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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
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ミゼット再発進!③「逆因果律の巻」

彼は悩んでいた。

とても悩んでいた。

ひじょうに悩んでいた。


ローマの街をとめどなく歩き、

与えられた設問せつもんを解こうと、

頭をめぐらせていた。


英国の脚本家である彼は、

リライトのために、

ローマ・ロケによる、

ハリウッド映画製作中のP社にやとわれていた。

〈90テイクス〉と呼ばれる監督は、

脚本に対する要求もキビしく、

それは容赦ようしゃのないモノだった。

そのくせ、

無名の/ 雄鶏オンドリなんとか /とかいう

けったい(・・・・)な名前の主演女優には、変にやさしいのだ。

(おかしな話さ・・気があるのかもしれん?)


彼女の深い感受性からつむがれる演技力はみとめよう!

気品や愛嬌あいきょうにくわえ、

ペップ(元気)そなえている。

スタッフには親切だし、ユーモアもある、

でも、背が高いのがねぇ・・

竹馬たけうまに乗らなけりゃキスも出来んよ!

ダメ押しすれば・・

ムネのない女優はハリウッドでは、成功できない。

けたっていいさ!

モンローを見ればわかるだろう。

あれこそ観客をとりこにするアイコンであり、

スリーサイズ<B・W・H>から、

におい立つセックスアピールは、

世界を熱狂させ、ドルや外貨がいかかせぎ出す。

M・Mに・・

同性はアコガれをいだき、

男性はリビドーを攪拌かくはんされる。

真のスターのなせるワザ。そう、女神なのだよ。

演技力などは、しょせんつぎさ。

スターとはオーラなり!

映画の都では同義どうぎ語なのだ。


ひるがえり、

現在撮影中である映画の彼女、

(ベルギー産だったけか?)

あんな せっポチ 、どこに魅力がある?

さっぱりわからんよ!

スターになる要素(エレメント)を欠いている。

かわいそうに・・

すぐに消え去るだろうってことは、

予言の才など なくても断言できるさ。


 ┃毎週、午前5時に眠い目をこすり、

  読んでくれている、

  約10万人(ユニーク)の読者各位だって、同じ意見だろう?┃

  (ちょいと混線こんせんぎみデスな)


でも・・

まあ・・

仕事は仕事だし、

監督の依頼いらいは職務として、

たさねばならない。

巨匠はこう命じたのだ。

「王女の気品と、

 同時に

 いたずらごころ(=)茶目ちゃめっ気を、

 ワンカットで表現したい。

 ふさわしい場面を設定してほしい」


━ どうすればいいのか?

皆目かいもく見当がつかんよ。

━ こちとら出前持ちじゃねーぞ!


〇タバコをわせてみるのはどうだろう?

 ちょいと、違うよーな。

〇スクーターを無免許運転させるのはイケるか?

〇┃真実の口┃を使うのはウマい手じゃないかな?

 たがいにウソをついているダブルミーニングで。

〇ダンスパーティー会場で乱闘らんとう騒ぎになり、

 そこで王女をあばれさせるのは、やり過ぎだろうか?

 ギターかなんか持たせてさ・・


歩きつかれた彼は、

オープンカフェの席に腰を落ち着け、

コール(アイス)・コーヒーをウエイターに注文し、

タバコに火をける。

すると・・

すこし離れた席に・・

変テコな送風機を持った、

ファニーフェイスのせっポチな女の子が腰かけた。

日本人だろうか?

ちょっと洗練されている。

服の着こなしは悪くないし、

物腰ものごしもスマートだ。

モデルかな?女優かも?

極東きょくとうでは、名の知れた存在なのかもしれん。

ハリウッドでは端役はやくがせいぜいだろうな。

演技も下手へたそうだし・・

売れ線とはいえない。

モンローとは ほど遠い容姿ようしだ。

親をうらむがよい。

セックスアピールこそ至高しこうという時代なのだ、いまは。


彼は、日本のファニーフェイスへ、

軽蔑けいべつの視線を向けた。

やっぱり田舎いなかもんだ。

「シャンペン」を頼んだあと

「ストロー Please(プリーズ)!」だとさ。

けげんな顔のウエイターに、

もう一度「ストロー プリーズ」と念押ねんおし。

ワハハハハハ

どこの世界に、

シャンペンをストローで飲む やつ がいる?

ワハハハハハ

やっぱり極東きょくとうの田舎もんだ。

奇想天外きそうてんがいすぎる。

脚本家でも思いつかない展開じゃないか。

頭がオカシくなりそうだ。

誰かたすけてくれ。


せっポチは、

注文のシャンペンが運ばれると、

ニッコリとして、

えられたストローをつまみ上げた。


しおりは、

ウレしさにじませing

ストローをつまみ上げると、

はじっこを丁寧ていねいに切り取り、

少しだけストロー先を露出ろしゅつさせ、

口にくわえるや、

《あのお方》の真似をし、

いたずらっ子満開・・

フッと息を吹き込んで、

ストロー袋をフライトさせた。

ファンタスティックに宙を舞う細長いストロー紙♪


WOW(ワオ)!」

「splendid!」

脚本家はインスパイアのかみなりに打たれた。

「監督の出した設問に対する満点解答!

王女の気品と茶目っ気(=)いたずらごころ

同時に表現できるワンカット設定。

極東のお嬢さんよ、ありがとう!」

彼はタバコの包装紙をやぶいて裏返うらがえし、

素早すばやくメモを取ると、

ウェイターに伝言を告げ、

支払いを済ませ、その場を立ち去った。


汐はシャンペン酔いを心から楽しんでいた。

まさしくハイネス気分。

そんな彼女のテーブルへ、

高級シャンペンひとびんと、

多彩たさいなオードブルが、

ウェイターによって届けられた。


スィニョリーナ(お嬢さん)

先ほどお帰りになられたSignore(紳士)から、

ささやかなお礼だそうです。

どーぞ、召し上がれ!」





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