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■ 第59話 「小競り合い」
ギリシャ世界。
沿岸部。
小規模侵食区域。
神兵達が巡回している。
以前のような大軍戦ではない。
今は。
“増やさないための管理”。
それが主流だった。
神兵の一人が海を見る。
黒い。
だが。
今日は静かだった。
その時。
海面が小さく揺れる。
全員が止まる。
沈黙。
黒い人影が、一体だけ現れる。
輪郭が曖昧。
目がない。
だが。
以前より安定している。
隊長が低く言う。
「固定確認」
神兵達が小声で神名確認を始める。
「ゼウス様」
「アテナ様」
「ギリシャ神話軍」
侵食個体が止まる。
数秒。
距離を測るように動く。
だが。
近づかない。
隊長が槍を構える。
投げない。
今は、“どこまで来るか”を見る段階だった。
侵食個体は数歩進む。
そこで止まる。
神兵達が記録板へ書く。
『本日接触距離 約十五歩』
『固定確認後 停止』
小さい。
本当に小さい情報。
だが。
最近はそれが重要だった。
侵食個体は、しばらくこちらを見ていた。
そして。
ゆっくり海へ戻っていく。
戦闘なし。
死者なし。
それでも。
確かに“戦い”だった。
――観測記録
観測層:第3層
対象:ギリシャ沿岸部
状態:局所接触観測段階
更新:
小規模接触事例を確認
変化:
侵食個体接近距離 安定傾向
評価:
固定対策 効果継続中
補足:
侵食個体は固定状態を警戒している可能性あり
追加記録:
神兵側観測精度 向上
結論:
局地管理段階 継続
(次話へ)




