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田舎のヒキニートおじさん、長寿になったので異世界に行く 〜新天地で同郷の女の子に目をつけられた〜   作者: イシクラゲ
第1章 城壁都市編

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休息と価値の行方




今日は1日休みにして 自由行動にした。


朝から張り詰めていた空気もどこか緩み、街全体がゆったりとした時間に包まれているように感じられた。

石造りの建物に反射する柔らかな光、行き交う人々の足取りもどこか穏やかで、ここが危険と隣り合わせの異世界であることを、一瞬だけ忘れさせる。


狩りや移動を繰り返してきたここ数日と違い、今日は急ぐ理由もない。

体も、気持ちも、ようやく一息つける日だった。


オルハは街に出て探索に出た。


石畳の道を歩きながら、店の並びや人の流れ、裏路地の位置などを静かに観察していく。

目立たないように、しかし確実に。視線はさりげなく動き、必要な情報だけを拾い上げていく。

人の密度、警備の配置、物資の流れ――そういった細かな要素を頭の中で整理しながら歩く。


(この街、思っていたよりも規模が大きいですね……)


そんなことを考えながら、ゆっくりと時間を使って回っていた。


一方その頃――


ユイは食堂で大学ノートを出し共通語を覚えている。


椅子に座り、ノートを広げ、ペンを持つ。

そこにはすでにいくつもの単語が並び、ところどころに意味や発音のメモが書き込まれていた。

線で囲まれた単語や、横に小さく書かれた発音記号。彼女なりに工夫して覚えているのが分かる。


宿の娘6歳と片語ではあるが話している。


「これ……なんて言うの?」


ユイはテーブルの上の皿を指差す。


娘は少し考えてから、たどたどしく答える。

まだ幼い声だが、その発音はしっかりしている。


ユイはその言葉を聞き取り、丁寧にノートに書き込む。


娘にこれは何と聞いて単語をノートに書いたりしてる。


書き終えると、今度は自分でその単語を口に出す。

発音を何度か繰り返しながら、少しずつ形を整えていく。


娘はそれを見て、楽しそうに笑っていた。


その笑顔につられて、ユイも少しだけ笑みを浮かべる。

勉強というより、遊びに近い時間だった。


しばらくすると――


オルハが昼に帰ってきた。


街を一通り見て回り、頭の中で整理しながら宿へ戻る。

扉を開け、食堂を覗くとユイは宿の娘と話している。


その光景に、ほんの少しだけ空気が和らぐ。


(……悪くない光景ですね)


そう思いながら、自然と声が出る。


「ただいま」


ユイはすぐに振り向く。


「おかえりなさい 何かいいものありましたか」


表情にはわずかな期待が混じっている。

ただの挨拶ではなく、何か収穫を期待している目だった。


オルハは椅子を引きながら答える。


「面白い話はありましたね お昼はもう済みました?」


ユイは軽く首を振る。


「まだです 今から食べます? いつもの定食でいいですか?」


オルハは頷く。


「そうですね お願いします」


ユイが2人分注文する。


店の奥に声をかけ、慣れた様子で手配を済ませる。

その動きも、もうこの場所に馴染んでいる証拠だった。


料理を待つ間、ユイが身を乗り出す。


「面白い話てなんですか」


興味を隠さない様子に、オルハは少しだけ間を置いてから話し始める。


「こま都市にオークションをしている所があるのですが 最近そこですごく綺麗な金剛石と似た宝石が出品された 高値で落札されたそうです 大きな屋敷が何個も買える値段だそうです 凄い技術でカットされていて凄いものだったみたいですよ それと輝きが凄いそうです それを鑑定したら 金剛石でなく新種の石だと判明して 大騒ぎになっています」


淡々とした口調だが、その内容は十分に異様だった。


ユイは一瞬固まり――すぐに言う。


「えーと オルハさん それて教会に奉納した 人工ダイヤじゃないの?」


オルハは少しだけ目を細める。


「たぶんそうでしょうね」


ユイは小さく息を吐く。


「キラキラして綺麗ですからね あれておいくら万円だったんですか?」


オルハはあっさりと答える。


「海外通販で購入したんですけど 3ctは800円ぐらいだっとと思います」


ユイの手が止まる。

一瞬、時間が止まったように見えた。


「安いですね 新種の宝石だから高かったの?カットがすごかったから?」


オルハは静かに続ける。


「それがですね モアッサナイト を通して魔法を使うと威力が増幅するそうです」


その一言で、空気が変わった。


ユイの目が一気に鋭くなる。


「まじですか オルハさんモアッサナイト あとどれぐらい有るの?」


オルハは軽く考えてから答える。


「これぐらいの 60サイズの小さめなダンボールに9箱ですかね 1カラット・2・3・4・5・6・8・10・12カラットが1箱ずつあります」


ユイはゆっくりと息を吸い――


「私は オルハさんはできる子だと思っていました 宝を横取りされたのでどうしようかと思いましたが これで安泰ですね この泥棒猫国を経済破綻させてやりましょう あと市場価格の値崩れするので、少しづつ売ってください」


妙に真剣な顔で言い切る。


オルハは苦笑する。


「ハハハ そうですね希少価値の低下はさけたいですね」


ユイはすぐに気を取り直す。


「チュートリアルもう終了ですね 優雅にのんびり過ごしましょう せこせこと狩りをしなくてよくなりましたね」


オルハも小さく笑う。


「ハハハ そうですね」


ユイは少しだけ首を傾げる。


「オルハさんは何で大量のモアッサナイトを持っていたいのですか?こっちで売れると思って持ってきたのですか?」


オルハは軽く視線を逸らしながら答える。


「あーこれはですね うちの家にカラスがいまして そのカラスがキラキラしたのが好きなのですよね 酒とおつまみとかも好きでしたが クリスマスプレゼントで購入して1箱ずつは渡したのですが 来年とか再来年の分と思い大量購入したのを収納巾着に入れておいたのですよ」


ユイは一瞬沈黙し――


「なるほど カラスくんありがとう」


大げさに拝むユイ。


その動作に、周囲の客が少しだけ視線を向けた。


そして続ける。


「売れば資金ができますが まだこの都市にいます 他の街にいきます?」


オルハは静かに答える。


まだこの街にいましょ


少し考えるように視線を落としながら続ける。


モアッサナイトは変化して1個売却しときます


「様子を見ながら、少しだけ流す形でいいと思います」


ユイの方を見る。


ユイさんの先生もできたみたいだし 日常会話ができるようになったら移動しましょうか


「言葉の問題が解決してからでも遅くはないでしょう」


そして少しだけ表情を緩める。


あとドラゴンの根城を観光名所になっているので行ってみたいです


「それに……せっかくですし、見ておきたいです」


ユイは頷く。


「そうですね 話せないと不便です」


ノートを軽く指で叩きながら言う。


「まずはここをちゃんと使えるようになってからですね」


その言葉には、はっきりとした意志があった。


食堂の中は、相変わらず穏やかな空気に包まれている。

外の世界の危険も、この瞬間だけは遠く感じられた。


こうして

束の間の休息は、静かに、しかし確実に次の行動へと繋がっていくのだった。





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