गुरु ビスケン
┃サマディー(三昧)の伝道師┃
・・などと呼ばれるビスケンは、
遡ること平成の時代・・
千円でお釣りがくる
新書形式のムック本『グレイゾーン』シリーズを刊行。
トータル四巻すべてが30万部突破を記録、
斜陽出版界に風穴を開けた。
異能編集者兼カルトライター|ビスケン氏。
本名|非公開の氏は・・
無頼を気取っているけれど・・
「一流大学卒/旧家出身のおぼっちゃま」
とネット上で看破されていた。
現在三十(+アルファ)歳。
氏が隔週配信している
「note」では、
主として非合法薬物を扱い、
緻密な取材や資料読み 実体験をもとに、
卓越した文才で処理がなされ、
専門用語を噛み砕き、
衒学に傾くことなく、
非常に読みやすい文章フィルターを通して
<肯定的に>提出されていた。
したがって・・
リーズナブルで旨い定食のように、
ある種の読者は、
7g超のワンコイン課金を惜しまず、
<彼の文字列を>貪るように消化・吸収した。
半面・・
警察の生安部や厚労省管轄の麻取を、
少なからず・否・おおいに刺激していたのだ。
━〇━
都心にある2LDKマンションの自室兼仕事場で、
ボング(水パイプ)を使いポットを吸煙し終え・・
┃つい今しがた体験した
<研ぎ澄まされた決め感覚を>
<解放されたイメージ素粒子を>
思念磁力で誘導、
現在タイムの母型へ導き入れ┃
ハイ・スピードでキーボードを叩いているとき、
宅配業者を装った生安部に踏み込まれた。
・・彼の心拍数はMAXに達した!
不幸中の幸い。
ビスケンはアンダーグランドな存在ゆえ、
新聞を始め大手メディアはスルーした。
勾留されたビスケンは、
初犯にも関わらず、
(地下に根を張るような影響力を鑑み)
20日間みっちり厳しい取り調べを受けた。
彼は断末魔をバネとする意志力を絞躍させ、
大麻入手先や記事のソースには口をつぐんだ。
刑事の執拗な追及にも耐えた。
起訴された結果・・
懲役〇年|執行猶予三年(結構キビしい)の判決が下った。
裁判期間も含め、
かれこれ二か月以上、
塀の内側に足止めを食らい、
ようやっと娑婆に戻って来れた。
取り調べ終了の際、若い刑事は捨て台詞を吐いた。
「近々また会うことになるだろうな、お前とは。
再犯率が高いんだよ、薬物と性犯罪は。今度はゲロさせてやるぜ」
・・自分より年下の刑事に《お前》呼ばわりされるのは、
けっこうな屈辱に他ならない。
━〇━
令和七年。猛暑日。
自由を得たビスケンは、
塀の外で、迎えの車に乗り込み、
出版関係を含む友人たちが催してくれた
出所祝いパーティーに参加し、人のぬくもりに触れた。
上質な酒、
トランス系の音楽、
洗練されたツマミ類・・
そこに ちゃっかり 大衆的な
コンビニギョーザやコロッケ、
さつま揚げ棒&唐揚げ棒などを、
紛れこませているのがウレしい。
親しい者と交歓する時間は、
セックスと並び、
人生の醍醐味といえるだろう。
なにものにも代えがたいのだ。
オール・ダージュ(ブランデー)を舐めながら
ビターチョコをつまんでいると、
コアな友人が寄ってきて、
「現在、巷では、
フェンタニルの話題で持ち切りだ」
意味ありげに切り出した。
ビスケンは怪訝な表情で受け止めた。
あんなもの、
以前から癌の疼痛薬 他として、
日本の医療現場では使用されていた。
なにをいまさらである。
《払うツケが大きすぎるオピオイド系は、
氏の興味の外軌道に位置していた》
アメリカで一大社会問題に発展した
オキシコンチン錠 (オキシコドン)、
その上を行く鎮痛剤ていどの認識だった。
・・どうやら浸透度・伝播力のケタが違うらしいのだ。
塀の中で情報統制されている間に、
日本の情勢は変わったらしい。
発端は・・
「R7-6月26日(木)付けの
日経新聞朝刊がスクープをかっ飛ばし、
(正確には調査報道)
そこで一気に火がついた。
名古屋を中継点として米国に、
ゾンビドラッグ=フェンタニルが密輸されていた」
・・と友人は語った。
パーティーも引け・・
自室に戻ったビスケンはPCを立ち上げ、
自身のnoteを開いた。
すると、読者からのコメント欄には、
フェンタニル関連の質問であふれ返っていた。
さっそくネット検索をかけ、
日経新聞の記事を査読。
それ以外のフェンタニル情報も
パックマン咀嚼していき、
┃ちなみに・・
当該薬物を紹介する枕言葉は
「モルヒネの百倍、
ヘロインの50倍の効力を持つ」である┃
脳内へ送り込んだ。
YouTubeには密輸ルートを追ったもので、
日経新聞とは異なる一次情報が上がっており、
「なるほどね」と うなずかされた。
ただし・・
ビスケンが欲していたのは、
フェンタニルの薬物特性に、
真正面から切り込んだものである。
紆余曲折の末、
本丸(?)にたどり着いた。
それは・・
【キメねこ】というチューバーによる、
11分強の動画だった。
シャープな展開、
アレグロ・テンポ(重要ポイントである)、
センスを感じる言葉の選択、
相当量のデータを咀嚼して、
素人にも理解しやすく作成されており、
ケチのつけようのない上がりに感じられた。
コレが無料で見られるのであれば、
こっちの商売あがったりになっちまう!
うかうかしてたら、
オレの存在価値はだだ下がり、
記事購読者も離れていってしまうに違いない。




