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■ 第45話 「記録者達の掲示板」

現実世界。


深夜。


久世 恒一は、パソコン画面を見つめていた。


匿名掲示板。


最近作られた、小さなコミュニティ。


タイトルは単純だった。


『忘れないための記録板』


参加人数は少ない。


二十数名程度。


だが。


全員が同じものを見ていた。


黒い目。


黒い海。


忘却感。


久世が書き込む。


『夢の中で接触あり』


すぐ返信が来る。


『自分も最近見る』


『名前を書くと少し楽になる』


『神話名を読むと落ち着く』


久世は目を細める。


やはり共通している。


“記録”。


それが抵抗になっている。


その時。


新しい書き込みが現れる。


『最近、神社に人が減ってる』


空気が少し止まる。


別の返信。


『分かる』


『宗教番組も減ってない?』


『なんか興味が続かない』


久世は画面を見る。


それが一番危険だった。


“嫌われる”訳ではない。


“消される”訳でもない。


ただ。


自然に忘れる。


興味が薄れる。


それが侵食。


静かな終わり。


その時だった。


掲示板画面が、一瞬だけ黒く染まる。


全員の書き込みが止まる。


沈黙。


そして。


中央へ文字が浮かんだ。


「記録」


「観測中」


久世の顔色が変わる。


他の書き込みも乱れる。


『見えてる!?』


『今の何!?』


『来た』


『黒い』


空気が重い。


だが。


久世はノートを開く。


書く。


『私は久世 恒一』


『記録者』


『忘れない』


次の瞬間。


画面の黒が少し薄れる。


掲示板の一人が即座に書き込む。


『名前確認で薄くなった』


『やっぱ効いてる!』


別の書き込み。


『自分の名前を書く』


『家族の名前を書く』


『神話名を読む』


情報共有が始まる。


小さい。


本当に小さい。


だが。


確実に。


人類側が、“対策”を作り始めていた。


同時刻。


ギリシャ世界。


アテナが観測画面を見る。


沈黙。


ゼウスが振り返る。


「どうした」


アテナの声は静かだった。


「……人類側対策、進化中」


資料が展開される。


掲示板。


記録。


共有。


忘却低下。


ポセイドンが小さく笑う。


「しぶといな、人間」


ハデスが低く言う。


「弱いからこそ、固定を求める」


アテナは空を見る。


Archive。


相変わらず動かない。


だが。


“視線”が増えている。


以前より明確に。


人類側を見ている。


その時。


観測画面の端に、微弱な反応が映る。


アテナの目が止まる。


「……?」


ゼウスが問う。


「何だ」


数秒。


そして。


「日本列島周辺で、微弱な異常反応」


空気が少し変わる。


ポセイドンが顔をしかめる。


「侵食か?」


「不明です」


アテナは観測を続ける。


反応は弱い。


だが。


消えない。


静かに。


まるで“眠っている”ようだった。


――観測記録


観測層:第3層

対象:現実世界


状態:人類側対策共有段階


更新:

記録共有による抵抗強化を確認


変化:

匿名情報網 形成開始


評価:

忘却侵食への抵抗率 微上昇


補足:

名前確認行動が安定効果を発揮


追加記録:

日本列島周辺で微弱異常反応を確認


結論:

人類側抵抗構造 初期形成段階


(次話へ)


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