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哉カナⅡ/18歳  作者: カレーライスと福神漬
21/90

分岐と融合の果て

番組制作の準備段階では、

脚本家とADが手分てわけして、

書籍などの活字資料は言うにおよばず、

出来うる限りの音源を、

局のレコード室・通販サイト・動画サイトから、

かき集めた。

ネットオークションを使い海賊盤(ブートレッグ) まで入手。


それらの素材を土台に脚本家チームは、

<クランベリー いちご >という、

ナッシング(Nothing)イズ(Is)リアル(Real)な曲の誕生を、

時系列を無視ムシして自在に構築こうちくしていった。


しおり (Dr笹森)は、

狂言回きょうげんまわし でありながら、

ときに、

曲作りの中心人物の内面へ大胆だいたんにも立ち入り、

主観と客観をまじえ、

多声的にナビゲートしていく役どころである。

彼女は、いつもとは別種べっしゅの真剣さで、

マイクに向かっていた。

アドリブは極力(きょくりょく)控えた、

いな・・ひかえざるをえなかった。


テイクワンの鼻歌っぽい魅惑的なマテリアルから、

漸次ぜんじ 形をし、

美しい曲として生まれ出た<クランベリー いちご>。

通常のソングライティングならば、

めでたし、めでたしという結末だ。

しかし、誕生した美形の赤ん坊は、

ここから実に数奇すうきな運命をたどることになる。

ワインディングロードの始まりだ。

バラード調の美しい曲を

グループの有能パートナーと手を加えているうちに、

自然かつ異様な成長をげ、

ヘヴィーでサイケデリック調な曲に、

変貌へんぼうしていく。


この段階で、

まだゴールテープは見えて来ない。


原曲げんきょくは、

二つの曲に分岐ぶんきがなされ。

あろうことか、同じDNA(遺伝子)を持つ、

双子ふたごナンバー(楽曲)が生れ出てしまった。

ソフトなA曲とハードなZ曲 。


A ━ スロー調ノスタルジック

   (詩を具現化した秀逸なメロトロンの響き+他etc)。

Z ━ 狂騒きょうそう的サイケデリック

   (81秒からの音色(マジック)+逆回転ハイハット他etc)。


聴き比べてみると、どちらも素晴らしい。

こうおつ つけがたいのだ。

レコードに採用されるのは[一曲(いっきょく)]のみ。

決定権はソングライターに一任(いちにん)されている。


プロデューサーは、

「Aにするかい、Zもいいね。どうする?」

こんなことは、

グループの歴史上初めてのことだった。


ソングライターは考えた。

/思索の森を彷徨さまよ

 革新的なヒラメきを得た/


「よし!

 双子ふたご一人ひとりの人物にしてしまおう」

すなわちゲノム操作(編集)である。

1966年末の時点で、この発想が出た☆

ただし具体策は、まったくない。


ソングライターは、

いつものようにプロデューサーに ゴリ押し した。

「AとZをつなげて┃ひとつの曲┃にして欲しい」と。


「それぞれ キー も テンポ も違うから不可能」困惑こんわくのP。


「あなたなら出来るさ」丸投げ。


プロデューサーはアーティストの要求を、

頭ごなしに却下する傲慢ごうまんさは持たない。

のちにSir(サー)の栄誉称号を受ける、

人柄・能力ともに折り紙付きの人物である。

凄腕すごうでエンジニアと連携れんけいしてゲノム操作(編集)に着手する。

4トラックレコーダーを使用。

トライ&エラーのすえ

可変かへん速度そくどコントロールを実行。

電気信号を操作そうさして、

音のスピードを慎重しんちょうあやつってゆく。

スローなAの速度をUP↑

狂騒Zの速度をダウン↓させ、

繊細せんさいな調整を行い、

キーとテンポに補正ほせいを加えてゆく。

すると、2コーラス目でミラクル(・・・・)が起こった。

AとZ=双子ふたご融合ゆうごうされ、

一人のアメージングな存在として転生てんしょうしたのだ。

マスターピースの完成である。

ゲノム操作(編集)により、

前代未聞ぜんだいみもん ━ 音のミュータントが降誕こうたんした。


満足した表情でミゼットに乗り込み、

ロンドンのスタジオを去っていく、

笹森ヴァン・ドーゼン博士。


ドラマのエンディングで、

<クランベリー いちご>の、

完成版が、フルオンエアされる。


『<クランベリー いちご>1966のミラクル』

 

 ━ THE END ━




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