ミゼット再発進!
「本番、よーい スタート!」
乙骨Pのキュー出し。
シンクロするよう NC15スタジオ 内外に、
recording(録音中)の赤ランプが灯った。
━[笹森汐企画]
『1952年・夏/いただきマンモス』━ 収録開始!
汐のヴォイスによるナレーションと、
BGM・効果音で織りなされるプロローグ。
◇ ━ ◇ ━ ◇ ━ ◇ ━ ◇ ━ ◇ ━ ◇
太陽放射は、波長の異る七色の光を重ね、
目の醒めるような青空を現出させていた。
陽炎揺れる屋外コートでは、
ポーン!ポーン!と心地よい音を響かせ、
町内会対抗戦という名の、
白熱したテニスゲーム(決勝戦)が行われていた。
笹森ヴァン・ドーゼン博士は、
ポロシャツ&ショートパンツ姿で、
コートネット真横端のポジションにて、
短距離走者を思わせる、
両手を地面につけたクラウチング・スタート姿勢をとり、
アドレナリン限界量放出中のアタック表情で、
滴る汗をやり過ごし、
コート上、自身の担当する ポイントぐるり に、焦点を合わせ、
ボールパーソンのボランティアを懸命にこなしていた。
力いっぱい放たれたサーブボールが
ネットストラップに触れ、ポトン ↓ と真下に落ちた。
GO!ダッシュした博士は、
忍者のような素早い動きでボールを拾い上げ、
向こう側へ駆けぬける。
攣りそうになる足を軽くほぐして、
回れ右、
反対側ポジションで再び同姿勢をとる。
五つも博士号を持っている鬼才・ドクター笹森。
彼女が、なぜ、ボールパーソンを務めているのか?
・・いまは言えない・・
その謎は、追い追い、明らかになるだろう。
町内会の打ち上げを終えた博士は、
したたか聞こし召して、
La Vie en rose♪を口ずさみながら(汐のアドリブ)、
千鳥足で研究室兼自宅に戻った。
シャワーを浴び、
軽いストレッチをしたのち、
ピラミッド型をした仄暗い瞑想スペースへ入る。
ヒーリング系の静音に包まれ、
座禅を組み、
交差する思考を解きほぐし、
ニュートラル・ゼロへ目盛りを合わせ、
次なる計画を、偉大な頭脳で反すうした。
掛けがえのない<相棒ミゼット>との新たなる時間 (過去)旅行。
その遠征先は「1952年/夏」とターゲットを定めていた。
翌朝・・
ついに 旅立ちのときが来た。
白のつなぎ服を着用した、
笹森ヴァン・ドゥーゼン博士は、
曙に向かって、
気合い注入の 雌たけび!を上げた。
そうして、
出発準備にとりかかる。
扇札勘など出来ないほど、
ペラい旧当該国マネー(お札)を
財布とハンドバッグ双方に仕舞う。
繋ぎのファスナーポケットに財布を入れ、
チャックを閉じる。
猛暑対策のために、
車のバッテリーから充電可能な
エアコン付き冷却服をつなぎ服の上に着用。
夏用のファンデーションや、USB扇風機、
冷えロン、クール・ネックリング、
ミネラルウォーター、着替え、
強力サプリメント、
小型(高倍率)双眼鏡などをボストンバッグに収納すると、
後部座席へ そっと置いた。
マシーン・タイムを ┃1952年X月X日┃
次いで、座標を ┃北緯41度54分 東経12度┃近辺にセット。
長年の相棒である三輪自動車の運転席へ、
気圧 緩衝イヤープラグをした博士は、
スリムな身体をすべり込ませた。
ハンドルを握る。
路地まで進み、
前・後方確認。
唾液をゴクリとのむ。
リヴァース ギアを入れる。
せまい路地をひたすらバックしていくミゼット。
(サスペンスフルなBGM♪)
加速するにつれ、気圧は急上昇。
引きつる小顔。逆立つ髪の毛。
耳キーン状態。
音高デシベルは増幅され、臨海 突破。
(エッヂの効いたノイズサウンド)
総計は短いタイム・・
しかし主観時間は長く感じられる、
時空のトンネルを一閃抜けした!
今回はへまをせず、
目的国の一般道へ、
スイと現れたミゼット。
他の車の流れにムリなく乗り、
スムースに脇へ逸れ・・減速・・
目的地の近傍に停車させた。
サイドガラスを手動式ハンドルで開くと、
凄ざましい騒音と熱波、常識外の暑さで、
心身のチューニングが不協和を起こした。
「ヒック!ヒック!」と、
しゃっくり を連発する博士。
魔の永久運動を止めるべく、
あわてて後部席に置いたバッグのチャックを開き、
ミネラルウォーターを引っぱり出す。
一気飲みで、しゃっくりを撃退した。
「こりゃたまらん、
なんという暑さ!
なんという街のヴァイタリティ―!
圧し潰されそう!」
博士はサイドガラスを閉じ、
数多の発明品のひとつで、
目下BF社に売り込み中の新装置を稼働させるべく、
メーター横に取り付けたスイッチをON。
すると、あらあら不思議?!
またたく間に、車内は、透過率0%にブラインドされた。
(レディーのたしなみを守るためデス)
つなぎ服を車内でボーイッシュに脱ぎ捨て、
夏服に着替え、
その上から冷却服を装着。
さらに、強壮成分のあるサプリメントを服用した。
車内透過率を50パーセントまで上昇させる。
UVケアの化粧でおめかしすると、
小型双眼鏡をキュロット・ミニのポケットへ忍ばせる。
サングラスをかけた博士は、
車から降り、
目的地に向かう前に、
ぜひとも寄りたかった、
エリアへ、
胸躍らせながら、
USB扇風機を片手に歩みを進めていく。




