り即死した、ライター仲間。
究極のhigh&low体験 ━
スピードボールに溺れ、
集中治療室に入り、
生死の境を彷徨っている友人。
・・末路は概ね哀れである。
審念熟慮するビスケン。
「もう、オレも若くないし、
そろそろ、別方向を模索する時期かもしれない」
眼前に存在するゾンビドラッグ錠を摂取して、
体験談を伝えなければという
アングラ文筆家としての使命感に駆られる!
過去最大のヒット数(=金)を稼ぎ出すコトだろう。
しかし、ためらったすえ・・
ジップロックの上から、
文鎮で水色タブレット三錠を、
粉々に砕きトイレに流した。
淹れたてのエスプレッソを飲むと、
自の頬をパシン!と叩き・・
気を入れ直して、
次回 noteにアップする『獄中記』をキーボードで打ち出した。
綿密な推敲を繰り返し、構築していく。
・・執筆には、素面に勝るモノなし。
夜は、更けゆき、濃度を増していく。




