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田舎のヒキニートおじさん、長寿になったので異世界に行く 〜新天地で同郷の女の子に目をつけられた〜   作者: イシクラゲ
第1章 城壁都市編

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教会と選択




ユイはゆっくりと目を開けた。


少しだけ天井を見つめてから、体を起こす。

腕を伸ばし、背中を反らせるように大きく伸びをした。


(……昨日より柔らかい)


背中に残る感触を確かめる。

昨日の宿よりも、明らかに寝心地が良かった。


枕元に置いてあったスマホを手に取り、時間を確認する。

画面の光が一瞬だけ顔を照らす。


「……そろそろですね」


小さく呟き、起き上がる。


着替えを済ませ、顔を洗いに行く。

冷たい水で眠気を払い、そのまま食堂へと向かった。


椅子に腰掛け、鞄から取り出したのは大学ノートとペン。


オルハにもらったものだ。


ページをめくり、そこに書かれた文字をじっと眺める。

昨日覚えた言葉をなぞるように、視線をゆっくり動かす。


(……少しずつ、ですね)


そのまま集中していると、足音が近づいた。


「ご注文は?」


女性が声をかけてくる。


ユイは顔を上げ、ノートを軽く押さえた。


「連れが来たら注文します」


そう答えると、女性は「分かりました」と言って去っていく。


再びノートへ視線を戻す。


文字を追い、口の中で小さく発音する。

意味を思い出しながら、ひとつずつ確認していく。


しばらくして――


「おはようございます」


聞き慣れた声がした。


ユイは顔を上げる。


「おはようございます」


軽く笑って返す。


オルハが席につくと、ユイが手を上げて女性を呼んだ。


「二人分、お願いします」


簡単に注文を済ませる。


運ばれてきた食事を二人で取り、静かに食べ始めた。


パンをちぎりながら、ユイが口を開く。


「オルハさん、教会に行くんですよね」


視線を向ける。


「どの神様のところに行くか、決めましたか?」


オルハは少し考えてから答えた。


「私は、知人の知識で一番良さそうな神にしようと思います」


パンを口に運びながら続ける。


「ただ、千年前からあまり人気ではないみたいで……この街に教会があるかどうか分かりません」


一度ユイを見る。


「ユイさんはどこにするのですか?」


ユイは少し考え、首を傾げた。


「信仰しなくても、職業だけもらってもいいですよね?」


オルハは頷く。


「ええ、そうですね」


落ち着いた声で続ける。


「別に加護とかはもらえないと、ギルドの人が言っていました。寄付金の違いだけみたいです」


ユイは納得したように言う。


「それなら、安いところでいいですよ、私は」


そして少し身を乗り出す。


「それより、一番良さそうな神って何ですか?」


オルハは短く答えた。


「性格です」


ユイは一瞬きょとんとしてから、小さく笑った。


「あー……実在してるから、いろいろあるのかな」


オルハも頷く。


「そうですね」


ユイはすぐに言った。


「私もオルハさんと同じところにします」


自信ありげに言う。


「私の占いですぐ見つかりますよ。なかったら一番安いところで」


オルハは小さく頷いた。


「じゃあ、行きますか」


立ち上がりながら続ける。


「それと、私……変化で若くしていきますので」


ユイが少し目を細める。


「おじさんが今から職業選択は遅すぎですからね。若くなっていきます」


ユイは軽く笑った。


「なるほどですね」


二人は宿を出て、街へ出る。


教会を探し始める。


ユイはいつものように棒を取り出し、倒す。


だが――


「……いませんね」


その方向に人がいない。


場所を変え、また倒す。


それでも見つからない。


移動しながら何度も繰り返すが、なかなか当たらない。


やがて、街の雰囲気が少し変わっていく。


建物は古く、道も荒れている。


「……スラムっぽいですね」


ユイが小さく言う。


その中で、ようやく人を見つけた。


声をかけると、男は少し警戒しながらも答えた。


教会の場所を尋ねると――


「案内してやる」


そう言った。


オルハはユイの耳元で、小さく囁く。


そのまま、男についていく。


狭い路地を抜け、少し開けた場所に出た、その瞬間――


囲まれた。


周囲から人が現れ、逃げ道を塞ぐ。


「身包み置いてけ」


その声が響いた、次の瞬間。


全員が倒れた。


一斉に、音もなく。


案内していた男以外。


男は足を動かそうとして――止まる。


結界で固定されていた。


ユイは何事もなかったかのように立っている。


結界で囲み、酸素を抜いて気絶させたのだ。


(……一瞬だったな)


オルハは内心でそう思う。


案内人に視線を向ける。


「本当に知っているのですか?」


静かに問いかける。


男は青ざめながら言った。


「し、知っているから……助けてくれ」


震えた声だった。


「ちゃんと連れていけば、同じ目に合わない」


必死に言う。


オルハは少し考え――


結界を解いて貰う。


「案内してください」


男は何度も頷いた。


そのまま、再び歩き出す。


やがて、壊れかけた教会の前にたどり着く。


「ここだ」


そう言うと、男はそのまま走って逃げていった。


ユイはそれを見送り、肩をすくめる。


オルハとユイは顔を見合わせ


「こんにちは」


そう言って中に入る。


オルハが声をかける。


「誰かいませんか?」


しばらくして、年配の神父と女性が現れた。


二人は事情を説明し、職業を選ぶことになった。


オルハは狩人を選ぶ。


ユイは召喚師を選ぶ。


「賢者は売り切れだったみたいです」


ユイが少し残念そうに言う。


神父は説明を続ける。


入信すると、カードに信仰が記載され、スキルが表示される。


入信しない場合は、その都度教会で確認する必要がある。


二人は顔を見合わせ――


入信することにした。


すでに支払っていた職業選択の費用とは別に、寄付金を納める。


オルハは、手持ちを考え――


お酒と魔物の肉、カラス用のモアサナイトが大量にあったため、三カラットのものを一つ奉納した。


ユイは家の台所から持ってきた砂糖と塩を奉納する。


神父は深く頭を下げた。


二人も礼を言い、教会を出る。


スラムを抜け、元の街へ戻る。


「……行きますか」


オルハが言う。


「そうですね」


ユイが頷く。


そのまま狩場へと向かい、狩りを行う。


資金を稼ぐ。


日が傾く頃、二人は宿へ戻った。





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