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第5話 訓練場

 お城の中の大きな部屋に男3人が椅子に座り、お互い向き合って話していた。片方に王冠を被り、豪華な衣装を着た王様。机を挟んで、もう片方の椅子には王よりは下だが、豪華な青色の衣装を着た男。その隣にはフードを深く被った黒いローブの男。


「そうだな。あの隆介というEランクのやつをあそこに行かせて、行方不明にさせた方がいいな」

「ですが王、それだと豪華様にばれてしまうのでは?」

「クフフフ、その件に関してはもう豪華様から承知済みです。後は実行に移るのみ」


 黒いローブの男はクフフフと笑うと、大きな鞄から一枚の紙を取り出す。


「なんと…これならきっと…。この案採用しよう」

「お気に召されてよかったです」

「ですが、本当にこんなことが可能なのですか?」

「可能ですとも。私はとある方から強大な力を授かりました。それは…これは内緒にしときましょう。これは王でも伝えてはいけないのです。申し訳ございません」

「そうか、お主が言えないのならよい。だがこれが本当に可能なら『失礼します!』そのものを変えてしまう」

「おい!王に無礼だぞ!」

「も、申し訳ございませんダルト様!ですが豪華様が!」


 兵士は物凄い慌てた様子で扉を開けて入ってきた為、青色の衣装を着た男、ダルトは顔を真っ赤にして怒っていた。


「よいダルト」

「ですが!」

「よいと言っておる。それで?豪華様がどうしたんだ?」

「そ、それが剣豪様がいきなり現れ、豪華様を倒してしまったのです!豪華様は現在気絶しており、応急室にいらっしゃいます!」

「はぁ〜…」


 右手で頭を押さえながら深いため息を吐いた王は、呆れた顔をしながら慌てている兵士に答えを返す。


「あ〜よい。流石にあいつが相手では今の豪華様では敵わない。だが国の宝である豪華様を痛めつけるとは…何をしておるのだ。言っておいてくれ。魔法を斬ったりするのはいいが、真の勇者である豪華様を斬ったりしたらダメだとな」

「か、かしこまりました!では失礼します!」


 ウルド王の前で、兵士は頭を垂直に下げてキリッとした後くるっとまわり、ゆっくり扉を開けて出て行った。

 あいつは私の友人だから今回は許すが、これが一般人や兵士だったら即牢獄送りだ。特にランクEとE+のやつは奴隷にするか死刑だ。


「クフフフ、まさか剣豪が現れるとは。珍しいこともありますね〜」

「そうですな。剣豪様が現れるとは、珍しいこともあるもんですね」

「私がもしあいつの敵、または関係者ではなかったら即死刑だ。だが今回は友という関係もある。それに…今の私では敵わないだろ。魔法を斬れるようになったあいつには」


 今あいつに敵対したら魔法部隊と剣士部隊両方が全滅してしまうかもしれんからな。たった1人で全滅させることができると言ってもいいだろう。【剣豪】と言われているが、最近ではもう一つの2つ名が【魔法殺し】と言われるぐらいだからな。


「いきなりあいつが嬉しそうに私の所に訪ねてきたときはなんだと思ったが、魔法を斬れるようになったと聞いた瞬間私の勝ち目はなくなった。魔法が全てだった私とは違い、おまけに過ぎない剣を選んだあいつは剣一筋で生き、魔法を斬ることができるようになった。私達にとってあいつは警戒しないといけない人物になってしまったようだ」

「お、王がですか!

「そうだ」


 そう、あいつは魔法を斬ることができる。だからこそあいつの機嫌を損ねたらこの国が滅びかねん。それだけあいつの実力はすごい。認めよう。


「さて、話は終わりだ。私はまだやることがある。この件に関しては豪華様以外言わないこと。この紙の件についてはよろしく頼むぞ。成功したら報酬金を渡そう」

「分かりました王よ。クフフフ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「酷い!豪華君がそんな人だったなんて!」

「でしょ!僕も酷いと思ったよ!ほんと許さない!」

「そうね。私の魔法で吹っ飛ばしたいわ」

「鈴菜怖!」

「何か言ったかしら美菜?」


 鈴菜が美菜をギロっと睨みつける。


「ひいっ!?」


 3人はソファーに座って、豪華について話していた。メイドがいるのに?と思ったかもしれないが、今は4人が食べた朝ご飯のお皿等を片付けに行っている。3人の話に入らず、隆介はベットの上で自分のステータスを開き、なんの魔法を習得するかを腕を組んで考える。

 う〜ん…次はどの魔法を習得しよう。雷?光?それとも火か?悩むな〜。ま、1日2つまで習得できるから、これを毎日やってけば全部習得できるし、考えなくてもいいか。それに3人がいるから習得はまた後でだな。

 ゴロンとベットに大の字で寝転がり天井を見ていると急に、少しだけお腹が重くなった。


「美菜…何をしてるんだ?」

「うん?」


 可愛らしく首を傾げて、隆介の顔を見る。

 いや、うん?って何。美菜は何がしたいのか俺には全く分からん。


「いや、何をしてるのかと」

「あ、ごめんね!今日まだ隆介のお腹の上に乗ってなかったから、隆介が寂しいかな〜ておもってね!」

「何だそれ。いや…美菜がその気なら。襲うぞ?」

「ふえっ!?」

「おりゃ!」


 お腹に乗っている美菜をギュッと抱きしめて、おりゃ!と横にゴロンとさせてこちょこちょを喰らわす。

 いつも起こしてくれるのは嬉しいけどこれは想定外だろ!ハハハハ!お、美菜って意外と柔らかいんだな。それにいい匂いもする…て俺は変態かよ。


「アハハ!りゅ、隆介!ストップ!ストップ!僕が悪かったからアハハ!や、やめ…」

「隆介?何をしてるのかしら?」

「隆介く〜ん?」


 美菜にこちょこちょをしてると、いつのまにか近づいてきた2人が怖い笑顔で隆介のことを見ていた。隆介は、背中にゾクリとするものがあった為、手を止める。因みに今の美菜は制服がみだらになっており、幸せそうな顔をしつつも顔を真っ赤にしながらバテている。

 まずい…これやりすぎたな。しかも2人とも口は笑ってるのに目が笑ってない。


「こ、これはですね?」

「これは何?」

「何かな?」

「そ、その〜すみませんでした!」


 ベットの上で土下座をして頭を下げる。

 言い訳ができません。だって2人の顔見たら鬼のようになってました。

 許してもらうまで土下座をしていると…。


 コンコン


「はい」

「失礼しま…した」

「ちょっと!?」


 鈴菜が返事をすると、キリッとしたメイドが中に入ってくる。だか周りを見渡し、状況を確認すると直ぐに扉から出て行こうとした為、慌てて隆介は止める。

 いやいや!確かにこの状況はおかしいよ?美菜はベットで、みだらになった状態でバテているし、俺は2人に土下座をしてるしと色々おかしいところはあるよ?でも別に変なことはしてないから!だから助けて!


「失礼しました。お時間でしたので呼びにきました。行為をされる途中でしたら諦めて下さい」

「違うから!これはそういうことをする前提じゃないから!」

「そうでしたか。では私は廊下で待っておりますので準備ができましたら参りましょう」


 メイドはスゥ〜と扉を閉めて、何事もなかったかのように2人も扉を開けて出て行く。


「ごめんね美菜。やりすぎちゃって」

「う、ううん!僕は幸せ…じゃなかった。もう大丈夫だよ!もう時間みたいだし行こうか!」


 ベットからむくりと起き上がり、床に足がついた瞬間ふらりとして、隆介に倒れ込む。

 おっと!


「足に力が入らないみたい」

「ごめんね本当に。ほら、おぶってくから乗って」

「いいの?」

「いいよ。俺がやりすぎたせいだしね」


 背中を美菜の方に向けて乗るように言うと、恥ずかしそうに隆介の背中に乗る。

 隆介の背中大きい。足に力が入らないのは本当だけど、こんなチャンスもうない!今のうちに堪能!隆介の匂い。ギュッ。


「どうした美菜?急に力が強くなったけど…」

「う、ううん!何でもないよ!」

「そっか。訓練場付近に近づいたら下ろすけど、もしまだ足に力が入らないようであれば言ってね?」

「分かったよ!」


 背負ったまま扉に向かい、開けると2人が隆介と美菜を両方チラッと見て、ため息をする。


「はぁ〜。羨ま…う、ううん。一体何をしてるのかしら?」

「何をしてるのかな?」

「これか?俺がやりすぎたせいで足に力が入らないみたいだから背負ってるだけだよ」

「ふ〜ん」

「そうなんだね〜美菜さん」

「ピィ!?」


 2人は何故か美菜を見ながら怖い笑顔を向ける。すると背中にいた美菜がブルブルと震えているのが分かった。

 やめてあげて。俺もそれ怖いんだから。


「2人とも、これは俺のせいなんだからそう美菜を怖い顔で見てやるな」

「そんな怖い顔してたかしら?」

「そうだよ隆介君?」


 はぁ〜もういいや。言うのも面倒いし取り敢えず訓練場行かないと遅れるな。てか何で春香まで怖い顔して見てるんだ?


「メイドさん。案内お願いしても宜しいでしょうか?」

「分かりました。案内いたします。ただし道中変なことはしないでくださいね?」

「いやしませんから!」


 このメイドもメイドで疲れる。なんだよ本当に。

 先頭を歩くメイドに4人はついて行く。1階まで階段を降り、右に曲がった所にある2つの扉を開けて、更に進んで行く。すると目の前には大きなコロシアム場の建物が建っており、大きな扉の前には普通の兵士より少し豪華な鎧を着た男2人が槍を持って扉の左右に立っていた。

 メイドが中に入る手続きをしていると、兵士は隆介のことをチラッと見て再度前を向き直す。

 何だ?


「では私はここまでです。後は中にいる兵士の方に案内をしてもらって下さい。失礼します」


 4人に一礼をした後くるっと回り、行ってしまった。

 さてと、美菜はもう大丈夫かな?


「美菜、もう大丈夫そう?」

「ま、まだかな〜『美菜?』『美菜さん?』もう大丈夫だよ!ありがとう隆介!」


 慌てて隆介から降りた美菜は、早足で大きな扉の前まで歩いて行った。続くように2人も扉の前に立つ。

 さて、俺も行くとするか。

 4人が扉の前に集まると、兵士2人が大きな扉を開ける。


「おー!広ーい!」

「そうね」

「広いね!」

「そうだな」


 大きな扉を開けた先は大きな闘技場になっており、上は360度観客席になっていた。

 女子達とあいつらきてたのか。俺達がもしかして最後か?


「やーやー!美菜さん鈴菜さん!遅かったですね!ですが大丈夫ですよ?この真(・)の(・)勇(・)者(・)に免じて許したあげます」


 クソウザいのか来たよ。しかも真の勇者を強調して。豪華のお陰で助かったけどどうせ何か企でもあるんだろ。今も俺の方をチラッと見てニヤついてたし。またどうせ虐めだろ。もういっそうなことこいつと、取り巻き供を復讐してやろうか?いつがいいだろうな?魔王を倒した後か?それとも魔王とバグを倒した後か?俺を虐めた報いをいつか受けてもらおう。


「怖い怖い隆介君。この私が隆介君を助けてあげたことに感謝してね?けど大事など…仲間だから言わなくても今回は許してあげるよ!」

「……」

「これで全員集まったようですね!では!昼の鐘が鳴るまで魔法の使い方を教えましょう!」


 3人は豪華を無視して、通り過ぎたが隆介だけは止まって豪華を睨んでいると、王の隣にいた豪華な白いローブの男が大声を出して始める。

 豪華のやつ何か言いかけたな。分かってるけど。

 隆介と豪華もローブの男の方に向かい、話を聞くことにした。


「まずは自己紹介からしましょう。私の名前は「ガリア・デルム」と言います。ここでは先生とお呼びください。では早速ですが魔力制御、イメージ、発動方法を学んでほしいです」

「あの先生。俺魔法ないらしいので剣の練習をしても宜しいですか?」

「あなたは…分かりました。あそこの兵士に剣を借りてやってなさい」


 一瞬嫌な顔をされたが皆んながいる為、優しく隆介に指示をする。

 こいつ嫌な顔をしたけど皆んながいるから我慢したな。俺1人だったら絶対に何か言ってくるは。ま、剣の練習ができるならいいや。


「分かりました。ありがとうございます」


 指示された通り、端にいる3人の兵士の元に行って剣を借りに行く。すると3人の男はこちらを見てニヤッとした後、また会話を始める。

 うわぁ、今あの3人の兵士こっち見てニヤッとしたよな?絶対に悪巧みしてるだろ。あの野郎供に散々虐められたから、一瞬でこういうのが分かったよ。でも一応聞いておくか。


「あの〜すみません。剣を貸していただいても宜しいでしょうか?」

「あっ?剣を貸してくれ?」

「おいおい扱えるのかEランクが!」

「アハハハ!お前は剣じゃなくてナイフがお似合いだよ!ほらよ!ナイフやるよ!あっ、勿論Eランクが使った物はいらねーからくれてやるよ!」


 兵士の1人が、腰から皮のカバーが付いた小さな鉄のナイフを隆介に渡そうとして瞬間…。


「普通にあげるわけねーだろ?」


 隆介に渡すと見せかけて、上の観客席まで思いっきり投げる。

 こいつ…予想はしてたけど酷いな。


「アハハ!おいおいムスタ!やるじゃねーか!」

「流石だぜ!Eランク何て存在する価値すらないからな!こうやって分けてもらえるだけでも感謝してほしいぐらいだ!いや!この城に置いてもらえるだけでだな!」

「だよな!アハハアー!オボボボブ!?」


 隆介は3人にイラッとしたが、我慢して上に行く階段を登ろうとした瞬間、兵士の男1人がパニックになった声が聞こえたので振り返ってみると、ずぶ濡れになった状態で地面に倒れていた。

 何が起こったんだ?

 辺りをキョロキョロと見渡すと、こっちを見ていた鈴菜が右手で髪をふわっとした後、何もなかったかのように前を向き直して魔法の練習を始めていた。


「流石鈴菜だな。もう魔法を使いこなしているよ。それに鈴菜のお陰でスッキリしたから上で見てるか」


 鈴菜の周りには、水の泡を何十と浮かべさせており、それを自由自在に形を変えていた。更には風魔法であろう小さな竜巻が鈴菜の手に回っていた。

 俺も男だ。魔法を使いたいと思える心がどこかある。ワクワクしている。

 上に上がるための階段が近くにあったのでそこから上がっていき、辺りを見渡す。


「え〜と…ナイフナイフ〜あった。これも一応武器として使えるから取っておくか」


『鉄のナイフ』

鉄で作られたナイフ。


 こういう物とかのランクないんだな。ランクが全て〜とか言ってるのに人のランクだけかよ。それで全てが左右される。何じゃそりゃ。差別だろ。


「そうだ、ランクってどう上がるんだ?鈴菜もここだけ説明なかったよな?後で聞いてみるか。では早速!習得タイム![〈神眼〉保留選択!]」


〈承知しました。表示します〉


〈火魔法E〉 

〈雷魔法E〉

〈闇魔法E〉

〈危機探知E〉

〈探知妨害E〉

〈王の威圧_〉

〈光魔法E〉

〈聖剣召喚_〉

〈自動範囲回復E〉

〈土魔法E〉

〈風魔法E〉


 朝から悩んだ挙句雷魔法でいいかな。かっこいいからね!もう一つは火魔法もいいけど探知妨害も捨てがたい。何故か?自分の場所を特定されるのが嫌だから。


「取り敢えず雷魔法を習得するか。[選択〈雷魔法〉!]」


〈承知しました。〈雷魔法E〉を獲得します〉1/2


〈雷魔法E〉

雷を自由に出し、操ることができる。ランクよって威力が変わる。


「説明短!そんなもんなのか?う〜ん…ま、いっか。次は何し『おうおうおう!やってるな!』ようか?えっ?誰あの人」


 隆介が次の魔法を決めようとしていると、自分達が入ってきた訓練場の、扉の方から大声をだして誰かが入ってきた。赤髪、赤い瞳、黒いタンクトップから見える凄い筋肉、身長が180cmありそうな大柄な男性が、左腰に赤い鞘に入れている片手剣を付けてニコニコと嬉しそうに中心に向かう。

 うわ〜あの人絶対に強い人だ。周りとオーラーが違う。暑苦しそうな人だけど、ちょと気になるから下に降りて盗み聞きするか。

 椅子から立ち上がり、階段を降りて行きなるべく目立たないように近づく。


「そ、それはいけません!」

「なんだなんだ!けっちいこと言うなよ!一人ぐらい戦える奴いるだろ?」

「け、剣豪様と今の皆様では差がありすぎます!」


 ほぇ〜この人剣豪なんだ。だから周りとは全くオーラーが違うのか。んで今の話からこの剣豪の人は俺の同級生の中から戦ってくれる人を探してると。なら決まりだな。本当は嫌だけど豪華を指名してやるか。褒めまくって。


「そ、その!剣豪様!発言宜しいでしょうか?」

「あん?何だ君は?」

「お、私の名前は隆介と申します!この中でしたら豪華が一番だと!全てに関して完璧で惚れ惚れするほどの腕前です!

「ほう…そいつはどこに?」

「私はここです!」


 すると爽やかな笑顔で出てきた。

 よしよし、かかった。褒めとけば調子に乗って出てくるだろうと思ってたよ。えっ?悪い?いやいやそんなことはないよ?


「お前の名は?」

「私は金谷豪華と申します剣豪様。隆介君が言った通り私は全てに関して完璧です。剣の腕前は、剣道などをやっていた私が保証しましょう。魔法もほら?もう簡単に扱えます。魔力も調整しながらです」


 ほら?という感じで豪華は剣豪の前で披露する。

 本当にこいつ何でもありだな。才能があるのはいいけど虐めの才能はどうかと思う。


「ほほう。それは面白そうだ。よし!俺と勝負だ!」

「いいでしょう。この真(・)の(・)勇(・)者(・)がお相手しましょう」

「おい!お前は審判を頼む!腕がなるぜ!真の勇者と戦えることに感謝するぜ!」


 ガリアに審判をやらせるように言った後は、中央に2人は移動して、戦いの準備を始める。

 ふふん!この私が負けるわけがありません!完璧な私の前ではこの剣豪様も勝てないでしょう!アハハハハ!

 二人は訓練用の模擬剣を手にして構える。


「では!両者共!準備ができましたか!」

「おう!俺はいつでもいけるぜ!

「ええ私も構いません」

「「「「「頑張って豪華君!」」」」」

「「「「「頑張って下さい!豪華さん!」」」」」


 クラスの女子達や豪華の仲間達は、巻き込まれないように隅っこで応援をしていた。4人も隅に移動して、観戦モードに入る。勿論応援はしないが。


「さっきはありがとな鈴菜。お陰で俺もスッキリしたよ」

「何のことかしら?私はただ魔法を放つ所を間違っただけよ」

「それでもだよ。お礼がしたいな」

「別にいいわよ」

「鈴菜のそういう所が好きだな俺。欲がないっていうのかな?でも今度ちゃんとお礼するよ。できる限りだけど何でも言ってね!」

「そ、そうね。なら2人の時にお願いしてもいいかしら?今ここで言うのは恥ずかしいわ」

「了解!」


 頬を赤くしながらも、クールな表情は崩さずに隆介に答えを返す。そんな会話をしていると審判が大声を上げて宣言をする。


「ルールは魔法ありの一本勝負です!どちらかが降参、または気絶した方が負けとなります!では!始め!」


 試合が始まり、勢いよくいくと思っていたが両者共動こうとはせずに睨み合っていた。

 何やってんだ?


「ど、どうかなさいましたか?」

「うるさいぞ。豪華と言ったか?中々やるではないか」

「そりゃーそうですよ剣豪様」


 だから何やってるの?俺には全く分からん。ただ2人の中ではもう何かが始まってるのか。素人の俺には意味不だけど。

 周りにいた生徒や兵士達も、何をしてるんだろうとじっと観戦していた。


「鈴菜ちょといいか?」

「何かしら?」

「あの2人何で戦ってないの?」

「私にも分からないわ。多分だけど隙が一切ないってことかしら?」


 あ〜そういうことね。剣豪と豪華は全く隙を見せていないと言いたいわけか。凄いな。構えだけで分かるとか。


「では俺から行かせてもらおう。あえて敵の陣に乗り込む。行くぞ豪華!」

「ええ、私には敵わないと思いますがね?」


 剣豪は豪華の元に一気に突っ込んで行き、模擬剣と模擬剣がぶつかり合う。そこから剣のぶつかり合いが始まる。

 ほ〜う。中々やるではないか。真の勇者ってのは飾りだと思ってたがやるではないか。


「ふふ、どうですか?」

「ふん!まだまだ俺は本気を出してないぜ?」

「分かっておりますよっ!」

「うおっと!やるな!」


 剣豪の上から光の光線が降ってきて、それをギリギリ回避をする。

 やはり避けられましたか。そううまくいかないですね。ではこうしましょう。


「聖剣召喚!」


 立ち止まった状態で豪華がそう叫ぶと、目の前から2つの白い翼が特徴的な、美しい白銀の剣が召喚される。それを右手で持つと、構えもせずに余裕をかましていた。

 あいつ模擬剣捨てて聖剣召喚しやがったぞ!魔法有りだけどあれは流石に剣豪の方が不利だな。頑張れ剣豪!俺はあいつが召喚した聖剣を鑑定して見てるよ!(気になる)


『天翼剣(テンヨク)』

選ばれし者だけが召喚できる聖剣の一本【天翼の聖剣】。魔力を聖剣に流すことによって背中に天の翼が4枚出現し、飛行可能となる。魔法使用時の魔力半減。魔系に与えるダメージ増加。


 へぇ〜聖剣はこの一本だけではないんだな。何種類あるんだろ?俺が〈聖剣召喚〉を習得すればランダムで聖剣の一本が使えるわけね。まだ取らないけど。だけどいいな〜飛行できるとか羨ましい。一回は空を飛びたいけど俺の魔力じゃ持たないな…えっ?


〈天翼剣(テンヨク)が使えるようになりました。〈聖剣召喚_〉を習得しますか?〉


「しません」ボソッ


〈承知しました。保留にします〉



 反応するんかい。羨ましいとは言ったけど使えるようになっちゃったよ。まさか聖剣シリーズ全部鑑定で見たら使えるんじゃね?チートすぎだろ〈神眼〉。


「ほう…聖剣天翼剣(テンヨク)か」

「おや、剣豪様は知ってらっしゃるのですね?ま、私は知りませんが使える物は使いましょう」

「当たり前だ!」

「おっと、私には届きませんよ?」


 聖剣に魔力を流した豪華は、背中に白く美しい翼が4枚出現し、空高く舞い上がる。その為、剣豪が繰り出した攻撃を余裕に回避する。

 ふふふ、この高さまでは流石に剣豪様も届かないでしょう。私の勝ちですね。ではフィニッシュといきましょう!

 両手を横に広げ目を瞑ると、豪華の周りには天翼剣(テンヨク)と似た光の剣が何十本も出現し、召喚された天翼剣(テンヨク)を中心に回るようにしていた。


「終わりです!」

「……」


 目を見開き両手を前に掲げると、光の剣が一斉に剣豪に向かって飛んでいく。

 おいおいあいつ剣豪を殺す気かよ!めちゃくちゃだな!


 土煙を上げていた為、剣豪の様子が分からずに周りもただ見ているだけだった。そして最後と言わんばかりに天翼剣が土煙の中に飛んでいく。

 ふふふ、流石に殺しはしませんよ。ただ…私の奴隷として生きさせてあげましょう!腕を一本切断してね?


「ははは!」


 キーン!!


「はぁ!?」


 最後に飛んでいった天翼剣(テンヨク)が土煙の中から弾き出され、地面に突き刺さる。

 な、何が起こったんだ!確実に全て当たったはず!


「おいおい、自己過信するのはいいが余り俺を舐めるなよ?」


 土煙から何もなかったかのように歩いてきた剣豪を見て豪華は唖然としてしまう。そんな姿を見た剣豪は、はぁ〜とため息を吐いて、呆れていた。


「ど、どうして私の魔法を!」

「あ〜それか?ただ飛んできた魔法を斬っただけだが?最後のはちょと焦ったけどな。まさか本物が飛んでくるとは思ってもなかったが!ガハハハ!」

「馬鹿な…」

「まーそんなわけだ。次は俺のターンだな!」

「ガァ!」


 何が…。

 空中に飛んでいた豪華を叩き落とした剣豪は何もなかったかのように、地面に着地をした。

 地面に叩きつけられた豪華は、口から泡を拭いて気絶をしている。


「そ、そこまで!勝者剣豪様!」


 勝利宣言をしたが周りは静まり返っており、唖然とするばかりだった。


「何だ何だ!盛り上がりがないぞ!ガハハハ!」


 いやいや剣豪さんよ!まず何が起こったか全く分からないのに盛り上がりも何もないでしょ!急に消えたと思ったら普通に飛んでる豪華の場所まで移動してるし。どうやってあの高さまで行ったんだよ。あ、でもナイスです!


「そ、その剣豪様。豪華様は大丈夫なのでしょうか?」

「ふん!大丈夫に決まっている!こんな程度耐えれなければ魔王なんか倒せまい!だが…死んだらそこまでの実力者だったと言っておこう」


 模擬剣をガリアに渡した後は、そのまま扉の方に歩いて行き、去っていった。その時ちょうど鐘が鳴り、その場で唖然していた人達もはぁ!となり、動き始める。



「兵士達!豪華様を直ぐ応急室に連れていって下さい!勇者の皆様は昼食を食べていただき、休憩をしていただいた後は豪華様が目覚め次第迷宮探索をしてもらいたいです!」

「おい迷宮だってよ!」「俺達なら余裕だな!」「当たり前だ!なんたって勇者だからな!」「あー!いい!私の実力を見るといいです!」「グフフ、女の子にいいところを見せるチャンス!」


 男子達は盛り上がりを見せて凄いやる気を出していたが、女子達は少し不安そうにしていた。

 まーそうなるわな。男子達は冒険ができて嬉しいかもしれんが女子達は流石に怖いだろ。何が起きるか分からないし。特にお風呂とか入れないだろうし、寝る時も油断できないだろうからな。


「扉を出たらメイドが待機しているので案内をしてもらって下さい。迷宮の説明については着いてからと言うことでお願いします。では解散としましょう!」


 解散の合図をだして皆んなは扉に向かって歩いていく。隆介達4人も続いて歩いて行くが、視線を感じた隆介は後ろを振り向くと、深くフードを被った黒いローブの男が観客席でこちらを見ながらニヤッとした。


「隆介どうしたの?」

「いや、何でもない」


 何だんだあの人。不気味だな。

 再度観客席を見ると黒いローブの男は姿を消して、いなくなっていた。

 その後はメイドに案内された食堂まで行き、昼食を食べて部屋に戻る。勿論美菜、鈴菜、春香も一緒にだが。

 いや、自分の部屋に戻ろうよ。

 それを言ったが『別にいいじゃん!呼ばれるまで時間あるんだし!』『そうね。豪華さんが目覚めなければ行けないものね』『時間はまだあるんだよ!いいよね隆介君!』との事。だから拒否しづらい。

 鈴菜はベルでメイドを呼んでソファーでまた寛いでおり、美菜はまたベッドの上でゴロゴロしている。春香と俺はと言うと、鈴菜の向かいのソファーで一緒に紅茶を飲んでいた。


「この紅茶本当美味しいわね」

「そうだな」

「そうだね!」

「そうだ鈴菜。ランクってどう上がるか分かる?」

「ごめんなさい隆介。それは私にも分からないわ。王様もそこの部分を話してなかったもの。忘れてたのかしら?」

「答えてくれてありがとう。誰かに聞いてみるよ」


 コンコン


 部屋の中で4人は数時間?ゆったりとしていると、扉をノックする音が聞こえる。

 おっ、そろそろか。豪華の野郎も目覚めたって事だな。そのまま起きなければ良かったのにとは思ってないよ?ランクの事は鈴菜も分からないみたいだしいつか誰かに聞くか。


「豪華様がお目覚めになられましてので準備のほどよろしくお願いします。私は廊下でお待ちしております」

「分かりました!すぐ行きますね!」


 紅茶を飲み干した後はソファーから立ち上がり、移動をする。

 迷宮探索いよいよか〜。楽しみだけど何も起こらなければいいけどな…。


「よし行こっか!シーナさんありがとうございます」


 シーナさんと言うのは朝にいた可愛いメイドさん。何となく名前を聞いてみたら答えてくれたけどその時の3人の表情が怖かった。名前ぐらい聞いていいじゃんよ。


「はい!迷宮探索頑張って下さい!応援しています!」

「じゃー行こうか3人とも。だけど美菜?朝も言ったけど手に持ってる枕置いてってね?」

「い、いつのまに!?」

「「「はぁ〜…」」」


 3人してため息を吐いたが、美菜らしいとその後は何も言わずに扉に向かう。

 そんなところも美菜のいいところだな。さて、行くか。

 扉を開けて4人は続くように出ていった。


次の章まで3〜5話出す予定です。始まりまでまだ少し長いですがこれからも読んでくださると嬉しいです^ ^


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