第7話 ボス
あけましておめでとうございます!
今年も宜しくお願いします^^
「勇者様達は順調なのかアクマよ」
「ええ、それはもう順調です。2日目にして現在2組のPTが7階にいます。残りの2組は5階と6階にいますよ」
「そうか。それにしてもその魔法は素晴らしいな。行ったことのある階層を見通す魔法があるとは知らなかったぞ」
「クフフフ、それも正解ですが詳しい事は説明できません。一応私だけの魔法ですよ。他の人は絶対に持ってないでしょう」
ふむ、その魔法がますます気になるが、これ以上は探らないでおこう。この件は全てアクマに任せればあの隆介というEランクを始末できる。この私が信用できる人物に任せればな。
「そうか、明日にはあのEランクを始末できるんだろ?期待してるぞアクマ」
「ええ、期待しててください。必ず始末しますよ。それもとびっきり凄い物で。クフフフ」
アクマは王室のソファーから立ち上がり、不気味な笑みを浮かべて去っていった。
天草隆介…お前は明日アクマによって始末される。フ、フハハハハ!Eランク何ぞ存在する価値は一切ない!殺すか売る!その程度の扱いで十分だ!私の国はC以上でないとな?だがそれだけだと国が襲われた時に盾となる者がいない。そこでEからD+の奴らをあえて壁の隅に追いやることで肉壁となるのだ!頭が良すぎるのも罪だな。ハハハハ!天草隆介、この国の為に死ねる事を誇りに思うがいい。最高ランクAの国で死ねる事を。
「フハハハハ!」
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名:ゴブリン・ソーサラー ランクE+
性別:オス
魔法:〈火魔法E〉
ユニーク魔法:なし
称号:なし
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「はぁ!」
「グギャー!」
「ふぅ〜もうゴブリンは飽きました。弱すぎます。ソードマンさんやソーサラーさんは名前が違うだけの雑魚にすぎません」
「さっすが豪華さん!戦闘後もかっこよすぎです!俺も尊敬しますよ!」「豪華さんみたいなイケメンは、戦い方までイケメンだなんて!流石です!」
爽やかな笑顔で、前髪をサッと後ろにやる感じで格好をつけた豪華を取り巻き2人は褒めまくってヨイショをしていた。
今俺達は7階層にいて、戦闘しつつも次の階目指して歩いている所だ。と言ってもずっと前の3人が倒してるけど。あっ、それと道中初めて1PTと出会ったよ。休憩中だったのかテントが7人分建てられてた。声をかけるのも悪いと思って俺達はスルーしようとしとけどあいつら3人が声をかけるもんだからテントから出てきた男子達は不機嫌そうだったよ。けど直ぐ豪華だと分かると媚を売るようにニコニコしてたのがなんとも言えない。オタク2人が特に媚ってたな。
「ありがとう2人とも。この私がかっこよくてイケメンなのはもう昔から分かってることです。さて、そろそろ狩は飽きてきたので鈴菜さん達に任せます」
後ろを振り返って鈴菜達の元に3人は歩いてきて、次の戦闘は4人に任せると言って、再度振り返り歩いて行った。
ようやく俺たちの番か。と言っても俺は何もできないから3人だけだけどね…いや、ナイフがあるから俺も戦ってみるのもいいな。一度でも戦闘経験しとかないとこれからが大変だし、身を守る為と鈴菜達を守れるようにしないと。
「やっと私達の出番みたいね。初めての戦闘で人型っていうのもやりにくいけどこれから先の事を考えると倒さないとダメよね」
「う〜僕はちょと無理かも」
「美菜さんに同意」
「俺は鈴菜に同意だな。これから先の事を考えると倒さないといけない相手でもあるからな。勿論俺も戦うよこのナイフで」
「ダメよ!」
「「ダ、ダメ!」」
「えっ!?」
鈴菜は先の事を考えてゴブリンを倒すつもりだが、美菜と春香は人型ということもあり少し嫌な顔をしていた。その時に隆介が自分もやると言った為、鈴菜と嫌な顔をしていた2人は隆介の言葉にはぁ!となり、慌ててダメと言いった。
何で!俺もしかして頼らないと思われてる?まじか…やろうと思えば多分できるよ!
「何でダメなんだ?」
「隆介に何かあったら大変だもの」
「鈴菜の言う通りだよ!僕達が頑張るから見てて隆介!」
「僕は結界を張って隆介君を守ってるよ。僕の持ってる魔法は支援系しかないから2人に任せちゃうことになるけどお願いね?」
「ええ、分かったわ。春香君は隆介を全力で守ってね?擦り傷を一つもつけちゃダメよ?もし、そんな相手がいたら私が消炭にしてあげるから」
俺どんだけ心配されてんだよ…。男として恥ずかしい。でもここはダメだ!戦闘を積まないと何も始まらない!一度戦って感覚を掴まないとこれから先何かあったら何もできなくなる。
「3人ともそう言ってくれるのは嬉しいよ。だけど俺も経験を積まないことにはこれから先自分の身を守ったり、人を守れなくなるから俺にもやらせてほしい。もしこの世界に慣れなかったら俺は怯えて死ぬだけだしな。だから俺にも倒させてほしい」
隆介は真剣な顔をして3人の顔を見ていくと、何を言っても無駄だと思った3人はため息を吐いて、真剣な顔をして隆介の事を見る。
「分かったわ。ただし危険だと思ったら私達が倒すわよ?」
「うんうん!隆介の戦ってる姿を一度見てみたいし僕から許可しよう!」
「あははは…。美菜さんは相変わらずだね。隆介君に何かあったら全力で治すね!」
「ありがとう3人共。さて、この先の角を曲がったら出てくるはずだから気を引き締めよう」
「「「えっ?」」」
おとと、また口が滑った。けど5秒間しか場所を特定できなかったから移動されたら特定できないのが不便。ならもう一度発動すればと思うけど今の魔力量だともたない。
豪華達を先頭に突き当たりまで行き右に曲がるとそこには4体のゴブリンが固まってキョロキョロしていた。
「でましたよ!では任せますね鈴菜さん達!私達は少し先で待っております」
ゴブリン2体、ゴブリン・ソードマン2体を優雅に歩きながら無視して通り過ぎていく3人はその先の曲がり角を曲がっていった。
4体のゴブリンは、3人に攻撃を加えていたが豪華の〈結界〉により、全て弾かれ疲れ切っていた。
「さて、4体の内3体は鈴菜達にお願いするよ。俺は残りの1体を相手する」
「そうね、ちょうど4体いるし1体ずつ相手できるわね」
「よーし!僕の魔法喰らえ!」
「美菜さん!?」
「「「グギャー!」」」
「「「………」」」
言ったそばから美菜は雷魔法をうまく操り、ゴブリン2体、ゴブリン・ソードマン1体を倒してしまった為、沈黙が流れる。そんな中美菜だけは、腕を組んでドヤ顔をしていた。
「よし!後はあの一体だけけだよ隆介!頑張って!」
「お、おう。鈴菜と春香は良かったのか?」ボソッ
「え、え〜いいんじゃないかしら?」ボソッ
「そ、そうだね。次出たら倒すよ」ボソッ
「3人で何話してるの!あっ!ほらこっちに向かってきてるよ!隆介倒しちゃて!」
「分かったよ美菜」
3人でヒソヒソと話していたら、美菜が大声を出してゴブリン・ソードマンが近づいてきている事を隆介に伝える。ゴブリン・ソードマンは仲間を殺られて怒ったのか、剣を振り回しながらこちらに向かって走ってきている。
さて、このゴブリンとどこまで俺は戦えるかな?ナイフだけでどうにかできるかなあの鉄剣を。
隆介は腰につけていたナイフを抜くと、向かってくるゴブリン・ソードマンの鉄剣とナイフが交じり合う。
「ギャギャ!!」
カキーン!
「うぉ!?」
これがランク差ってやつか!1つランクが違うだけでも押し負けるとかこの世界のバランスが分からん。
ゴブリン・ソードマンは勝てると思ったのか、ニヤリと嫌な笑みを浮かべてギャギャ言っていた。
「あのやろー俺のこと馬鹿にしてるな。でも挑発にはならないぞ」
「隆介頑張ってー!」
「気をつけてね!」
「油断は禁物よ」
「おう!もし俺が負けて倒れたら後はよろしくな!」
「「「変なこと言わない!」」」
「はい…」
再度ナイフを構えて次は隆介の方から走ってゴブリン・ソードマンの方に向かう。
冗談で言ったけどさすがに怒られたか。次から気をつけよ。さて、まずは目の前のゴブリンを倒して先に進むか。
「同じ攻撃パターンだと俺を倒せないぞ!」
「ギャ!」
走ってゴブリン・ソードマンの方に行き、全力でナイフを振り下ろすが鉄剣でガードされ弾かれてしまう。だが…。
「そこだ!」
「グギャー!」
弾かれてバランスを崩してしまったが、次の攻撃パターンが同じだった為〈万能〉が自動的に発動し、体が勝手に避けてくれる。そのおかげで首のギリギリの所で回避し、ゴブリン・ソードマンが油断してる隙にナイフで首を切断した。
「ふぅ〜このスキルが無かったら死んでたな」ボソッ
「かっこよかったよ隆介!」
「ええ、中々良かったわよ」
「隆介君って凄いね!ギリギリの所はヒヤヒヤしたけどあの動きは僕でもできないよ!」
消えていくゴブリン・ソードマンを眺めていると、後ろから美菜、鈴菜、春香が笑顔で近づいてきて隆介を褒めまくっていた。
こう言われると恥ずかしいな。最後のあの動きは確かに俺でもできん。万能スキルが俺の体を動かしてゴブリンの攻撃を自動的に避けてくれたおかげで助かったんだし。兎に角このスキルについてもどうせ全部言うから見せてもいいか。今は豪華達がいるから言わないけど。
「いや〜素晴らしい!あの動きはまるでダンスのように美しい回避でしたよ!ですがこの私には絶対に敵いませんがね!」
「そりゃーどうも」
先に進んでいた豪華達3人がこちらに向かってきて、拍手をしながら隆介達の元まで歩いてきた。そんな豪華に隆介は少しイラッときたが、悪い事を言った訳じゃない為素直に返事をする。
お前のスキルから取ったやつだよ。とは言わない。
「では先に進みましょう。この後の戦闘は全て鈴菜さん達に任せます。残り3階ですので張り切っていきましょう。おっと言い忘れてましたが私達3人は後ろを着いて行くので進む道は前の4人に任せます」
「分かったわ豪華さん。説明ありがとう」
鈴菜だけが答えて、4人は前に進んでいく。豪華達3人は前が歩き出すと距離を少し開けて着いてくる。
今のところ怪しい動きはないしいいか。それに悔しいけど指示が上手いから何も返す言葉がない。ここは従っておくのがベストだな。
その後は鈴菜、美菜、春香、隆介の順番で出会ったゴブリン達を倒していくが流石に隆介は、ナイフ一本で2体以上は相手にできない為鈴菜達に数を減らしてもらい、一対二で戦っている。殆どのゴブリンの動きは基本同じな為、自動的に〈万能〉が発動して、スムーズに倒すことができる。
「これでラストっと!」
「グギャー!」
「お疲れ様隆介。やっとこれで10階に着くわね。それにかっこよかったわよ」
「お疲れ様!もう僕くたくただよ!魔法放ってると自分の中にある魔力だっけ?が無くなって体が重たいよ…。でも!隆介のかっこいいところが見れて良かった!」
「お疲れ様隆介君。僕も今日はくたくただよ…。早く10階に行って休憩しよ。僕も隆介君が戦ってる姿良かったよ!」
「3人ともありがとな。でも3人のお陰でスムーズに倒すことができたから本当に感謝してるよ。もう一度、ありがとう」
ゴブリンを倒した先には青色に光るワープポイントが出現していたのでナイフを腰にしまって歩きだす。勿論後ろからは豪華とその取り巻きがついて来る。
「よし、入るぞ」
「ええ」
「早く休憩したい!」
「そうだね美菜さん」
隆介達と豪華達は、ワープポイントの真ん中に入ると一瞬にして視界が歪み、次の階に飛ばされる。
「デッカー!」
「大きいわね」
「わ〜!」
「大きいから開ける時に重そうだね!」
10階にワープすると、4人の目の前には何人かで押さないと開かないような大きな鉄の扉が立っており、それを見た4人は驚いていた。その後ろでは豪華達がテントの用意をし始めている。
いや、豪華達も驚こうよ。何普通の顔してテント建ててんだよ。と言いたいところだけどそういやー金谷家の門ってこんぐらいだったな。そりゃービックリもしんわ。取り巻き達も普通の顔してるし家に行ったことがあるな。俺の予想だけど。
そんな事を考えていると豪華達3人がこちらに向かってきて、アイテムバックを鈴菜に渡す。
「いや〜まさか私達が一番でしたか。ま、そんなことは当たり前ですか。何たってこの真の勇者がいますからね!」
「よぉ!豪華さん!」「流石です!」
「「「「……」」」」
まーいいや。俺達もテント建てて今日は休憩するか。あ〜こんな余裕があるなら全部〈ランク操作〉に振るんじゃなかった。
「どうかしたかしら隆介?」
「いや何でもないよ」
「そう」
今更だし落ち込んでもしょうがない。明日はもっと考えて振らないとな。迷宮探索が終わったらでもゆっくり考えて振るか。
豪華達3人が設置し終わったらこちらにアイテムバックを渡しに来たのでそれを鈴菜が受け取る。
「美菜、明日の朝は隆介の所に行っちゃダメよ?他の人もいるんだから。それに今もよ?」
「えー!なんでー!」
「えーて、美菜分かってる?明日は皆んながいるのよ?その中で隆介のテントから出てきたら騒ぎになるわ。今も入るのはいいけど出る時に他の班が来たらどう対処するの?」
「うっ…それは確かに…」
「分かったら我慢しなさい。さて、私達も明日に備えて休みましょう」
「う〜分かったよ!」
「分かった鈴菜さん」
「あいよ。美菜も1日ぐらいなら問題ないだろ?」
「うん…」
各自テントの中に入っていき、休憩をする。入る時に美菜は隆介の方を見て、少し寂しそうな顔をしていたが直ぐに中に入っていった。
「よいしょと」
『浄化のリング』で体や服を綺麗にした後、ベットの上に大の字で寝転がる。
ふぅ〜今日はなんか疲れたな。初めての戦闘でヒヤヒヤしたけど何とか生きた。にしてもこれがランク差ってやつか。ゴブリンのランクがE+に対して俺はオールE。一つ違うだけでも押される程の強さ。本当に万能スキルが無かったら今頃死んでたな。とと、いけないいけない。ネガティブな思考はやめだ。今は弱いけどいつか強くなって鈴菜達の役に立てるやつにしないと。いつまでも守ってもらう側だと情けないしな男として。
「悩んでても仕方ない!てことで今日の分の[〈神眼〉保留選択!]」
〈承知しました。表示します〉
〈火魔法E〉
〈闇魔法E〉
〈探知妨害E〉
〈王の威圧_〉
〈光魔法E〉
〈聖剣召喚_〉
〈自動範囲回復E〉
〈土魔法E〉
〈風魔法E〉
さてさて、どれにしようかな〜。今の時点で魔法は雷魔法のみだしここは二つ魔法を習得しておくか。闇魔法と土魔法でいいかな?闇魔法は妨害系で使えると思うし、土魔法は簡単な家を作れるだろうし、この2つでいいか。[選択〈闇魔法〉と〈土魔法〉!]
〈承知しました。〈闇魔法E〉〈土魔法E〉を獲得します〉0/2
こんでいいかな今日は。気になったけど俺のステータス今どうなってんだろ?余り変わってないのかな?ゴブリンを何体か倒しているから一つでも上がってればいいけど。一応見てみるか。
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名:天草隆介 年齢15歳
性別:男
種族:人間
ランク:E
体力:E
魔力:E+
腕力:E
敏捷:E
防御:E
魔防:E
運: E
魔法:〈雷魔法E〉〈闇魔法E〉〈土魔法E〉
ユニーク魔法:〈鑑定SSS〉〈偽造SSS〉〈結界E+〉〈万能_〉〈危機探知E〉〈多言語理解_〉
〇☆◇#€*□:〈ランク操作S〉〈無限収納_〉〈神眼_〉
称号:〈転移者〉〈SSS習得者〉〈ランク操作する者〉〈創造神の寵愛〉
加護:〈創造神の加護〉
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ランクに変化はなし。ゴブリンを何体か倒して上がってないってことはもっと倒さないといけないのか、それともランク操作でランクを上げない限り上がらないかの2つだな。他の人がどうかは知らんけど。兎に角明日は12もUPできるから魔法以外でも振ってみるか。
自分のステータスを閉じてゴロゴロとしていると、疲れが溜まっているせいかウトウトして、そのままご飯を食べずに寝てしまった。
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早く…誰……私を……。
「うっ…またか…。一体誰なんだ」
女性の声が頭に響いて目を覚ました隆介は、頭を押さえながらベットから起き上がる。
昨日もそうだったけどこの声は一体誰なんだ?何か苦しそうだったけど俺以外でも聞いてる人がいるのかどうか。それとも俺だけなのか?終わったら聞いてみるか。
朝ご飯を食べてゆっくりとしていると、外から同級生達の声が聞こえた為、隆介はテントから出る。するとそこには他の班も到着していたようで豪華を中心とした話し合いが各班のリーダー達で始まっていた。
勿論俺たちのリーダーは豪華となっている。
「皆さんおはようございます!今日がボスの討伐日です!着いたばかりの班もあるようですがすみません。ボス討伐時刻は現在7時30分ですのでここから30分後の8時からとさせていただきます!反対の人はいませんか?」
各班のリーダーを見渡して反対の人がいないかを確認する。
そりゃー誰も反対なんかしないわな。豪華は殆どの人から信用されてる存在だしリーダーシップとしても万能だから従うのが一番だと思ってる人が多いし。
「では各班のリーダーは皆さんに伝えるようにお願いします。先ほど来られた班の方達はゆっくりとしたい気持ちもあるかもしれません。ですがここはこの私に免じて許してくれないでしょうか?いち早くボスを討伐して、帰ったら皆様が何日か休憩を取れるように王様に伝えます。勿論城下町の散歩などゆっくりとできるようにも伝えますね。では8時までは各自自由にしてください。それでは解散!」
豪華が解散と言うと各班のリーダーは自分の班に伝えに各自のテントに向かっていく。
30分もあれば何とかスキルだけは『おはよう隆介!僕がいなくて寂しかった?ねえねえ!』『おはよう隆介。美菜、隆介が困るからやめなさい』『おはよう隆介君』取れそうだな。おっ?3人も起きてきたのか。ならこれも迷宮探索が終わってからだな。
「おはよう3人とも。そうだな、いつもみたいに朝美菜がいなかったから寂しかったよ」
美菜の頭を優しくポンポンとするとえへへと顔を赤らめながら嬉しそうにしていた。そんな光景を見ていた2人はジトーと隆介のことを見ていた。
「なんだ2人とも?」
「私だってしてほしいのに美菜ばかりずるいわ…」ボソッ
「いいな」ボソッ
「なんか言ったか?」
「何でもないわ。本当隆介は美菜に甘いわね。ロリコンじゃないか心配になるわ」
「だから違うから!」
「隆介君?」
「ちょ春香まで!本当に違うから!」
朝からそんな会話をしていると豪華と取り巻き達が4人の元まで来て、挨拶をする。
「おはよう美しきレディー鈴菜さん、美菜さん!可愛らしい男子の春香君!ついでに隆介君!」
「おはようございます!今日もクールで美しいですよ剣崎さん!」「おはようございます!朝から天使な柏原さんを拝めるなんてもう最高!」
「「「おはよう…」」」
鈴菜、美菜、春香の3人は、いつもはちゃんと返事を返すが流石に3人の挨拶がキモかったのか言葉には出さずに、顔を引きつられながら返事をした。
俺も一瞬ゾワってきたものがあったよ。何だろうね?
その後はテントを片付けたり準備しているとちょうど8時になったので豪華が扉の前に行き、両手を腰につけていた。
「では!ボス討伐を始めます!の前に万が一に備えてアクマ・デース様がいらっしゃっています!」
いつの間に来てたのか!?全く気づかんかった!
「クフフフ、皆さんおはようございます。今日は宜しくお願いします。早速ですが私は万が一勇者様達に何かあったらそれを即対処できるよう来ています。何故私がここにいるのかと疑問に思う方もいるでしょうが転移結晶と言う迷宮限定でしか使えないアイテムを持っているからです。この転移結晶はとても高価なので本来余り使わないのですが勇者様達の為ならいくらでも使いますよ。おっと話がそれました。クフフフ。さてさて、今回討伐してもらうのはゴブリン・ロードです。一体だけではありませんよ?それを取り巻くゴブリン・ジェネラル、ゴブリン・ヒーラー、ゴブリン・ナイト、などがいますので分別して戦うのがオススメです。因みにここは初心者専用の迷宮の為、ゴブリン達は階段より上に上がって来れないので、安全エリアも一応あります。ですが向こう側とこちら側の攻撃は一切通らないのでズルはできませんよ?これで私からの説明は終わります。クフフフ」
説明が終わるとススト横にずれて、皆んなを見渡していた。だがアクマは隆介を見つけるとニヤッとして不吉な笑みを浮かべている。
「では入る前に私が今指示を出します!まず私達のPTがゴブリン・ロードさんとジェネナルさんを相手します!他の3PTはその取り巻きを倒していただけたらと!次に回復魔法が使える方を一番後ろにしてください!それと今私以外の剣士がいないのでもし支援系の魔法が使える方がいれば即対応できるよう準備をお願いします!攻撃魔法に特化している方は全力で魔法をゴブリンさん達にぶつけてください!ドロップ品に関してはアクマ・デース様が管理しますので申し訳ないですがないと言う事です。以上!では扉を開けてください!」
豪華が合図を出すと、両扉に豪華に従う男子達全員が(隆介と春香は含まない)一気に扉を押す。すると扉をがゆっくりと開いていき、目の前には暗闇の部屋が見えてきた。
「では行くぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
豪華が合図をするとともに皆んなが一斉に扉の中に入っていく。
「俺達も行こうか」
「ええ」
「すぐに終わらせてお風呂!」
「うん!」
4人も皆んなの後ろに続いて走って扉の先の暗闇に入っていかと、扉がいきなり閉まり、暗かった部屋に明かりが順番についていく。そして全ての明かりが点灯した瞬間…
「グギャー!!」
「ギャー!」
「ギャギャ!」
とても大きなドーム状の部屋の中には体が他のゴブリンより一番大きく、鉄の鎧と兜を着て、大きな分厚い鉄の大剣を持っているゴブリン・ロードが一体、その隣に、二番目に大きく、同じく鉄の鎧を着て、二本の細長い剣を持ったゴブリン・ジェネナルが2体、小さなロッドを持ったゴブリン・ヒーラーがその3体の後ろに4体、鉄剣と四角い鉄の盾、皮の鎧と兜を被ったゴブリン・ナイトが一番前に6体、その後にソードマン、ソーサラー、アーチャー、シャーマンなどが約10体以上が待ち構えていた。
「では皆さん武運を!行くぞ!聖剣召喚!」
豪華の合図とともにに4人以外の皆んなが一斉にゴブリン達の元に走っていき、戦闘を開始する。
一応ゴブリン・ロードとヒーラーだけでも見とくか。なんかいいスキル取れそうだし。えっ?俺だけ呑気だって?そりゃー何もやる事ないし足手まといにしかならんから俺はこの安全エリアで皆んなを見守ると言うお仕事です。自分で言っときながら最低だな。
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名:ゴブリン・ロード ランクC
性別:オス
魔法:〈火魔法D+〉〈土魔法D〉
ユニーク魔法:〈威圧D〉〈狂気化_〉
称号:〈ゴブリンを纏める者〉〈初心迷宮10階ボス〉
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名:ゴブリン・ヒーラー ランクD
性別:オス
魔法:〈回復魔法D〉
ユニーク魔法:〈回復強化D〉
称号:なし
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〈威圧を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
〈狂気化を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
〈回復魔法を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
〈回復強化を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
全部保留でお願いします。
〈承知しました。保留に移動します〉11/∞
回復魔法ゲット!これで皆んなの役に立てるな!それに回復魔法をSSSまで上げるとどうなるのかやってみるのもいいな!…うん?鈴菜達は行かないのか?
「3人は行かないのか?」
「どうしてかしら?」
「うん?」
「えっと…」
「いや、ボス戦で皆んなが戦ってるのにいいのかな〜と思って。俺はどちみち役に立たないからこの階段の上で待ってるよ」
「そうね〜…なら行こうかしら。でもちゃんとここにいてね?春香君は一応ここに残って本当に大丈夫か残ってくれるかしら?それに前も言ったでしょ?隆介がいるだけでも変わる」
「鈴菜の言う通りだよ隆介!よーし!隆介の為に早く終わらせて来るね!レッツゴー!」
「その通りだよ隆介君。隆介君がいるだけでも僕達は安心できるし変わる。鈴菜さん、任されました」
「なら行ってくるわね」
「おう!気をつけてな!
美菜は走って豪華達の元に向かい、鈴菜はゆっくりと歩きながら美菜の後を追う。
「おりゃー!」
バリバリバリバリ!
「ギャギャー!?」
美菜は早速両手を前にかざして雷魔法を発動させると、ジェネナルの頭上から雷が数発落ちてくる。
おー美菜の雷魔法すげーな!バンバンジェネナルに浴びせてるよ。でも流石と言うべきかジェネナルも美菜の魔法を何とか耐えたけどボロボロだな。んで鈴菜はと言うと…おー!風の刃を飛ばして攻撃してるのか!…うん?よく見るとあのジェネナル少し濡れてないか?あ、なるほどな。風の刃に水を含んでジェネナルを風の刃で傷付け、その傷口に水を付着させる事で美菜の支援をしてたのか!よく計算されてる攻撃だな。水は電気をよく通すから相手の傷口にあえて水を付着させる事で感電させて大ダメージを与えるってわけか。流石鈴菜だな。
「うーん!中々歯応えがあるではないですか!剣捌きもそこらの雑魚ゴブリンより素晴らしいですねー!ですがまだまだ甘いですよ?君達2人はロードさんの両足を狙って魔法を放って下さい。その後体勢が崩れると思いますので私が一気に攻撃をして止めを刺します」
おっ?豪華達はもう終わりそうだな。だけど油断したらいくら豪華だろうと死ぬぞ?あのゴブリン・ロードの持っているスキル〈狂気化〉が発動したら強化されて更に強くなるからな。何で知ってるか?そんなもん何となくさ。
「これで終わりですロードさん!」
「グギャギャギャ…ギャー!」
「おっと!何ですか何ですか!」
「ギャーーー!」
あーあーやっぱりな。暴走し始めたよ。
豪華が倒れ込んでいるゴブリン・ロードに止めを刺そうとした瞬間、ゴブリン・ロードの周りには高濃度な魔力が集まっていき、それを吸収した瞬間全身の筋肉が向上し、悲鳴を上げながら暴走を始めた。
「皆さん!一旦私の後ろに下がってください!この状況は危険です!」
豪華は一旦全員を自分の後ろに下がらせ、みんなを守るように結界を発動させる。
「いいですか!あのロードさんは現在暴走状態だと思われます!ですので皆様はこの結界の中にいてください!40秒しか持ちませんがその間に私が全て終わらせます!」
結界の外にいた豪華は皆んなに指示をするとゴブリン・ロードの方に走っていき、天翼剣に魔力を流して空中を飛ぶ。そんな中鈴菜と美菜は隆介と春香がいる階段の方に向かい、合流をする。
「隆介大丈夫だったかしら?」
「本当に攻撃が届いてない?」
「お疲れ様2人とも。心配ありがとう。本当にここにいれば大丈夫だったよ。向こうからは魔法とか届かないみたいだしさ」
「鈴菜さん、美菜さんお疲れ様!アクマさんの話は本当だったよ。僕達の目の前に魔法が飛んできたと思ったら何もなかったかのように消えていったんだよ!」
「そう、ならよかったわ」
「隆介とはるるんが無事でよかったよ!」
鈴菜と美菜はここにいれば攻撃が当たらないと聞いて安堵していた。
そんな会話をしていたら豪華がゴブリン・ロードと他のゴブリン達を光魔法で一掃して戦闘が終了していた。すると豪華達の目の前には少し大きめの木箱が出現して、それをアクマが開けて中の物をアイテムバックに収納する。
「ふぅ〜皆さんこれで終わりですね。犠牲者が出なくて良かったです。ではお疲れのところ悪いのですがあそこに出現したワープポイントに入って帰宅しましょう」
皆んなも疲れたのかその場で座る人もいたが、豪華の指示でワープポイントの方に向かって歩いていく。
「さて、俺達も早く戻ってゆっくりするか」
「ええそうね。帰ったら隆介の秘密を聞かないといけないわね」
「隆介の秘密なんだろうね!」
「僕も早く聞きたいな隆介君の秘密」
「戻ったらな」
階段の安全エリアにいた隆介達もワープポイントに行こうと歩き出した瞬間…。
ゴゴゴゴゴ!
「な、何ですかこの揺れは!」
「な、なにが起こってるの?」「私怖いよ!」「アクマさん!この揺れは何ですか!」「私達どうなるのですか!」
「うわっ!?」「うおっと!いだぁ!」「なんだこの揺れは!」
「う〜ん!素晴らしい!この勇者の体制を崩すなんて!」「グフフ、ここはこの僕が活躍して…いだい!」
突如揺れ出した迷宮に、ワープポイントまで進んでいた生徒達は体制を崩して動けなくなってしまった。揺れの反動でワープポイントがあった場所は瓦礫で埋まってしまい、帰れなくなってしまう。
女子はその場に座り込んでしまい、男子達は何とか立ち上がり進もうとするが、直ぐに体制を崩してしまう。
「クフフフ、皆さん落ち着いて下さい。この揺れは一時的なものです。揺れが収ったら私が持っている最後の転移結晶を使って帰りましょう。絶対に勇者様達を返しますのでご安心を」
アクマは揺れの中、普通に喋りながら立っていた。その光景を見ていた生徒達は、アクマの話を信じて収まるのを待っていた。
だが…。
ピシッ…ピシピシ!
「な、何なんだあれは!」
一人の男子生徒が真ん中の方に向けて指を指すと、空中には亀裂が入ったかのようなヒビが入っていた。