ミゼット再発進!②「アレトゥーサの巻」
21世紀から・・
20世紀へタイムトラベル・・
1952年に遡行したドクターは、
たどり着いた陽気な国の、目的地へ向かう。
むせ返るような暑さ、喧騒の直撃を、
全身で吸収・反射しつつ歩いてゆく、
サングラス姿の笹森・ヴァンドーゼン博士。
・・というよりは、レディ笹森。
彼女は、
エアコン付き冷却服と、
USB扇風機の生暖かい風、
UVコスメのおかげで、
大量発汗はかろうじて免れていた。
通りがかりの市民たちは、
ケータイ扇風機を もの珍しそうに眺め、
「Signorina、
その品は、
どこで手に入れたのですか?」
と異国語で訊ねてくる者までいた。
汐は、いかにも冗談めいた表情で、
「21世紀の Giappone ですの」
とブロークンな異国語で真実を述べる。
相手は、
ジョークのチップを貰ったように、
派手な身振りで、楽しそうに笑い、
去っていった。
生命力の坩堝のような市場を、
通りかかったレディ笹森は、
花屋のオヤジに、
市場商人の真髄というべき、
ピインポイント・ストライクで声を掛けられ、
滋味あふれる初老の笑顔と向き合った。
「スィニョリーナ、
あなたは 音楽家?
それとも絵描き?
でなければ 詩人?かい」
お腹の出っぱったオヤジ殿は、
見てくれに そぐわないフェイズを表出させ、
ふいに、詩の一節を暗唱した。
「< アレトゥーサは起き上がった・・♪ >
知っとるかな?
キーツの詩じゃよ」
「シェリー」
笑顔で否定する汐。
「キーツじゃ!」
あくまで自説を曲げないオヤジ殿。
「シェリー!」負けじと声相撲で押し返す汐。
「残念、スィニョリーナには文学的素養はないようじゃ。
けれども・・洗練されて・・bella!
(クンクン鼻を引くつかせ)
地元の娘っ子らの安化粧と違って上品な香りじゃ。
服の着こなしも洗練されとる。
きっとモデルじゃな。
そうじゃろう?」
(まあ、当たらずといえども遠からず)
うなずく汐。
レディーへ花束を差し出すフローリスト。
(親切と渾然一体化した商人魂)
受け取った花束を左手で抱え、
エレガントに右手を差し出し握手を求める汐。
(ギャー!どんピシャ状況設定。
いっぺん、やってみたかったby笹森)
とまどう花屋はズボンの裾で手汗をぬぐい、
つつしんでレディーの華奢な手を握る。
謁見終了後、
花束を抱えて立ち去ろうとするレディー。
あわてて彼女を引き止め、代金を請求するオヤジ殿。
汐は、ニッコリ微笑み、
お金を払おうと
キュロットミニのポケットに手を入れる。
(しまった、繋ぎ服に忘れてきた!)
「SORRY・・NO-MONEY・・」
すまなそうに花束を返却する、汐。
オヤジさんは花束から、
一本抜き取り、
レディーにプレゼントする。
そして、名残惜しそうに、
もじもじしながら、
好奇心を抑えきれずに、言葉をしぼり出す。
「スィニョリーナ・・
とっても言いにくいんだが・・
あんた、
よくよく見ると ファニーフェイス だ。
ひょっとしてコメディアンかい?」
汐は、
ピーンボール100万点級のおかしさをこらえ、
サングラスをはずし ウインク♡すると、
USB扇風機を地面に置き、
(パフォーマンス・ギアをセコンドに入れ)
表情を瞬く間にスイッチさせた。
中腰になり、
両手をぴたりと側面に固定、
前傾姿勢で、
前後にせわしなく首を動かし、
ニワトリの動作を 誇張 してみせ、
天に向かって(トップギア!)
・・「コケコッコー♪」
・・「コケコッコー♪」
・・「コケコッコー♪」
鳴き声三連発を披露した。
花屋のオヤジは、
「やっぱりねェ!」という表情で、
腹をかかえ、
涙を流し、死ぬほど笑いころげた。
一輪の花を手にした汐は、
ふたたびサングラスをかけ、
USB扇風機を拾い上げると、
一目散にその場を離れ、
駆け足でサイフを取りに戻った。
そうです・・
ここ1952年夏のローマでは、
《あのお方》の名を、
一躍有名にした映画のロケが行われているのデス。
キーツorシェリー問題の解答。
『アレトゥーサ』はシェリーの詩でありますゾ。
つまり・・
新聞記者が正しく、
《あのお方》は間違えたのでありマス。
花屋のオヤジさんも、ご同様でした。




