■ 第51話 「掲示板の日常」
現実世界。
深夜。
『忘れないための記録板』
今日もゆっくり流れていた。
以前より人が増えている。
だが。
まだ小さい。
久世 恒一が画面を見る。
新しい書き込み。
『今日も名前確認』
『夢少し軽かった』
『神社行ったら頭痛減った』
日常会話のようだった。
以前までの恐怖一色ではない。
少しずつ。
“慣れ”が生まれている。
久世はコーヒーを飲みながら書き込む。
『無理しすぎるな』
『記録続けるだけでも十分』
すぐ返信。
『了解』
『最近、普通に学校行けてる』
『仕事戻れた』
久世は小さく息を吐く。
完全解決ではない。
だが。
“生活”は戻り始めている。
その時。
画面端が一瞬黒く揺れる。
沈黙。
久世は慌てない。
ノートへ書く。
『確認』
『黒揺れ 小』
数秒後。
黒は消える。
掲示板でも反応が流れる。
『今日弱いな』
『最近近づいてこない』
『観察されてる感はあるけど』
久世は画面を見る。
侵食は終わっていない。
だが。
以前のような圧迫感は減っている。
まるで。
“距離を測っている”ようだった。
その時。
新しい書き込み。
『最近、夢に海じゃなくて森が出る』
空気が少し変わる。
久世が目を細める。
海以外。
侵食パターンが変化し始めている。
だが。
掲示板は騒がない。
一人が返す。
『記録続けよう』
『変化は全部残す』
久世は小さく頷いた。
恐怖より。
記録。
それが、この場所の空気になり始めていた。
――観測記録
観測層:第3層
対象:現実世界
状態:局地安定段階
更新:
人類側生活安定傾向を確認
変化:
侵食圧力 微低下
評価:
記録板機能 継続中
補足:
侵食パターン変化兆候あり
追加記録:
夢領域変化報告を確認
結論:
人類側抵抗構造 安定化傾向
(次話へ)




