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■ 第55話 「小さな神社」

現実世界。


日本。


住宅街の外れ。


小さな神社。


参拝客は少ない。


地元住民が時々来る程度。


それでも。


最近は少し変化があった。


若い人間が増えている。


雨宮 美咲が石段を登っていた。


手にはスマートフォン。


掲示板を見ている。


『神社で少し楽になった』


『鈴の音が効く』


『夢が薄くなる』


半信半疑だった。


だが。


確かに、自分は少し楽になっている。


鳥居をくぐる。


空気が変わる。


静か。


頭痛が少し軽い。


美咲は本殿前へ座る。


最近は、ここで勉強していた。


理由は単純。


“夢を見にくい”。


その時。


ポケットのお守りが小さく揺れる。


鈴の音。


ほんの僅か。


だが。


美咲は気づく。


周囲の黒い圧迫感が、少し薄い。


その時だった。


神社の隅。


黒い染みが浮かぶ。


沈黙。


“目”。


以前より薄い。


美咲は慌てない。


最近、掲示板で教わった。


深呼吸。


名前確認。


「私は雨宮 美咲」


小さく呟く。


“目”が揺れる。


さらに。


鈴の音。


風。


木々の音。


神社全体が静かに鳴っている。


“目”は、近づけなかった。


数秒後。


ゆっくり消える。


美咲は息を吐く。


「……本当に効いてる」


その時。


社務所の老人が、小さく笑った。


「最近、増えたねぇ」


美咲が振り返る。


老人は箒を持っている。


普通の人に見える。


それでも。


どこか落ち着いていた。


「若い子が来るようになった」


美咲は少し苦笑する。


「変な夢見る人、多いみたいで」


老人は空を見る。


黒い空。


ほんの少しだけ。


「騒がしい時代だ」


それだけ言って、また掃除へ戻った。


静かな神社。


小さい。


それでも。


確かに、“何か”を押し返していた。


――観測記録


観測層:第3層

対象:日本列島


状態:局地安定化段階


更新:

神社周辺侵食低下を継続確認


変化:

人類側自主対策定着傾向


評価:

日本側局所安定率 上昇中


補足:

音・信仰空間が侵食へ干渉している可能性あり


追加記録:

人類側利用者増加を確認


結論:

日本側局地抵抗構造 継続形成中


(次話へ)


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