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17話 正体と反撃

文が途中のまま更新されていました…


 カレンが大魔人ギルアスに呼ばれる数分前、ゼロと名乗る同じ日本人を見送っていたカレンは不思議とその人物に甘えたくなる気持ちが何故か込み上げていた。


「どうかしましたか勇者様?」

「あ、いえ何でもありません」


 ボーとしていたカレンはクロム王の言葉でハァ!となり、頭をふるふるして答える。

 何故でしょうか…ゼロさんを見ていたら今にでもギュッとしたくなる気持ちが…。い、いけません!いくらお兄様と似ていても私はお兄様一筋です!それにゼロさんは私と同じ日本人でも赤の他人です!そうです!


「う、ううん!えっとクロム王様を信じていないわけではありませんが本当にあの方は大丈夫なのでしょうか?」

「きっと大丈夫です。彼のオーラーは今まで私が見てきた中で1番強力なものでした」


 そう、ゼロさんのオーラーは私が生きている中で初めて見た色です。きっと…いえ、最強と言っていいほどのレベルです。


「ですので勇者様も彼を信じてあげてください」

「…分かりました。私もゼロさんを信じてみることにします」


 それから数分、いきなりカレンの脳内に大魔人ギルアスからの命令が届き、玉座の間に戻って来いと言われた。だがカレンはギュッと手を握り従わない様に抵抗をする…が、虚しくも全身に激痛が走り支配されてしまった。支配されたカレンの瞳はハイラント状態になり目に光が無かった。そんな状態のまま階段の方に歩いていき、上に上がって行った。


 そんな様子を見ていたクロム王は自分が何もできないことに腹を立てたが、今は2人を信じて待つ事しかできなかった。


「ゼロさん、勇者様、どうかご無事で…」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 レストリア王国のお城、玉座の間にて2人の人物による激しい攻防戦が続いていた。

 体力は余裕だけどこれじゃーキリがない。この攻防戦を早く終わらせないと。けど、どうなってるんださっきから?俺があいつに攻撃しようとするたびに必ずと言っていいほどカレンさんが目の前に現れる。


「どうしようか」

「貴様もう終わりか?この程度で大口を叩いていたのか。フン!弱い犬ほどよく吠えるとはこう言うことか」

「チッ」


 玉座で偉く座っている大魔人ギルアスは、既に勝ったつもりでおり、隆介を上から見下ろしながら挑発をし、ニヤニヤとしていた。

 あんな野郎!カレンさんに全て任せて1人楽しやがって!…と怒る所はそこじゃないな。だがこの現象は一体何だ?行こうとしても何かに引っ張られる感覚があって前に進もうとしても戻させる…ん?戻される?


「そうか…そう言うことか」ボソッ


 何かに気づいた隆介は一旦ギルアスえの攻撃を中止して当たりを見渡す。そしてもう一度ギルアス目掛けて攻撃を仕掛ける。すると目の前にはカレンが現れ攻撃を受け止めた。


「どうしたどうした!もう諦めたのか!」

「いんや諦めてはないよ。ただ面白い事に気づいたから為そうと思って」

「あん?」


 すると攻撃をせずにそのままギルアスの方に歩いていくと目の前に再びカレンが現れ攻撃を受け止める姿勢をしている。が、無論隆介は攻撃をしていないのでその姿勢のまま固定されていた。


「これってつまりここだけループしているんだよね?最初は気づかなかったけどカレンさんに教えてもらって気づいたよ。ぶつかり合った時に何故かお前の方に向かっているはずなのに、場所が別の場所に移動してカレンさんと必ず当たる様になっている。つまりは俺がカレンさんを無視してお前の方に攻撃をしに行こうがループのせいで俺はカレンさんの目の前にループするってわけ」

「あの野郎俺様の支配に逆らいやがったな。だが貴様はもう終わりだ。仕組みが分かったところでこの無限ループから逃れる事はできん。疲れ果てて終わりだ」


 つまらなそうにするギルアスはあくびをしながら答え、もう諦めろとばかりのめんどくさそうな顔をしていた。


「だからよ〜俺様に従って魔王様の生贄になれってな?貴様みたいな奴でも魔王様は喜んでくれる。どうだ?嬉しくないか?」

「うるせーよ。さっきも言ったが俺はお前を倒す」


 すると目の前で受けの状態で固定されているカレンの頭に手を置き、ボソッとギルアスに聞こえない様に何かを呟く。するとそれに答えるようにコクリとカレンは頷く。


「フハハハ!やはり貴様は面白い!この状況でも諦めないその心!俺は…嫌いだ!貴様みたいなしつこい奴は死んでしまえ!やれ!」

「……」


 ギルアスがカレンに命令をすると、勢いよく此方に近づいてきて聖剣、『天闇剣テンアン』を振り下ろす。その剣筋は熟練された動きで、無駄が一切なく隆介は苦戦しながらも何とか連続して攻撃してくるカレンの攻撃を機械刀で受け止めていた。


 キンキンキンキンキンキン!!


「ツゥ!」

「……」

「さっさと終わらせろ」


  ハァハァハ…流石真の勇者だけあるな。ランクSSSでもここまで押されるとは思わなかった。この世界のバランスがどうなってるのかは知らないけど、ランクが自分より下だからって油断すると負けるな。現に今かなりヤバい。だけどここで諦めたらダメだ。カレンさんにああ言っときながら負けたら笑いもんだからね。ちょんと許可ももらった事だしカレンさんを鑑定して、支配状態から解除しないと。できるかは知らないけど。


 タイミングを見計らい、カレンから距離をとる。


「今だ![〈鑑定〉指定!カレンさんのステータスを表示!]」


 〈承知しました。ステータスを表示します〉


=====================================


名:剣崎華恋(けんざきかれん)

年齢14歳

性別:女

種族:人間

ランク:A

体力:C+→B

魔力:S→S+

腕力:B+→A

敏捷:A→A+

防御:B→B+

魔防:B→B+

運: C

魔法:〈闇魔法S〉

ユニーク魔法: 〈聖剣召喚_〉〈万能_〉〈探知S〉〈空間収納A〉〈光吸収_〉〈縮地B〉〈強化_〉〈多言語理解_〉

〇☆◇#€*□:〈夜月の魔眼_〉〈絶対領域_〉

称号: 〈転移者〉〈真の勇者(一段)〉〈聖剣を操る者〉〈魔王を倒す者〉〈永遠の愛〉〈一筋の愛〉〈覚醒一段目〉

加護:〈剣神の加護〉〈闇の加護〉

状態:ギルアスの支配・強化中


=====================================


〈探知を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉


〈空間収納を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉


〈光吸収を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉


〈縮地を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉


〈強化を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉



「……うえ?」


 隆介はカレン、華恋のステータスを見た瞬間変な声が出てしまった。それもそのはず、名前には幼馴染の剣崎鈴菜と同じ名字で、なんと言っても剣崎鈴菜の()だからである。

 な、なんで華恋ちゃんが!?


「ん?貴様もしや鑑定持ちか?」


 ギルアスは隆介が叫んだ鑑定という言葉に物凄く反応しており、珍しい物を見るかの様にしてこちらをじっと見ていた。その目は最初っからあるなら言えよと言った呆れた様な顔だった。

 急になんだあいつ?あんなにもピリピリとしていた空気が一気に無くなって、逆に俺の事を珍しい生き物でも見るかの様な。と、そんな事はどうでもいい!今すぐ華恋ちゃんを解放してあげないと!


「ハァ〜…あるなら言ってくれよ。鑑定持ちがまさここうして俺様の前に現れたのは幸運だな。どうだ?俺達の仲間にならないか?今だったら『指定!〈回復魔法〉で華恋ちゃんに掛けられている支配を解除!』…俺様の話を聞け!」


 ギルアスがギャーギャーと喚いているが、無視をして華恋に〈回復魔法〉かけてあげる。

 すると苦しんでいた顔が緩やかになり、ふらっと身体が倒れかけるが、隆介は優しくそれを受け止める。


「おっと。ここまでよく頑張ったね華恋ちゃん」

「お…にい……さ…ま?…」


 弱々しい声だったが華恋は微笑み、眠りについた。一瞬焦ったが、命に別状が無いことは確かだったのでほっとする。そしてゆっくりと下に降ろし、床に寝かせてあげる。

 あいつは本当に厄介な敵だ。だけど必ず隙はある。そこを狙えば…。


 チラッと隆介はギルアスの方に向くと、口を開けたまま唖然としている姿が見えた。更にはぶるぶると体を震わせている。


「お…お前何をした?あいつを支配していたのに何故切れた!支配の力は完璧だ!どうしてだ!応えろ!」


 こいつ感情がさっきから不安定だな。いや忙しいのか。いきなりキレて怒ったと思えばものすごい驚いたり、焦ったり、呆れたりと大変だな。大魔人って全員こうなのかな?知らんけど。


「そんなもの敵に教えてどうする。それと俺は別に何もしていない」

「嘘をつくな!貴様回復魔法と言っただろ!俺様の支配を解除したのはそれだろ!」

「分かってるなら聞かないでよ…」


 切れまくっているギルアスは額に青筋を浮かべて、ワナワナと震えながら早口で怒っていた。その様子は焦りと怒りが混じり合ってめちゃくちゃだった。


「クソ!俺様の計画を全て台無しにした挙句、この偉大なる大魔人ギルアス様をバカにしやがって!もう許さんぞ!俺様に逆らった事を後悔するがいい!」


 玉座から勢いよく立ち上がったギルアスは自身の体を更に強化して、素早い速度で隆介に接近をする。


 隆介は急に接近してきたギルアスに驚きならも回避しようと行動をするが、それを狙っていたのか右手を伸ばして回避したはずの隆介の目の前に現れた。そして肩に触れるとニヤリとする。


「残念だったな!とっくにあの女に付けていたループは俺様が付けてるんだよ!これで貴様は俺様を倒さない限り逃げられない!そして今、俺様は貴様に触れた!これがどう言う意味か分かるか?」

「まさか!」

「俺様の奴隷となれ!〈支配〉!」


  勝利を確信したギルアスは大声で魔法を発動させる…が、シーンとした空気が流れ何も起きなかった。


「ほえ?」


 ギルアスは一瞬思考が止まり、隆介の肩に触れたまま変な声を出して固まっていた。


「どうした?」

「いや、そんなはずはない!〈支配〉!」

「……」

「……」


 な、何故発動しない!俺様の支配は〈魔防〉が自身のランクより低い奴には必ず効く!俺様のランクはSSだぞ!…!?ま、まさかあいつの〈魔防〉がランクSS以上という事か!ありえん!絶対にありえんぞ!人間如きがSS持ちというのか!しかもあの貴重な〈鑑定〉持ち!な、何なんだ!何なんだあいつは!

 ギルアスは素早く後ろにバックし、隆介から距離をとる。その表情はまるで何かに焦っている様子であり、余裕がなかった。


 いきなり何だよあいつ。けど何故俺に支配が効かなかったのかは分からないけどこれはチャンスだ。華恋ちゃんからループが外れてあいつにループが付与されてるのなら必ず俺の場所に来るはず。


「クソ!貴様さえいなければ何もかも順調だった!」

「……」

「だが今はどうだ!俺様のペットを殺し、奴隷を解放した挙句に支配が効かない奴が目の前に現れ邪魔をしてくる!しかもそいつは俺様が偶々いたから倒すとかほざいてやがる!ふざけんな!」


 いや、俺そんなこと言ってないよ。確かにドリーさんを助けにここに来たら庭に変な魔物がいて、その魔物の飼い主が大魔人で、城に入るための地下通路に入ったら王様とかが閉じ込められてて、更には何故か華恋ちゃんがこの世界にいて大魔人に支配されていると言うもう訳が分からない展開になってるけど。偶々いたから倒すとか言ってないよ。まーと言ってもドリーさん達を解放する為にこいつを倒さないといけないわけだしな。


「もういい…全ての力を解放して貴様を殺す!今更謝ったって許さんぞ!」


 するとギルアスの周りには、目に見えるほどの濃い紫色の魔力が纏われていき、肉体も先程強化されたよりも更に強化され、大きくなっていく。

 おいおいおい!あんな奴がこの国で暴れたらヤバいぞ!


「ぜっ…だいに…ゆ…るざ…ん!ごろ…ず!」


 魔力が一気に膨れ上がり、言葉すらまともに話せない状態になったギルアスは、一気に隆介の元まで詰め込み右腕を大きく振るう。


「じねー!!!!!」

「ツゥ!ガハァ!?」


 ズコーン!!!


 いきなりの事に隆介は反応できず、モロにお腹に喰らってしまった。その際に胃から込み上げてくるものがあり、それが口から吐き出てしまう。そう、口から出たのは真っ赤に染まった血である。

 ギルアスの攻撃は最初の時よりも威力が上がり、隆介は城の壁を打ち破りながら外に吹き飛ばされてしまった。


「じね!じね!じねー!!」


 城の外に放り出された隆介に更に追撃しようとギルアスは物凄い速度で接近する。

 ハァハァハァ…くっ…ヤバい…。自業自得とは言え油断しすぎた…。防御SSSあるお陰で即死は免れたけどそれでもこの威力とか本気でヤバい…。


「俺…ざま…を!!!バガ…に!じだお前は!ぜっだい…に!ゆるざん!」


 隆介の目の前まできた怒り狂うギルアスは、隆介目掛けて拳を思いっきり振るう。

 ここで俺は終わるのか…いや!終わらない!帰りを待ってる人がいるんだ!


「ごれで…終わりだーー!!!」

「[全力回復+地獄の苦しみを永遠に!デスゲート!]」


 隆介がそう叫ぶとごそっと中にある魔力が一気に減り、激痛が走っていたお腹は無かったかのように消える。更に目の前には紫色と赤色のラインが入っており、門の周りには髑髏がいくつもの嵌め込まれた大きな禍々しいゲートが現れ、それが開くと不気味で紫色のもやが出現する。


「な!?」


 ギルアスは急には止められず、隆介の目の前に現れたゲートの中に入って行く。

 そして…


「グギャー!!!イダイイダイイダイイダイイダイイダイ!ウガァー!!!!」


 ゲートの中からは何が起こっているのか分からないが、ギルアスが物凄い悲鳴を上げながら苦しんでいた。


「[クローズ!]」


 バタン!!


 扉が閉まると門が消え、何もなかったかのように辺りが綺麗になっていく。


「ハァハァ…終わった…のか?だが何故あんなにも大きい音を立てているのに誰もが来ないんだ?」


 周りを見渡して何故こんだけ音を立てても人が来ないのかを不思議に思いながらも最初に入って行った城の地下に移動をする。

 傷が魔法で癒えたと言え、魔力と体力はそれなりに消耗してだいぶキツイな…。運以外全てのステータスがSSSとは言えコントロールできないとSSSとは言え死ぬなこれ。もっと力をコントロールして自分の物にしないと。


 最初と同じように暗い地下通路を進んで行き、王様とその妻と子供の元まで歩いて行く。


「おー!ゼロさん生きていたのですね!良かった…本当に良かった!」


 牢の中でクロムは隆介の事を見つけると、とても心配したいようで涙を流しながら何度も生きてて良かったと言ってた。その側には妻と娘さんが寄り添うようにして、一緒に涙を流していた。


「クロムさん…」


 隆介も出会って間もない自分の事をこんなにも心配してくれる人がいる事にとても嬉しい反面、何故ランク関係なくこんなにも優しい人がいるのに、この世界がランクと言う差別が起こるのか未だに分からない。


「すいませんこんなみっともない姿をお見せして…」

「い、いえ!逆に俺はクロムさんがこんなにも自分の事を心配してくれてるとは思ってなかったのでその…とそうだ!すいません少し鉄格子から離れててください!」

「は、はい分かりました」


 隆介の言葉を聞いて3人は鉄格子より少し奥に移動して何をするのかを眺めていた。

 よし、腕力がSSSだからこの鉄格子を捻じ曲げる事が可能かもしれない。けど万が一…億が一3人に何かあってはいけないから離れさせたけど力加減を調整すればっと!


「ふっ!」


 ギギギギ!!


 力をコントロールしながらゆっくりと鉄格子を広げて行くと、人が1人通れるぐらいの幅になる。

 よし!成功!これで3人共牢から抜けれる!


「なっ!?ゼロさんその力は一体!?」

「あ〜すいません。内緒にしてもらえますか?」

「わ、分かりました…と、ゼロさん私達を救っていただきありがとうございます。それと…申し訳ないのですが他に捕まっている者達も助けて頂けないでしょうが?この国にとって大事な人達です。皆この国に宝なのです。報酬は多く渡します…ですのでどうか…!」

「私からもどうかお願いしますゼロ様!」

「わ、私からもお願いします!」


 牢から抜け出した3人は、隆介の方に向き頭を深く下げてもう一度助けてほしいと真剣な顔で下げ続ける。


「で、ですから上に立つ者、何処の馬の骨とも分からない自分に頭を下げるのを辞めてください…。それに…人を助けるのは当たり前です。困っている者がいたら手を差し伸べる。報酬はいりません。ですのでどうか安心して下さい」

「申し訳ない…」


 その言葉を聞いてまて深く頭を下げる3人に隆介は困りながらも他の牢に閉じ込められているメイド、執事、兵士達を助け出して行く。


「これで全員ですね」

「はい、後は…勇者様ですが、その…何処にいらっしゃいますか?」

「それなら安心してください。華恋ちゃんはあのギルアスとか言う奴に支配されていたので解除しました。それとついでに倒しておきました。あんな奴がまた来られても困りますからね」


 その言葉を聞いた瞬間王さま達はとても驚いた顔をしており、活気が無かった者達からは涙が溢れていた。


「勇者様を助けていただいた挙句、あの大魔神を倒してくださるとは…何から何まで本当に感謝します!このお礼必ず致します!」


 王様達は再度深く頭を下げで隆介にお礼を言っていく。


「お礼はいいですよ。俺が助けたくて助けた事だしね」

「そ、そんな訳にはいきません!せめて!せめてお礼だけでも!この国の王として何も渡さず返す訳にはいきません!そ、そうだゼロさんは冒険者ですよね!それにまだ登録したてでしょうか!それでしたら今すぐにでもランクをAまで上げます!流石にSランクからはSランクの試験がありますから無理ですがAまで『それだけはお断りさせていただきます!』なら…えっ!何故ですか!」


 隆介が断った瞬間とても驚いた表情をして、逆に焦っているようにも見えた。


「で、でしたら我が国に伝わる宝を!『なっ!?本当に宜しいのですかクロム王様!あれは代々レストリア家に伝わるとても貴重な物!』いい!私達が持っていても宝の持ち腐れ!それにあれは誰でも使えると言うわけではない!選ばれしものしか使えないとされている物だ!だからこそだ!用意を急げ!」

「は、はぁ!」


 クロム王の命令により、1人の執事が慌てたように上に続く階段を上がって行く。

 な、なんかランク上げの件を断っただけで凄いことになってしまったな…。どうしよう、断ろうにも断れなくなってしまった…。取り敢えずは…。


「そ、そのすいません自分が断ったばかりに…」

「な、何を言いますか!ゼロさんはこの国を救ってくれた英雄です!やはりランクではなくこの国、最高の宝を褒美として渡すのがいいと私が判断したのです!どうか受け取ってもらえないでしょうか!」


 真剣な眼差しに隆介は一回ハァ〜と溜息を吐いて、諦めるように頷いた。

 ここまで言われたらしょうがない。有り難く受け取ってしまっておきますか。どんなものか分からないけど。


「分かりました。有り難く受け取ります。それと…これ以上は何もいりませんからね?」

「本当は持っとお渡しできたら良かったのですがこれ以上ゼロさんを困らすわけにはいきませんね。分かりました。と、勇者様が心配ですね。そろそろここからでましょう」

「そうですね。命の別状は無いとはいえ華恋ちゃんが心配だからそろそろ行きましょう」


 隆介、クロム王、、王妃、姫、メイド、執事、兵士達はゾロゾロと上に続く階段を登っていき、途中話しながら王座の間まで歩いて行く。

 道中上で何があったのかを色々聞かれ、華恋ちゃんと言っていたので2人はどう言う関係とかも聞かれたが、その答えは答えられないと断った。


「やはりこの国は支配されかけていたのですが…」


 クロム王は悔しそうな顔をしながら外をチラッと見て前に進む。そして何かを考え込む素振りを見せながら進んで行き、数分経ってようやく答えが決まったのか頷いて覚悟を決めた。


「悔やんでいても何も変わらない。前に進まなければいけないな。よし!今以上に頑張らないとな!ゼロさん!本当にこの国を救ってくれてありがとう!この恩は一生忘れません!」


 何度も感謝されながら隆介達は玉座の間に着いて、ボロボロになった扉から中に入って行った。



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