第七話 旅立ちの日
「さて、どうしたものか……」
私、ヴァイスは悩んでいた。
友との約束は果たされ、もはや人生の新たな目的はない。私は満たされてしまった。
友との約束は果たされ、今や残ったのは時を経て移り変わった世界のみである。
「くっく、生とは残酷なものだ。あれ程決着を渇望し、果たしたというのに。次なる戦いが見つからぬとは」
ヴァイスは、フォルテの世話を焼いていた間に考えていた。
ドレアムとの決着はヴァイスの使命だったといっても過言ではない。
しかしその決着は別の結末を迎えた。
まるで歴戦の戦士が引退するように、ヴァイスは人生の節目を感じていた。
「ふん、私の使命も終わり。今後の人生は余生となるか。ならば折角だ、新たな世界を楽しませてもらおう」
ヴァイスは千年を経た世界を新たに旅立とうとしていた。友との決着はつき、最早彼を衝動させる欲はない。
ただし幸運にも、千年間を眠ったことによる世界の変革を楽しむことができる。
ぶらりと旅に出るのも悪くないかもしれない。
「ヴァイスさん、これからどうするのですか? 千年を眠ったとお聞きしております」
「そうだな。もはやする事もない余生だ。しかし先日眠りから覚めたばかりでもある。この変革した世界を放浪するだろう。強者に出会えれば、それもまた楽しみになるだろう」
ヴァイスはまた新たに眠る気にはならなかった。
それに新しい世界には、新たな強敵が現れ、ドレアムのように最強を巡る戦いとなるかもしれぬ。
フォルテという好敵手がそれを証明している。
「ところでフォルテ、君はどうするのかね? 聞けば父の代理となるためにこの山に隠遁していたのだろう?」
フォルテはヴァイスが来る約束の日まで、ただただゾーイ山に住み込み鍛錬を続けた。
ここ百年は山籠もりをして山から降りていない。フォルテの知る世界も少し変わっているだろう。
「そうですね。私の人生はもはやヴァイスさんとの戦いのためにありました。特に予定は作っていません」
そしてフォルテもまた、戦士ドレアムの娘である。
ヴァイスと戦い、鍛え得た力で強者と戦うこの悦び、覚えてしまったのだ。
ヴァイスは、フォルテの目を据えるように射抜き、見つめた。
「ふむ。私は君の意見を尊重しよう。フォルテ、君はどうしたいのだ?」
ヴァイスはフォルテの気持ちを汲み取っていた。
それは、闘争心だ。あれ程までに鍛え上げた実力、使わずにはいられないだろう。
ヴァイスと戦う実力を持つとは、そういう意味なのだ。
「ヴァイスさんと一緒に連れて行ってはくれませんか? 私も新たな強敵と戦い、実力をつけたい。そして貴方にリベンジしたいのです」
フォルテは意を決してヴァイスに希望を伝える。
ヴァイスはただ戦うのが好きなのだ。そして戦いに高貴な誇りを求めている。
そしてフォルテは、ヴァイスの全力を受け止められるように、更に強くなりたいと望んでいた。
「ふふ、良かろう。共に旅をしようではないか。極上の酒は稀に楽しむのが最も美味しく飲むコツだ。ゆったりと世界を旅し、強者に出会えばその美酒を楽しむ。そのような余生に、我が友の娘を道連れに楽しむのも一興だ。これからよろしく頼む」
「ヴァイスさん、ありがとうございます。私も山に籠っていましたから世界を知りません。共に楽しみましょう」
拳を通して戦った二人は気が合っていた。
フォルテもまた強者の一員なのだ。
それに、ヴァイスが見たところフォルテにはまだまだ伸びしろがある。
フォルテが更に実力を身に着け、リベンジする日が楽しみで仕方がないという所が本音だ。
「さて、では行くとしよう。ついてきたまえ、フォルテ」
◇
エピローグ:旅路の果て
二人は世界へ旅立ち、様々な出会いと戦いを経験した。ある日は強敵と戦い、ある日は旅の風情を楽しんだ。
そんな二人が旅に出発してからしばらくたった時、世界中である噂がささやかれ始めた。
近頃は最強のヴァンパイアと最強のエルフの仲が良いらしいと。
戦いの実力は拮抗し、お互いが認め合っていると。
戦いの旅の最中、彼らの絆は深まり、いつしかパートナーとして認め合うようになる。
旅の出発は二人であった。
旅の終着は三人である、
戦いを愛したが、その圧倒的な力から満たされなかった男は、新たな運命を見つけた。全力をぶつけられる、対等で、誇り高いパートナーを見つけたのだ。
力を獲得し戦いの悦びを知った女は、最強の男に惹かれた。実力を鍛え上げ、最強の男を受け入れ、その強き意思は、男を変えた。
世の中は様々な運命がある。
確固とした意思、そのために力を磨き挑戦し続ければ、きっと満たされるだろう。
「戦いの日々も楽しきことだが、ふむ家族というものはまた別の生き甲斐を与えてくれたものだ。ドレアムよ、貴様との約束が始まりだった。貴様の娘と引き合わせてくれた事、感謝しているぞ」
「貴方、何を黄昏ているのですか。ほら、子供の稽古をつけてあげて下さい。最強の二人の血を継いでいるのですから」
終わり
これにて終了です。
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