■ 第49話 「閉鎖された海岸」
北欧世界。
海岸沿いの小都市。
以前まで漁業で栄えていた場所。
今は封鎖されていた。
理由は単純。
黒い海。
侵食領域が近づきすぎている。
神兵達が結界杭を打ち込んでいる。
簡易封鎖。
本格的な神格結界ではない。
最近は、“大きな力”を使わない方向へ変わっていた。
解析されるからだ。
トールが現場を見ている。
「進捗は」
神兵が頭を下げる。
「北側封鎖完了です」
「ですが、夜になると結界が少し削られます」
トールが海を見る。
黒い。
静か。
以前のような大規模侵食はない。
だが。
近くにいるだけで頭が重い。
ロキの記録体が杭を眺める。
「結界ってより、“ここまで”って線引きだな」
神兵が苦笑する。
「正直、それくらいしか……」
完全封鎖は無理。
だから。
“広がる速度を落とす”。
今はその段階だった。
その時。
遠くの海面が小さく揺れる。
全員が止まる。
沈黙。
だが。
何も出てこない。
トールが低く呟く。
「最近、様子見が増えたな」
ロキが肩をすくめる。
「向こうも慎重になってんだろ」
侵食側も。
存在固定対策を認識している。
以前のように、無理やり突っ込んでこない。
神兵達は黙々と杭を打ち続ける。
地味。
派手な戦闘はない。
それでも。
確実に必要な仕事だった。
夕方。
封鎖線の確認が終わる。
神兵の一人が石板を取り出す。
神名確認。
周囲の神兵達も続く。
「オーディン様」
「トール様」
「フレイヤ様」
静かな声。
最近は、この時間が増えた。
戦う時間より。
“忘れない時間”。
ロキがそれを見て、小さく笑う。
「戦争って感じしねぇな」
トールが答える。
「生存確認だ」
黒い海は、静かに揺れていた。
――観測記録
観測層:第3層
対象:北欧沿岸部
状態:局地封鎖段階
更新:
簡易封鎖線を確認
変化:
侵食拡大速度 微低下
評価:
存在固定対策 継続中
補足:
侵食側は現在観察傾向が強い
追加記録:
神兵側精神安定を確認
結論:
局所防衛段階 継続
(次話へ)




