第11話 出発と戦闘
「う〜ん!…」
小鳥が鳴く朝、椅子に座って寝ていた隆介は眠たそうにしながらも背伸びをして起きる。
腰が痛い…やっぱ椅子で寝るのダメだな…ふわぁ〜…〈浄化〉。よし、今の時間は8時ちょと過ぎか。次にミズナは…あれ?どこ行ったんだろ?
ミズナが寝ていたベットの方に顔を向けるがミズナはおらず、ブレザーも無くなっていた。周りをキョロキョロしていると、外からなガヤガヤと村の人達の声が聞こえてくる。
「ミズナ達は外か。毛布をかけてくれたお礼を言わないとな」
扉を開けて外に出るとそこには男達が一斉にミズナの作ったであろう炊き出しをガツガツと食べていた。
「うまい!朝からこんなにも美味しい食べ物が食べられるなんて!」「ああ!幸せすぎる!」「それにミズナさんはかわいいときた!」「美少女の料理を食べられるなんて!」「もう最高!」
朝から賑やかでよく食べる人達だな〜。にしてもこの匂いはあれしかないな。
「さてミズナは〜いた。ん?何で俺の制服着てるんだ?」
隆介の目線の先には何故か白いローブではなく隆介のブレザーを着て、村の人達に食べ物配っていた。
なにしてるのだが…はぁ〜まーいいや。兎に角俺も手伝うか。他の人も手伝ってくれてるみたいだけど俺だけ手伝わないわけにはいかないしな。
「おはようミズナ。毛布ありがとな」
「ん、マスターおはよう。お礼は要らない。ギュッ」
「ちょ!?ミズナ皆んなの前で恥ずかしいって!」
いきなりギュッとハグをしてきてミズナに驚き、顔を真っ赤にしながらも周りを見渡すと、手を止めてこちらをじっと見てくる村の人達がいた。
「スンスン…ん、補給完了」
「補給って…何の…」
「内緒」
満足したのか嬉しそう?にしながら隆介から離れて、再度村の人達に食べ物を配っていく。そんな2人の光景を見ていた男性達は涙を流し、悔しそうなしながらもご飯を食べており、女性達はキャーキャー言いながらその光景を見ていた。
いきなり皆んなの前であれは恥ずかしい…。でも何とか耐えた俺!よし!…う、ううん!さて、手伝いをしようと思ったけど逆に俺は邪魔になりそうだな。
「ほほほ、おはようございますゼロさん。ミズナさんと仲睦まじいの〜。昨日は良く眠れましたか?」
「これはこれはおはようございますケートスさん。はい、おかげ様でぐっすりと眠れました」
「それは良かったです。昨日は本当に感謝します」
「いえいえ、こちらこそ泊めてもらいありがとうございます。それと今日出発しますね。1日お世話になりました」
「そ、そうですか…。こちらこそありがとうございます」
一瞬ケートスの顔が暗くなったが、直ぐに笑顔になりそのまま村の人達の所に戻って行った。その表情に隆介は気づいてはいない。
さてと、朝ご飯食べたらみんなに挨拶して王都に向かうとするかな。ミズナにも頼みたい事またできたし一度部屋に戻って作ってもらはないと。
「あ、あの!」
隆介は嬉しそうにご飯を頬張る村の人達を見て、微笑んでいると、後ろから幼い女の子の声が聞こえてきた。
「うん?」
「ほらリア、ゼロさんにお礼を」
「う、うん!あの!昨日はありがとうゼロお兄ちゃん!」
後ろを振り向くとそこにはトトの背後に隠れていた茶髪ポニーテールの小さな女の子が顔を真っ赤にさせ、勇気を振り絞ってお礼を言ってきた。
この子は…良かった、無事に回復したんだね。
「どういたしまして。もう体は大丈夫かな?」
「だ、大丈夫…」
笑顔で答えるとリアは恥ずかしいのかまたトトの背後に隠れてしまった。
恥ずかしがり屋さんなのかな?
「すみませんゼロさん。リアは人見知りというか何というか…」
「いえいえ私は気にしないので大丈夫ですよ」
「すみません。ほらリア、次はミズナさんの所に行くよ」
「その…ゼロお兄ちゃんありがとうね!」
「うんうん。朝ご飯もあるから食べていってね」
「うん!」
「何から何までありがとうございます。では失礼しますねゼロさん」
そう言うと2人は、朝ご飯を村の人達に配っているミズナの元に歩いていった。
さてと、俺も朝ご飯食べるか。
ミズナを手伝っていた女性に朝ご飯を貰い、少し離れた所にある中ぐらいの石に座る。
ふぅ〜ふぅ〜…うん美味い!やっぱりなんと言ってもカレーだな。沢山作れるし、これなら子供大人関係なく喜んでくれるな。と思ったけど朝からカレーは中々のチョイスだな。
「あ、あの!ゼロさん!少しよろしいですか!」「私もいいですか!」「ちょ!私が先に来たのよ!ゼロさん私も聞きたいことが!」「ねぇねぇ〜ゼロさん〜私も聞きたいことがあるの〜」「私も私も!」
「え、その〜…な、何でしょうか?」
カレーを頬張っていると、いきなりわらわらと若い女性達が隆介の近くに来て、キラキラとしていた。更には胸が大きい女性は腕にわざと当てるようにして、グイグイと押し付けている。
え、なんか怖いのですが…。それに恥ずかしい!
「ゼロさんは彼女いるの!」「ミズナちゃんとどんな関係!」「結婚は考えてますか!」「私の婚約者になって下さい!」「私もお願いします!」
「あ、あの〜…いっぺんに言われましても…あはは…」
「む、マスターは私の」
「うおっ!?」
いきなり後ろからグイッと右腕を引っ張られ、ビックリした隆介は、カレーを落としそうになるが何とか落とさず、落とさないようそのままミズナに引きずられていく。
「いきなりどうしたミズナ…」
「……」
「ミズナ?」
ミズナは隆介の答えには答えず、ずっと若い女性達の方を見ていた。その間ギュッとしたまま隆介の腕を離そうとしなかった。その光景を見ていた若い女性陣はポカーンとしたまま隆介とミズナの事を見ている。
この空気はなんだろう…。
数分間沈黙状態になっていると、1人の女性がパァーと笑顔になり嬉しそうにして口を開く。
「やっぱりそうなんですね!とても素敵です!」
「えっ」
「すみませんでした。可愛い婚約者がいるのにも関わらずゼロさんを取ろうだなんて…ごめんなさいミズナちゃん」
「…ん」
「ほら行くよ皆んな。邪魔しちゃ悪いわ」
「「「「は〜い」」」」
そう言うと女性たちは隆介の側から離れていき、ミズナと二人っきりになる。離れていく間もずっと隆介の右腕を掴んでおり、女性達が去っていくのをじっと見ていた。
さて、色々聞きたい事があるけど取り敢えず部屋に戻って一息ついてから聞くか。今は朝ご飯と片付けをしないと…と言ってもミズナが魔法で綺麗にして収納するだけだけど。本当俺何もしてないな…。
「ミズナ、理由は後で聞くけど今は朝ご飯食べて片付けないとな」
「マスター怒ってない?」
「何で?」
「私がこんな事したから…」
不安そうに隆介の顔を覗き込んで様子を伺っていたミズナは、更にギュッと隆介の右腕を掴み、アホ毛をシュンとさせて落ち込んでいる。すると急に頭に手を置かれ、ミズナはビクッとなる。
「別に怒ってないよ。ただ少し気になってね。それに何か理由がありそうだし部屋に戻ったら聞いてもいいかな?」
「マスター…。ん、理由ちゃんと言う」
「頼んだよ」
そう言ったミズナの頭をポンポンとした隆介は、優しく微笑んでゆっくりとミズナを引き離す。
ん、少し寂しい…。
「ほら、まずは一緒に食べよ。冷めたら美味しくなくなっちゃうからね」
「ん、了解マスター。いただきます」
心地よい風と草木が揺れる音を聞きながら隆介とミズナの2人は一つの石に座って朝ご飯を食べる。
風が気持ちいいな。平和なのか平和じゃないのか分からなくなるほどまったりとした時間だ。早く豪華にこの世界を平和にしてもらわないと。そうしたらこの世界のランクという概念を変えて、皆んなが平等になる世界にしてくれるかもしれないしな。あいつには散々やられてきて正直嫌な思いもしたけど、期待だけはしておこう。ルルカの為とならば動いてやってくれそうだし。
朝ご飯も食べ終わり、雲一つない青空を眺める。
「マスターどうしたの?」
「いや、何でもないよ。そうだミズナ。今聞くけど何で俺の制服着てるの?」
「あったから」
「な、なるほど…?」
うん、突っ込まないでおこう。
そのまま無言となり、またカレーを食べ始める。数分後、カレーを全部食べた2人は立ち上がり、村の中心に歩いていく。
「あ、ゼロさんミズナさんカレエと言う食べ物とても美味しかったです!」
「ゼロお兄ちゃん!ミズナお姉ちゃん!カレエ美味しかった!」
歩いていると、前からトトとリアが笑顔で走ってきた。そして2人はカレーを食べた感想を嬉しそうに話す。
2人とも喜んでくれてよかった。ん?
「それは良かった。リアちゃんほっぺにご飯粒付いてるよ」
「えっ…あっ…」
「ほら取れた」
「あ、ありがとうゼロお兄ちゃん…」
「どういたしまして」
トトは気づいていなかったのか、リアのほっぺにはご飯粒がくっついており、それを隆介が取ってあげると、驚いた顔をして顔を真っ赤にさせる。
「さて、私達はそろそろ王都に向かう準備をしなければなりませんので、大釜などを片付けをした後はもう行きますね」
「ゼロお兄ちゃん達行っちゃうの?いやだ…行かないでゼロお兄ちゃん!」
リアは泣きながらいきなり隆介の腰にギュッとして、行かせないようにした。
う〜ん…どうしたものか…。
隆介が困っていると、隣にいたミズナがリアの後ろに移動して、頭を撫で始めた。
「リアちゃん」
「グスゥ…」
「マスターは世界を旅してる」
「……」
「だけどいつか旅の終わりがくる。だからその時またここに来る。約束」
「本当…?」
「ん、本当」
隆介の腰にギュッとしていたリアは、ミズナの言葉を聞いて、ギュッとして腰に巻きついていた手を離し、ミズナの方に体を向ける。そして、じっとミズナの瞳を見つめる。
「ゼロお兄ちゃん達またここに戻ってくる?」
「ん、戻ってくる。その時一杯話をしよ」
「うん!約束だよミズナお姉ちゃん!」
「約束」
二人はお互い指切りをして、ミズナは相変わらず無表情だが、リアの方は満面の笑みで指切りをする。
約束か…俺も約束を守れたのかな…。
「ゼロお兄ちゃんも…いい?」
「うんいいよ」
隆介もリアと約束をして、トトさん達と別れる。
1日いただけだけど村の人達と仲良くなれたらからここを去るのも寂しいな。でもドリーさんとの約束もあるからゆっくりもしてられない。
部屋に戻った2人は早速準備をしていく。
「ミズナ、さっきのことなんだが…」
「マスターがこの村から出ていくことに皆んな焦っていた」
「えっ…」
「だから引き止めようとマスターを誘惑していた」
「……」
俺を誘惑…?でも一体何でそんな事を…。
「でも何でそんな事するんだ?」
「マスターにはあの子を治せるだけの力がある。食料も沢山あると分かっている。そしてマスターがこの村にいれば安心して暮らせる。だからマスターを引き止めていた」
「俺なんて何もしてない…。全部ミズナがいなかったら何もできない。俺はいても役に立たないのに何で…」
言ってて悲しいけどこれは事実。俺は何もしていない。全てミズナのおかげでこの村に笑顔が戻ったんだ。何もできない俺がいても意味ないはず。
「違う。マスターは役に立たなくない。私はマスターの側にずっと入れればそれだけで幸せ。マスターがいなかったら私はいない。全てマスターのおかげ」
ふふ、と無表情だった顔が少し緩み、微笑むミズナの姿を見てまた隆介はドキッとしてしまう。
ツゥ!?何て良い子なんだ!よしよししたくなる!ヤバイ惚れそう!
「そ、そうか。なんかありがとな」
「ん…」
「よし!理由はなんとなく分かったしそろそろ行くか!」
「了解」
準備を終えて2人は出て行こうとするが、ふと思い出した。
危ない危ない、忘れる所だった。この村を守る為の道具を作ってもらわないと。
「とと、その前に、頼んでばかり悪いけど作って欲しいものがある」
「何?」
「それは…」
ミズナに頼んで数分…。背を向いて魔力を込めていたミズナの手元に、眩い光が輝いた。
「ん、できた」
「おっ!見せてもらってもいいかな?」
「いい」
ミズナの手に持っていたのは、小さな赤色のお守りだった。真ん中には[魔除]という文字が書いてある。
これだよこれ!
「流石ミズナだな!さてさて性能を見てみるか」
『魔除のお守り(オリジナル)』
ミズナによって作られた魔除のお守り。???以下の敵対的魔物を全て寄せ付けない。効果範囲???
「…よ、よし。これをケートスさんに渡してレストリア王国に行こうか」
「ん」
「あ、ミズナ、そろそろ制服返してくれないかな?」
「……ん」
少し間があったが、渋々隆介の制服、ブレザーを脱いで、隆介に渡す。そして、空間を作り出し、その中から神々しい白いローブを取り出して羽織る。隆介は首掛けカバンにブレザーをしまった後、首に掛けて水菜と一緒に扉の前まで歩いていく。
あの魔除のお守りについては何も言わない。んで、何故〈無限収納_〉があるのにこの首掛けカバン、アイテムバックを作る必要があるの?と思うかもしれないけど、この首掛けカバンを作ったのには理由がある。の、前にまずは種類から説明していこう。
1つ目は今首に掛けている首掛けカバン…アイテムバックと言った方がいいかな。これはカバンや箱などに〈空間魔法〉を付与した、いわゆるマジックアイテムというもので、見た目よりも多くのものを格納できる。〈空間魔法〉のランクによって入る量も変わるみたい。確か渡された時のアイテムバックはC+で100だったからCだと90なのかな?
もう1つは〈収納_〉だ。これは使用者の魔力のランクによってサイズの変わる亜空間を作り出すことができる。例えば俺が魔力のランクがC+で、ユニーク魔法〈収納_〉を持ってたら、ランクC+分のアイテムを収納する事ができる。これも100入ると分かった。うん、俺は持ってないからミズナに教えてもらった。
最後はこのバグ魔法の〈無限収納_〉で、これは無限に物を入れる事ができる〈収納_〉の上位互換だな。さて、これを何故作ったの?と思うかもしれないけど理由を言おう。この村の人達から聞いた話では、〈収納_〉を持っている人はとても少なく、もし見つかれば王国側が黙っていないと言っていた。それほどまでに貴重なのだとか。だからアイテムバックも本当に貴重な物だと分かった。あ、勿論作ったのはミズナです…はい。それにこのバグ魔法を持ってると他の人に知られ、面倒なことになりかねない。他にもいくつものユニーク魔法を持ってる人はこの世界ではとても珍しく、更には持ってても2つ以上持ってる人は少ないと聞いた。ウルド王と豪華は確か5つ持ってた覚えがある。豪華は〈多言語理解_〉を抜いて。豪華と王様ってこの世界ではまさか最強?ヤバイな。敵に回したら怖いわ〜…。うん。
因みにこのアイテムバックの性能は言わずとも壊れていると言っておこう。
ガチャ。
「お待ちしておりましたゼロさん」
誰に言っているのか分からない脳内説明を悲しくした後扉をゆっくりと開けると、目の前には村の人達が笑顔で待っていた。
え、何これ!?
「な、何でしょうか?」
「行かれる前にコートと靴をお渡しにと。ゼロさんの格好は前勇者様と同じセイフクと言う物を着ておられました。ですのでもし勇者様である事を隠してらっしゃるのでしたらお使いになって下さい。これは前勇者様が使っていたコートと靴です。このコートと靴は次の勇者様が来たら渡してくれと前勇者様に言われました。きっとお役に立つでしょう」
「…すいませんケートスさん。私は勇者ではありません…。勇者召喚に巻き込まれたただの一般人です…。ですのでそんな貴重な物は受け取れません」
隆介は拳をギュッとして、下を向く。
そう、俺は勇者なんかではない。称号もないし、本当にただの一般…いや、それ以下の存在として…。
「…私はゼロさんが勇者であろうとなかろうと再びこの村に笑顔が戻った事に感謝しています。それにリアを救ってくれた。そのお礼として受け取ってはくれないでしょうか?」
「…分かりました。ケートスさん、そして皆さん。1日でしたがとても充実した1日でした。本当にありがとうございます。そして私からもお礼をさせて下さい」
受け取ったコートと靴をアイテムバックにしまった後、お礼にと、制服のポケットから取り出したお守りをケートスに渡す。それを丁重にケートスは受け取り、優しくギュッと包む。
「ありがとうございますゼロさん。大事にします」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。では、私達は出発しますね」
「はい、またどうかお越しになって下さい」
「ゼロお兄ちゃん達またね!!」
「ゼロさん、ミズナさん、また来るのを楽しみに待ってますね」
村の人達に見送られながら、村を後にした隆介達はレストリア王国に向かい、舗装された道を歩いていく。
う〜ん!今日もいい天気だ!風も気持ちいいし、この自然!といった感じが堪らん。
そんな感じで風景やらを楽しみながら歩いて何事もなく数時間歩き続けていると森が開け、目の前には大きな石壁がそびえ立っていた。
「お〜!!あれがレストリア王国か!」
「大きい」
「よし!レストリア王国に入る前にこの格好じゃ目立つみたいだからケートスさんがくれたこのコートと靴に着替えるか」
早速アイテムボックスからコートと靴を取り出す。
このコートはトレンチコートで、色は黒、厨二病感満載の飾りと模様、ダブルバック付きベルトが付いている。
うん…かっこいいにはかっこいいけど、これこの世界ではどう捉えられてたのかな?普通?このコート着てた前勇者って絶対に日本人で厨二病だろ。しかもこのコート着たら目立つ事ない?前勇者のコートならなお目立つ可能性が…。ダメだダメ!折角俺の為にと渡してくれたケートスさんに申し訳が立たない。着るとするか。んでこの黒い靴はブーツだな。これは普通でよかった。冬用とかで見るやつだ。
早速近くにテントを出してその中で着替える。ミズナが道に家を建てようとしたのは焦った。うん、何でもありだけど流石に道に建てたらダメだよ。
「着替え完了!」
「ん、マスターかっこいい」
「お?そうか?ありがとうミズナ」
着替え終わり、テントを回収する。
凄いなこのコート。全く暑さを感じない。それになんだか体が軽くなったな。早速効果を確認見てみるか。
『黒龍神王のコート』
全ての龍王の頂点に立つ黒龍神王から作られたコート。体力、魔力、腕力、敏捷、防御、魔防をSSSランクにする。全ての魔法ランクがSSSになる。自動温度調節。〈黒龍神王の威圧_〉を獲得可能。(登録者・天草隆介)使用者は〇☆家しか使えない。
〈黒龍神王の威圧_〉を獲得しました〉
…うん。強すぎるでしょ。なんか仕組まれてるようで怖い!村の人達には悪いけど…。この靴も見た目はかっこいいよりの靴だけど普通のやつだよ…ね?怖いけど見てみよ。
『黒龍神王の靴』
全ての龍王の頂点に立つ黒龍神王から作られた靴。装備時、魔力消費無しでの飛行が可能になる。(登録者・天草隆介)使用者は〇☆家しか使えない。
…うん、普通の見た目してても効果はエグい。魔力消費なしでの飛行ってずっと空を飛べるやつやん。ここでは目立つから飛ばないけど。もしかしたらまだ他にもあるのかな黒龍神王シリーズ。あって損は無いけどこれ人間辞めるレベルだな…。
と、そんな考えてる側から何やら頭の中に女性の声が聞こえてきた。
『受け渡ってみたいですね。良かったです』
「…え、神様?」
「ん?」
「あ、いや何でもないミズナ」
『渡ったって…本当に神様が?』
『はい、村の方達には申し訳ないと思っております。ですが隆介様の為と少し記憶を少し弄って渡させていただきました。ご迷惑だったでしょうか…?』
やっぱりか…この前勇者が着ていたコートと靴があの村に置いてあったら全世界の人が取りに来るはず。迷惑か迷惑かじゃないと言ったら迷惑ではないけど、流石に村の人達の記憶を弄ってまでは良かったかな…。
『すいません…』
『あ!す、すみません!ありがたく受け取らせていただきます!』
『安心してください。あの村の人達の記憶を少し弄りましたが、そのお礼として祝福をさせていただきました』
『そうでしたか…そうだ!』
そう!気になってた事があったんだ!あの方って誰だろうとずっと思ってたんだよね!
『あの〜すいません神様。昨日言ってたあの方ってどなたのことでしょうか?それにバグ魔法がどうとか…』
『……』
『神様?』
『あ、はい!』
隆介が質問をしたが反応はなく、もう一度神様を呼んでみると、慌てた声が脳内に聞こえてきた。
『えと、昨日言ってたあの方って…誰でしょうか?バグ魔法も…』
『あ、あの!そのですね!何でもありません!そう!聞き間違えですよ隆介様!で、では私は忙しいので失礼しますね!』
『えっ!?』
その後何回か脳内で神様を呼んでみるが一切反応はなく、諦めることにした。
神様の反応を見る限り言ってはいけないような内容を言ったみたいだな。でも何であんなにも焦ってたんだろ?ま、取り敢えず忙しいみたいだしゆっくり話せる機会があればその時にでもまた聞いてみるか。
「マスター誰かに見られてる」
「本当か…」
「ん、私から見て右に気配を感じる」
「流石ミズナだな。気づかなかったよ」
2人はお互い小さい声を出して、相手に聞こえないように会話をした後、動きが怪しまれないようにいつも通りに動く。
どうしたものか…こっちから手を出さずに向こうから手を出してきたら倒すか、それとも今行動をして向こうに突っ込んでいくか。…いや、もう答えは決まってたな。
「ミズナ、相手は俺達に危害を加えようとしているのか?」
「ん、マスターと私に殺気を向けてる。殺る気満々」
「分かった。ちょうどこの装備の性能を試してみたかったんだよね」
テントをアイテムバックにしまい、気づかないフリをして道に沿って再び歩き出す。
その瞬間!
「カキーン!!」
隆介目掛けて何かが遠くから飛んできたと思えば見えない壁に当たり、そのまま地面に落ちていった。落ちた物を確認をしてみると、赤く鋭いナイフが落ちていた。
「いや〜気づかれてましたか〜」
「誰だ」
茂みから出てきたのは真っ黒なローブを着た男がフードを深く被って出てきた。
「あ〜僕ですか〜?それは秘密ですよ〜」
「……」
「まぁ〜まぁ〜そんなに怖い顔で見ないで下さいよ〜。ほら?怖い顔してると折角の顔が台無しになっちゃいますよ〜?」
何がおかしいのか口元はにやけており、ほのぼのと話し始める相手に隆介は思った。
こいつ一見まったりしてるように見えるが一切の隙がない。相当やり慣れてるな。それにこいつが危ない奴だと直ぐ分かった。
「さてさて〜本題に入りましょう。今すぐその手に持っているアイテムバックとそこの女を僕達に渡していただけないでしょうか〜?」
僕達と言った瞬間そいつの仲間であろう男達がわらわらと森の中から出てきた。やはりと言うべきか全員杖を持っている。
この世界本当に魔法が中心の世界なんだな。ウルド王国の兵士達でさえ杖持ってたし。一部剣を持ってる奴もいたけど本当にごく僅かだったな。
「おやおや〜?怖気ついてしまいましたか〜?ま〜無理もありませんね〜。この人数ですもんね〜?諦めましょうよ〜?」
挑発するかのように真っ黒なローブの男とその仲間達はニヤニヤとしながら隆介達のことを見下していた。
ふふふ、僕達に絡まれたことを後悔するのですよ〜。全てはおか…ではなく国王の為です。
「いや、ちょうど運動したかった気分だ。お前らの相手をしてやろう」
「あっ?」
ニヤニヤとしていた男達がその言葉を聞いてイラっときたのか、イラついた顔に変わった。
「ミズナここは俺1人でやらせてくれ」
「ん、了解マスター」
「ほぉ〜?貴方1人でこの人数をですか〜?舐められたものですね!お前達!あの女に傷は付けるな!あいつだけを殺せ!」
すると男は仲間達に指示をすると、仲間達の杖が光だし、色んな魔法が隆介目掛けて飛んできた。その威力は大したものではないが、普通ならそれだけの魔法を食らえば死に至る。が…。
「ははは!どうですか〜?僕の仲間達は優秀でしょう〜?って死んだら喋れないか〜?大人しく渡したけばいいものを〜。さて、あいつのアイテムバックとそこの女を回収し『グアァ!』て…!?」
「不意打ちが来るのは想定内。闇魔法で幻覚を使って俺は後ろに回ったってわけよ。それで?まだやるの?」
「ちぃ…つまらない男ですね〜。ですが貴方が闇魔法を使える事はもう覚えました〜。次はありませんよ!」
隆介はいつの間にか男の仲間達の後ろに回っており、全て片付けた後最後に残った男の前に現れる。そして男は後ろを振り向き、全力で闇魔法を発動させるがそこにはもう誰もおらず、そのまま男が放った闇のレーザーは何本かの木を粉々に砕いていった。
「へぇ〜お前も闇魔法を使うのね。なるほど、なら反対の光魔法を使うか」
「何を言ってるのですか〜!闇魔法を使えるのに光魔法が使えるわけがないじゃないですか〜!貴方はどうかしてますよ〜!」
「そうなのか?」
「貴方はバカですね〜!ガキでも知ってるような事を知らないなんてね!」
声の位置を特定したのか再び男は隆介がいる方向に向けて闇のレーザーを放つ。
この男は本当にバカですね〜!何故このようなことも知らずに魔法を使ってるのか不思議ですよ〜!
「そっか。でも俺にはそれが可能なんだよな〜?」
「そんなわけがありません!絶対に不可能なことです!光と闇は敵対的存在!光は闇を吸収し、闇は光を吸収する!万が一…いや、絶対にその2つが関わる事はないのですよ!ハアハア…。貴方がバカ過ぎてつい言ってしまいましたよ〜」
男は熱く語る時に〜を伸ばさずハキハキと喋って、イライラとしながらも隆介に説明をしていた。その後落ち着いたのかも元の〜に戻る。
「絶対に不可能かは試さないと分からないよ?」
「何をバカな事を…」
「[〈神眼〉保留選択]」
〈承知しました。表示します〉
〈火魔法E〉
〈探知妨害E〉
〈王の威圧_〉
〈光魔法E〉
〈聖剣召喚_〉
〈風魔法E〉
〈威圧E〉
〈狂気化_〉
〈回復強化E〉
〈束縛_〉
〈使役_〉
〈闇霧_〉
[選択〈光魔法〉]」
〈承知しました。〈光魔法い… SSSを獲得します〉1/2
〈光魔法SSS〉
光魔法の極み。全ての光を操る事が可能。全ての闇を斬り裂く事ができる。
「これで絶対ではなくなったな」
「お前何を言って…!?」
男は驚いた、いやその光景を見て言葉をなくしてしまった。
あ、ありえない!どうしてこいつは光魔法を使えるのです!嘘です嘘です嘘です!こんな事があるわけがないのです!そう、何かトリックを仕込んでいるはず!
「なんだ、信じられないって顔をしてるみたいだけどほら?これで信じてもらったかな?」
なんと隆介の右手には光の玉、左手には闇の玉を出現しており、男に本当だと見せていた。
こいつは一体何者なんですか!クソ!いつも通りにしてたはずなのに計画が狂ってしまいました!ここは一旦引き下がるしか…いや私は天才だな。
すると男はヤケクソに隆介目掛けて何発もの闇魔法を放ち、周りに土煙を立たせる。
「魔法を何発撃っても俺には効かないよ。諦めてレストリア王国の情報を話してもらっても?」
「ふん!そう言ってるのも今の内ですよ!この女がどうなってもいいのですか!」
土煙が収まり、男の声がする方に顔を向けるとそこにはミズナを人質にして隆介を脅していた。
「今すぐ僕にアイテムバックと女を寄越せ!いや、その前に貴方には自分で死んでもらいます!そうでなければこの女の『今すぐ汚い手をミズナから離せ…』首を…ウグゥ!?カァッ…い、息が…ヒュー…」
いきなり男が苦しみ出し、震えが止まらないと思えば自分の目の前に立っている隆介を見て恐怖してしまった。そう、蛇に睨まれたカエル状態と言えば分かるだろう。
「早く汚い手をミズナから離せって言ってるんだよ…。殺すぞ?」
「ううううるさい!ハアハア…僕の計画を台無しにした挙句仲間達を!」
「……タイムアウトだ」
「早くし…」
次の瞬間ミズナを人質に取っていた男は頭と胴体が分裂し、頭は空に、胴体は地面にドサリと倒れていった。そして空に舞っていた頭も地面にボトッと落ちる。そして数秒後、胴体の首の付け根から勢いよく血飛沫が吹き出す。
「カチャン」
「……」
「マスター?」
「ミズナ、怪我はないか?」
「ん、マスターのお陰でない」
「良かった」
隆介は[機械の核]を刀に変形させて男の首を切断したのである。取り出して変形をさせ、首を切断した時間僅か1秒。敏捷がSSSであるためにできた神業である。切断した後は刀を鞘にしまい、元の[機械の核]に戻してアイテムバックに入れる。
「ミズナもああいう状況になったら手を出してもいいんだよ」
「ん、でも大丈夫。マスターがいる」
すると先程の男の匂いを消すかのようにミズナは隆介に甘えて、隆介の匂いを自分の服に付けていく。
ん、これで完了。マスターの匂いで一杯。
「ちょ、ミズナ恥ずかしいって」
「ムフフ、マスターの匂いで一杯」
「そ、そうか…ミズナが満足してくれて良かったよ。ほら俺も恥ずかしいしレストリア王国に行って休憩できる場所を確保しないといけないから行くよ」
「ん、了解マスター」
満足したのかミズナは隆介から離れて隣に並ぶ。そして2人は再び歩き出し、レストリア王国に向かって行く。勿論転がっている死体はアイテムバックに入れずに〈無限収納_〉に入れた。
なんでだろう。あの男にミズナが触れられた瞬間物凄い殺意が湧いた。でもそれはあいつが悪い。俺の大事な仲間を人質に取ったんだから。だけどこれから先このような状況になって判断が疎かになってしまったら命の危険にも繋がる。何とか今みたいにならないようにしないと。




