第10話 思いと怪しい影
「ほ、本当に宜しいのですか!」
「はい、まだまだ食材は沢山ありますのでどんどん食べて下さい」
「ゼロさん本当に感謝致します!」
夜、村の広場に大きな窯とテーブルを出して村の人達に豚汁とご飯を配っていく。
「美味しい!美味しいです!」「こんなの生まれて初めて食べました!」「お兄ちゃんおかわり!」「な、なんだこの温まる飲み物!旨すぎる!」「ああ、私達は幸せです…」
ミズナが生み出した豚汁は大好評で大人達は感動し、子供達は何回もおかわりをしながら食べ続けていた。中には泣きながら食べてる者もいる。
良かった。村の人達が喜んでくれて。俺だけだったら今頃何もできずにここを去るしかなかったけどミズナがいてくれたお陰で村の人達の本当の笑顔を見ることができて良かったよ。それにしてもこの味懐かしいな。母さんがまだ家にいる時によく作ってくれた豚汁の味と同じだ。
「ミズナ、今日は何かとありがとな。ミズナのお陰で俺は助かったし、こうして村の人達の笑顔を見ることができた。まだミズナと出会って1日だけど俺にとってはもう大切なパートナーだ。これからもよろしくな」
「ん、よろしくマスター」
村の人達が嬉しそうに食べ続けている光景を見ながら今日の出来事を思い出していると、そこに見た事ある男性が何やら急いだ様子でケートスの元に走ってきた。
「そ、村長!」
「なんじゃ?」
走ってきた男性はこっちを気遣ってか隆介達に聞こえないように村長の耳元で話していた。だが男性の話を聞いたケートスが、顔を真っ青にさせて何か焦った様子だった。
「すみませんゼロさん。私は少し席を外しますね」
「は、はい。分かりました。何かあったのですか?」
「いえいえ大丈夫です。ゼロさんとミズナさんは恩人です。ゆっくりとして行ってください。では失礼します」
「先程はありがとうございます!僕の名前はトト。こんな物しか用意できないですが良ければこれを貴方に渡しますね!ではすみません!」
「あ、ありがとうございます」
男性が隆介に渡したのは小さな紫色の宝石だった。受け取った隆介は顔を真っ青にしたままふらふらと歩いていくケートスと慌てた様子で走っていくトトの姿を見て、隆介は心配になり、気づかれないように後ろからついて行った。
顔を真っ青にしながら無理に笑顔作られたら心配になるよ…。絶対に何かあるはず。俺に出来ることがあれば力になりたい。
他の家より少し大きい木の家に入っていったケートスとトトを見届けて、隆介は窓のない枠からバレないように中を見る。すると、トトとケートスがベットに寝ている1人の少女の所で涙を流していた。
「リア…頑張っておくれ…」
「頼りないお兄ちゃんでごめんね…きっとリアを治す薬を手に入れてくる。それまでは…」
「う…はぁ〜はぁ〜…。そんな…ことないよ?お兄ちゃんは私の為に…ゴホゴホ!…」
「リア!無理はしないで今はゆっくりと休んで!必ずお兄ちゃんが見つけてくるから!」
「ありがとう…お兄ちゃん…」
そして疲れたのかゆっくりと目を閉じて寝てしまった。それを見守るように2人は少女の事を見ている。
そうだったのか…だからケートスさんとトトさんはあんなにも慌ててたんだ。
「……見てられない。何とかならないかな…」
「マスター?」
「うおっ!?」
いきなり背後に現れたミズナにビックリして汗が止まらなかった。
怖!?急に背後に立つの辞めてほしいよ!ビックリした〜!心臓止まるかと思ったよ!
「ミズナ急に背後に立つの辞めてほしいな…。心臓止まるかと思ったよ」
「ん、分かった」
「もう終わったのか?」
「ん、終わった。皆満足そうだった。片付けもしてマスター探してたらマスターが家の中を覗いてたから何かあるのかなと」
「そうだったのか。村の人達が喜んでくれたみたいでよかったよ。ミズナもお疲れ様」
「ん」
「さて、どうしたものか」
「ん?マスターあの子気になる?」
「そうだな。何か重い病気?にかかってるみたいだし、協力してあげられる事ないかな〜て思ってね」
「ん、なら私があの子治す?」
「えっ?」
「ん?」
今普通に治すとか言ったよねミズナさん。えっ?何?万能すぎませんか?ステータス後で見せてもらお。色々気になる!
「本当にあの子を治す事できるのか?病名は!」
「余裕。あの子今状態毒。後数分で天に登る」
「毒で数分!?なら早く治さないと!頼むミズナ!」
「了解」
慌ててケートスの家の中に突入して、直ぐ様少女の元に駆けつける。いきなり入ってきた2人に唖然としてる男性とケートスは固まって動かなかった。
「いきなりすみません!今は説明してる暇はないのです!兎に角早く治しますね!お願いミズナ!」
「分かった」
ミズナが少女の元に駆けつけて、おでこに手を乗せる。すると一瞬緑色の光が部屋の中を照らし、すぐに収まる。
「どうミズナ…?」
「ん、治った。これで安心」
「良かった〜…」
「あ、あの〜一体何が?」
未だ驚いたような顔で質問する男性に、隆介は事情を説明をする。するとみるみるうちに顔が真っ青になり、土下座を2人にする。
「本当にありがとうございます!僕の妹を助けてくれた事一生感謝します!」
「おお…おお!リアは!リアはもう大丈夫なのじゃな!本当に良かった!ゼロさんミズナさん心より感謝致します!儂たちのような貧相で低ランクの者など誰も救ってくれる人なんて居ないと思ったのじゃが奇跡は起こるものじゃな…ウウ…」
「村長…。僕が高ランクだったら絶対に皆んなを笑顔にさせる事ができるのに…くぅ…」
低ランク…か…。ランクによって強さが違うのは分かる。けどそれだからって差別するのは違う。俺はそんなこと絶対にしない。救える人がいたら救いたい。
「いえいえ、私は何もしておりません。お礼はミズナにお願いします。でもどうして妹さんは倒れ込んだのですか?」
「本当に感謝します!実は…」
聞いた話によると、食べ物がほとんどなく、2日前森に食料を探しに行ったトトさんと妹さんが運悪く毒針を持つネズミに遭遇して、妹が刺されてしまったらしい。それでトトさんが慌てて妹さんをおんぶして逃げてきたとか。だが毒で苦しんでいる妹を助けたくてもお金もなく、どうすることもできなかったからまた危険な森に入って、解毒できる植物を探していたとの事。そしたらまた運悪く今度はあの豚の群れと出会ったとか。オークと言ってたな。それで俺達が来て助かったと。
「そうだったのですか…。妹さんを助けれて良かったです」
「本当に感謝します」
「ゼロさんこれは儂からのお礼です」
「これは…」
ケートスが隆介に渡したのは緑色の宝石がはめ込まれた綺麗なペンダントだった。
「これは精霊様からいただいた恵のペンダントと言います」
「恵のペンダント…」
『恵のペンダント』
これを装備した人が土地にいると野菜、果実などの成長スピードが早くなる。
「はい、いつかゼロさん達の役に立つと思います」
「…これはいただけません」
「なぁ!?」
隆介が手に持っていたペンダントをケートスに返すと、驚いたような顔をしてビックリしていた。
こんな大切な物は受け取れませんよ。だって…。
「これは精霊様が貴方達に与えた大切な物です。ですのでこんな旅人にあげてはなりません。助けたお礼はもうトトさんから貰っています。それだけで充分です」
「あ、あれは僕を助けたお礼に!」
「いいんですよ。それに人を助けるのは当たり前です。まー自分は何もしてませんがね…あはは…」
すると隆介とミズナを神のように崇め始め、何回もありがたや〜と繰り返していた。
なんかこう言うのも恥ずかしいな。でも本当に助けれて良かったよ。さて、俺はそろそろ明日に備えて準備して寝るか。はぁ〜風呂入りたい。今日は我慢して明日レストリア王国でお風呂あったら入るとしよう。それに…ミズナに明日生み出して欲しいものがあるんだよね!これを生み出せば楽々旅ができる!とと、もう一つ明日やっておかないといけないことがあるけどこれまたミズナさんに頼まないと…何もできない自分が虚しい。
「ど、どうかされましたか?」
「どうなさいました?」
「あ、いえいえなんでもありません。では私達は明日に備えて寝ますね。では」
「そうでしたか。本当に今日は感謝します。ではごゆっくりとお休みください」
「おやすみなさいゼロさんミズナさん!妹を助けてくださってありがとうございます!」
笑顔で2人に手を振るケートスとトトに隆介は手を振り、ミズナも無表情ながら小さく手を振って歩いて行った。
「はぁ〜さてミズナさん」
「ん?」
「ミズナさんのステータスを見てもよろしいですか!」
「いい。私の全てはマスターの物。全てに答える。ただ…」
「た、ただな、なんでしょうか?」
するとグイッと隆介に近づき、甘えるように腕に引っ付いてきた。
「ミズナさん!?」
「私がこれから先ずっとマスターの側にいられるようにしてほしい。捨てないでほしい」
「当たり前だ。ミズナを捨てるわけが無い。これからもずっと一緒だ。けどどうして…」
急に無表情だったミズナの顔がとても寂しような顔になり、アホ毛もしゅんとなっている。更にギュッと隆介の腕に引っ付いて離れないようにしていた。
「いつもマスターが私を操作して戦ってくれた。少しの傷でも治してくれた。私を丁寧に扱ってくれた。だからそんな優しいマスターにいつか会いたかった。でも…それから全然マスターの顔が見えなくなった」
「え…それってまさか俺がゲーム操作してたキャラクターはゲーム内で生きていた…」
そんな事があり得るのか!?確かに俺達がやってたゲームは最新の機能が色々導入された物だったけどここまでリアルに…いや待てよ?なんか引っかかる。ふざけて倒してるプレイヤーがいたな。その位置で倒されたNPCのその後が何故かそのNPCではなく他のNPCになって生まれ変わってた。それも全て。
「ん、マスター何ヶ月も帰ってこなかった。寂しかった。もう私は捨てられたと思った」
何ヶ月…多分あの時か。合間を縫ってサブ職を鈴菜が育成してる期間だよな確か。それで見事勝利を収めていこうメインの魔法職、ミズナを操作してなかった。それにもう一つの職を美菜が作ってそれを育ててたからな…。んで育て期間中にこの世界に来たと。
「だからこうして今マスターが私を生み出してくれたからとても嬉しい。でも同時に不安。またマスターに捨てられると思うと…マスター?」
更に寂しい顔をして、体が震えていたミズナを隆介がギュッと優しく抱きしめる。
こんな辛い思いをさせてたんだな。ゲームだからって理由で少しの間放置してたけどまさか生きてるとは思わなかった。でも今はこうして近くにいるんだ。もう寂しい思いはさせたく無い。これからもずっと。
「俺はミズナを捨てたりなんて絶対にしない。約束だ」
「本当?」
「本当だ。俺達が元の世界に戻る時、ミズナさえ良ければ一緒に着いてくるか?」
「行く。私はずっとマスターの側にいたい。もうマスターから離れたく無い。私の全てはマスターの物。だから何があっても離れない。そしてマスターを守る。それが私の役目」
隆介の胸の中に顔を埋めて、ギュッと強く抱きしめるミズナを優しく頭を撫でていると落ち着いたのか、ほんの一瞬だけふふ、と微笑んで可愛らしい笑顔を見せる。そんなミズナに隆介は一瞬ドキッとして顔を背ける。
「マスターどうしたの?」
「あ、いや、なんでもない」
「本当?」
「あ、ああ本当だ」
「ん…マスター頬赤い?」
「いや本当になんでもないから気にしないで…ん!?今ゾクリとしたものが!?き、気のせい?…よ、よし。ミズナ、改めてステータスを見てもいいかな?」
「ん、いい」
「で、では!」
そしてミズナのステータスを見て隆介はえっ?てなり、固まってしまう。
「マスター?」
「嘘…だろ!?」
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名:ミズナ 年齢0歳
性別:女
種族:半神人
ランク:???
体力:???
魔力:???
腕力:???
敏捷:???
防御:???
魔防:???
運: ???
魔法:〈全〉
ユニーク魔法: ???
〇☆◇#€*□:〈創造_〉
称号:〈天草隆介に生み出されし者〉〈天草隆介の契約者〉〈従順〉〈永遠の愛〉〈地獄迷宮突破者〉〈白神龍王討伐者〉
加護:〈創造神の加護〉〈天草隆介の加護〉
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ミズナさん…いやミズナ様だよ!このステータス壊れてない!?えっ!本当何このぶっ壊れステータス!?これ見られたら絶対にヤバイ奴じゃん!チート級のチートだよ!神様なんてもんを付けてるんだよ!
「ミ…ミズナさ…様?このステータスは絶対に見られてはならないので今後このステータスを見られないように隠してはいただけないでしょうか?」
「ん?マスターが言うなら隠す。それとマスター。私に様はいらない。敬語もいらない。ミズナと言ってほしい」
「お、おう…。よし、まずはこの年齢が0歳?だから俺と同じ15歳で、種族は半神人…だから人に。ミズナは半分神か…。ランクはC+に。ステは…Bより下で。魔法を2種類か3種類に。次にユニーク魔法だけどなしで。勿論バグ魔法もなし。称号は…うん、〈永遠の愛〉だけで…何これ?んで加護はなんで俺のがあるのか分からないけどなしで。これでいいかな?」
「ん、了解」
すると少しミズナが「むむむ」とやった後、終わったのかこちらに振り向いた。
「終わったかな?」
「終わった」
「よし、もう一度見てみよう」
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名:ミズナ 年齢15歳
性別:女
種族:人
ランク:C+
体力:C
魔力:B
腕力:C
敏捷:C
防御:C
魔防:C+
運: C
魔法:〈光魔法B〉〈氷魔法C〉〈雷魔法C〉
ユニーク魔法: なし
称号:〈永遠の愛〉
加護:なし
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あれ?氷魔法を獲得できてない?保留にも入ってないし獲得した覚えがないのに何でだろ?ミズナが特殊なのかな?
「どうかなマスター?」
「これで完璧だよミズナ」
「ん、良かった」
まー今はいいか。さてさてこれで終わりだけど今日一日疲れたな〜。この世界に来てからもう5日は経ってる。けど未だ納得できないな…。この世界はランクが全てなのは分かっている。けどだからってこのような扱いを受けるのは違う。それにこの世界は剣が邪道のような存在なのも分からない。あの剣豪の人は除いてだが殆どの人は杖を持っている。兵士でさえ杖だ。しかも剣ではなく短剣をぶら下げてるあたり必要ないのかもしれない。剣と魔法の世界って言うより魔法の世界だな。
「よし、落ち着いたし称号とかの説明見るとするか」
〈生み出す者〉
人を作りし創造者。
〈地獄迷宮突破者〉
地獄迷宮100階層をクリアした者に贈られる称号。
〈白神龍王討伐者〉
白神龍王を倒した者に贈られる称号。
いやだからクリアしてないのに何故?それと俺が討伐したわけじゃないのに俺まで称号貰えてるよ。謎だな。〈生み出す者〉に関しては俺がミズナを想像して作ったからかな。次は加護だな。これ一番重要!ミズナがああなったのもこれのせいだと思うから!
〈召喚の加護〉
召喚された者は全てのランクが〇☆◇になる。
神様バグってますよこれ?まさかとは思うけど次に生み出した人もミズナみたいにバグるとか…?ヤバイなこれ。間違えた使い方したら世界とか普通に支配できるレベルじゃん…しないけど。最後はこれだな。
〈白神龍王の加護〉
光魔法のランクがSSになる。相手の光魔法の攻撃を自身の光魔法のランクによって無効化する。現ランクなし。
これはまさか俺が光魔法を習得すれば勝手にSSになり、更にはそのランクによって相手の光魔法を無効化できると。チートだな。確か豪華のやつがAだったからその場合俺はSS。と言うことは豪華の光魔法は俺には効かないと言うわけか。凄いな。ま、強くても俺の目的は取り敢えずこの世界を自由に満喫することだし俺達の邪魔をする奴は全て倒せばいい…なんてね。今はまずドリーさんとの約束を守らないとな。それから気ままに旅でもするか…3人が心配だな。何もなければいいのだが…。
「はぁ〜…今は目的を達成しないとな。それからだ。よし、まずはこのリングで体を綺麗にして…。ミズナもこれ使う?」
「ん、私は大丈夫。ヤ〜…終わった」
ミズナの周りがふわりとなり、青色の水柱が立つと、ミズナを包むようにして最後には何も無かったかのように消えていく。すると次は生暖かい風が一瞬吹いて濡れていたミズナを一瞬にして乾かす。
「もう何でもありだな。さて、今はもうこんな時間だし寝るか」
「ベッド出した。一緒に寝よマスター」
ミズナは隆介が寝よと言った瞬間1人用ベットを取り出しそこにちょこんと座る。そしてベットをポンポンとし、首をこてんとさせながら隆介を誘う。
「えっと2つお願いしても〜…」
「一緒に寝よマスター」
「あの〜」
「一緒に寝よマスター」
「ミズナさん?恥ずかしいと言うか〜なんと言うか〜」
「一緒に寝『分かった分かった。一緒に寝よミズナ』やった…」
ボソッ
「うん?なんか言った?」
「何でもないマスター。ムフフ」
無表情で分からないが今のミズナはどこかご機嫌な様子だな。何かいいことでもあったのかな?
「さて、寝よっか。おやすみミズナ」
「ん、おやすみマスター」
1人用ベットに2人は引っ付くようにして眠りにつく…が数分後隆介は寝れない状況になっていた。
何でまた裸になってるの!?え、数分前は服ちゃんと着てたよな!?これはまずい…。
今の状況は裸になっているミズナが隆介の足と腕を絡ませるようにして寝ており、整った綺麗な顔がすぐ近くにあった。更には小さな胸が腕に当たっていた為、柔らかいのが制服越しでも伝わってくる。
う〜ん…気持ちよさそうに寝てるから起こすわけにもいかないし…だからって無理やり引き離すわけにはいかないよな。
「どうしよう…」
「ん…マスター行かないで…」
「うん?」
起きたのかと思って横を見たがその様子はなく、スヤスヤと寝ていた。が、隆介の腕を更にギュとする。
本当に寂しかったんだな…。
スヤスヤ寝ているミズナの頭撫でて自分も寝ようと目を瞑る。すると、外からガサ、ガサと音が聞こえてきた。
うん?こんな時間に誰かいるのか?
「クソ、クソ!あのガキなんで死んでないのです!あの毒を喰らっときながら何故まだ生きている!おかしい…おかしすぎます!!」
外から男の声が聞こえてきて、何かをぶつぶつと呟きながら何処かに歩いて行った。
今毒と聞こえたような…毒…まさか!
「ごめんミズナ、ちょと行ってきます」ボソッ
なんとかミズナを引き剥がして出口まで向かう。勿論上のブレザーはミズナが掴んでいたので、カッターシャツになって外に出る。
あの男どこ行った?
「ああ!魔王様!私にもっともっと力をお与え下さい!あのガキをもっと苦しませて殺せる力を!この私の綺麗な腕に汚いガキの腕が…思い出すだけでも虫唾が走ります!謝ってたが私は許さない!それと…誰があのガキの毒を解毒したのか知らんが絶対にあのガキに罰を与える!ハハハハ!」
赤いフードを被り、全身真っ赤なローブを着た男はトトさんとあの子の家の前で狂いながら窓を覗いていた。その先に見えるのはまだ寝ているあの少女だった。
なんて野郎だ…。たかが腕が当たっただけで…。聞いてる限りあの子もちゃんと謝ったみたいだけどあの男は許さないつもりなんだな。でもどうしよう。今の俺であいつの対処できるのか?一応ステータス見てみるか。時間もないしさっとね。
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名:ギル 年齢43歳
性別:男
種族:魔人
ランク:A+
体力:B+
魔力:A+
腕力:B
敏捷:B
防御:B
魔防:A+
運: C
魔法:〈闇魔法A+〉
ユニーク魔法: 〈束縛_〉〈使役_〉〈闇霧_〉
称号:〈魔王を崇める者〉〈元人〉〈人を辞めた者〉〈殺人鬼〉〈魔人化〉
加護:〈魔王の加護〉
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〈束縛を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
〈使役を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
〈闇霧を確認しました。習得しますか?はい・いいえ・保留〉
ツゥ!まじかよあいつ魔人!?色々とヤバイ!それにあの豪華と同じA+!?ヤバイヤバイヤバイ!今の俺じゃーあいつには敵わない!でもトトさんとあの子を助けないと!それと全部保留で!
〈承知しました。保留に移動します〉12/∞
「おい!こんな夜遅くに何をしている!」
「んー?誰だい君は?」
「お前に名乗る名前なんてない!もう一度言う!答えろ!お前はここで何をしている!」
「私ですか?私はそうだね〜そこにいるガキを殺しに来たと言っておきましょう」
男は窓越しに見える少女に指を指してあっさりと隆介の質問に答える。
「何で殺す必要がある?」
「質問が多い人ですね〜」
「……」
「まーいいです。それはあのガキが私の…私の綺麗な腕に汚い手が触れたからですよ!ゴミの分際でこの高貴なる私の腕に!絶対に許さない!ですから私はポイズンマウスを束縛して、使役を発動さてから襲わせたのですが…何故か死なないのですよね〜。だから今からあのガキをもう一度殺そうとしてるのですよ?分かりましたか?ですので私の邪魔をするのでしたら殺しますよ?」
男は周りに紫色の霧を出現させ、邪魔をしたら殺すといった雰囲気を作り出していた。
どうしたものか。俺では倒せない…いや待てよ?なんか忘れてると思ったら迷宮で実験してなかったアレを!こいつにやってみるのもありだな。死なないでくれよ…。
「ふん!黙りですか。まーなにもしなければ貴方を殺さないのであのガキが死ぬところでも大人しく見てるといいですよ。では…ん?」
「ランク操作…」
「なんです?」
男が少女に向かって魔法を発動しようとした瞬間隆介はある魔法を発動させる。
実験を始めようかギル。この世界では絶対に必要なランクがなくなった時、どんな影響を受けるのか。迷宮では美菜達がいて使えなかったけど、ここでちょうど使えるな。始めようか楽しい実験を!…うん、俺この博士キャラみたいなの無理だやっぱり。普通に試してみるか。
「指定!」
〈承知しました。〈ランクA+〉の1つを10DOWNさせます〉2/12
=====================================
名:ギル 年齢43歳
性別:男
種族:魔人
ランク:消滅
体力:B+
魔力:A+
腕力:B
敏捷:B
防御:B
魔防:A+
運: C
魔法:〈闇魔法A+〉
ユニーク魔法: 〈束縛_〉〈使役_〉〈闇霧_〉
称号:〈魔王を崇める者〉〈元人〉〈人を辞めた者〉〈殺人鬼〉〈魔人化〉
加護:〈魔王の加護〉
状態:死
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「何を言って…ウ!?ガァ!?な…なにが起こって…ケフゥ…」
隆介が男のランクを全部下げた瞬間…いきなり男がもがき苦しみながら生き絶えていった。その光景に隆介はゾッと背中に汗が流れる。
「…まじか。ほんの実験のつもりだったのに殺してしまった…。でもなんでだろう…初めて人を殺めたのに罪悪感すらなにも感じない。恐怖が勝ってたから?いや違う…分からない…でも…」
ギュと拳を握りしめて倒れている男の方をじっと見る。
でも俺は今ので正しいと思っている。罪もない人を殺すのは良くない。それにあいつの称号には〈殺人鬼〉と書いてあった。今まで何人殺してきてかは知らない。魔人にだっていいやつは居ると思う。魔物にも。だけどあの魔人は違う。今俺の目の前であの子が殺されかけていた。それを助けただけだ。それでいい。そう自分の中で納得させるしかない。これで本当にいいんだ。まだ元の世界に戻る手がかりも見つけてない。この先今みたいに人を殺してしまうこともあるかもしれない。けどそれも全部受け入れての旅だ。とと、この魔法も危険だから重要な時以外には使わないでおこう。
「さてと、明日の朝からここを出てレストリア王国に行かないとな。この男は一応〈無限収納〉に入れておくか」
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とある商店で、顔が脂ぎって、まるっと太った男が大柄の男と揉めていた。
「で、ですから私の店ではそう言ったものは〜」
「あん?せっかく俺がこいつを捕まえたって言ってんのに買い取ってくれねーのか?それともなんだ?こんなクソみたいな物は売れないってか?」
「い、いえ、その…処分するのにもお金がかかりまして〜あはは…」
「ちぃ!それぐらいいいだろ!兎に角金を渡せ!そうしないとお前の店を燃やすぞ?」
「そ、それだけは勘弁を!」
「じゃーはやくしろ!」
大柄な男は店員を脅すように杖を取り出し、店に構える。その光景に慌てて店員は承知して燃やすのをやめさせる。
「で、では大銀貨4枚と小銀貨1『あん?』ヒィー!?で、では大銀貨5枚で宜しいでしょうか!こ、これ以上は出せません!」
「ふん!まーいい。こんなボロボロなやつでもこれぐらいの金になれば充分だ。またな雑魚」
「は、はい!またのご来店をお待ちしております!」
大柄の男はお金を受け取ると杖をしまい、そのまま帰っていった。
その後ろ姿が見えるまで頭を下げていた店員も見えなくなると、大きなため息を吐いて、自分を落ち着かせる。
「はぁ〜…なんて恐ろしい。さて、これは流石に商品にできませんね。処分する為の部屋に入れておきますか。せっかくの商品が台無しなのは悲しいですがこればっかり仕方ありません。放っておいても直ぐに死ぬと思いますからね。もっと完璧でしたら高く買い取ってあげたのですがね〜」




